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026 おっふろー

「では、解散!」

「「「「「おつかれさまでしたー!」」」」」


 またモンスターの駆除を為し終えて、オレたちはバウムガルテン邸の前で解散した。


「やれやれ、疲れたな。バッハ、疲れているところ悪いが、風呂の準備を頼む」

「了解です!」


 バッハの子気味良い返事に頷き、風呂の準備が終わるまで何をしようかと悩んでいると、武装したコルネリアが近づいてきた。


 コルネリアは、その抜群の強さで今回もMVPをかっさらっていった。だいたいモンスター全体の七割ほどがコルネリアの刃の下に屠られた。


 大きな怪我どころか掠り傷一つない完勝だ。


 コルネリアのギフトも着々と成長している。


 コルネリアが強いのはたいへんよろしいが、オレはコルネリアの強さに付いていけていないのが課題だな。まず動くスピードからして違うのだから置いて行かれてしまう。コルネリアとの連携なんて今のままでは夢のまた夢だな。


 それを【アン・リミテッド】を使ってなんとかコルネリアに追いつくのが今の目標だ。


 でも、【アン・リミテッド】を使うと、体がめちゃくちゃ痛いんだよなぁ……。筋肉やら腱がブチブチ切れるし、骨もボキボキ折れる。いくらすぐに治るといっても、それで痛さは軽減しない。


 だが、これもコルネリアを護るためだ。泣き言なんて言っていられない。


 【アン・リミテッド】をなんとか習得し、いつでも使えるようにしとかないとな。


 想像するだけで涙が出そうなほどだが、がんばらねば……!


 オレが新たな決意を固めていると、コルネリアが目の前にやってきた。


「お兄さまもお風呂に入るの?」

「ああ。リアも汗をかいただろう? 先に入るといいよ」


 コルネリアは大のお風呂好きだ。三日もお風呂に入れなかったのだから、きっと今すぐにでも入りたいだろう。オレはコルネリアに風呂の順番を譲った。


「お兄さまも入りたいなら、一緒に入ろ!」

「それは……。どうなんだ?」


 オレはコルネリアの頭から足までを流し見する。


 コルネリアは小さい。もうすぐ十一歳だというのに、六、七歳くらいにしか見えない。当然胸が膨らんでいる様子もなく、第二次性徴はまだなのだということはわかる。


 コルネリアはまだまだ子どもだ。だが、年齢はもうすぐ十一歳である。普通はそろそろ男親や男兄弟に裸を見られることを恥ずかしがってもいい年齢のはずだが……。


「ね? 一緒に入ろ、お兄さま?」

「リアがいいなら……」


 まぁ、コルネリアからの提案だし、あまりこちらが勝手に気を回すのも変な話か。


「やった! お兄さまとお風呂ー!」


 何がそんなに嬉しいのか、コルネリアははしゃいでいた。コルネリアの心は、その見た目と同様にまだまだ子どもなのだろう。


 オレはそう納得して、コルネリアの手を引いてお風呂へと向かうのだった。



 ◇



 ザーッと体を流し、ちゃぽんと湯船に浸かる。いつもは出てしまう「あ゛ぁ~」というおじさん染みた声を出すのはさすがに自粛した。


 狭い湯舟の中、肌が触れそうなほど近くにはコルネリアの姿があった。


「えへへ、あったかいね」

「ああ、そうだね」


 さすがに一人では体を伸ばせる湯舟でも、二人で入ればぎゅうぎゅうだ。


「こうすると、もっとあったかいかも」


 右隣に居るコルネリアは、ちゃぷちゃぷとお湯を鳴らしながら動いて、オレの右腕に抱き付いて、オレの右肩に頭をちょこんと預ける。


 コルネリアはオレに甘えたいのかな?


 たしかに、最近はコルネリアを一人前の淑女にすることに熱を燃やして、あまり甘やかしていなかったかもしれない。それで寂しい思いをさせてしまったのだろうか?


 お湯のせいか、僅かに赤くなったコルネリアの頬。その下には少女らしい少しふっくらとした白い体がピンクに色づいていた。


 オレはいつか見たガリガリのコルネリアを思い出す。あれは見ていて不安と恐怖しか感じなかったが、今は安心感を感じた。


 コルネリアは少し身長は低いが、立派に女の子として成長している。


「お兄さま……?」


 コルネリアがオレを見上げた。ビックリするほど至近距離で見つめ合うオレたち。


「お兄さま……」


 なにを思ったのか、コルネリアがその紅い目を閉じて、んっと唇を軽く伸ばす。まるでキスをねだっているようだが……。まさかな?


「んー……」


 オレは首を伸ばしてコルネリアのおでこにキスをする。


 汗をかいているのか、コルネリアのおでこは少しだけしょっぱいような気がした。


「ちぇー……」


 なぜか不満そうにおでこを触るコルネリア。本当にキスを求めていた?


「そういうのは、将来の旦那さんまでお預けだよ」

「でも、お兄さまは私と結婚してくれるって言ったもん」


 そうだっけ?


 あれか、二十歳まで婚約者ができなかったらって話か。


 この国の貴族は結婚が早いから、二十を超えると行き遅れと言われてしまう。コルネリアもたぶん二十前に結婚するだろう。


 コルネリアが結婚……?


 オレはそれを認められるだろうか?


 少なくともオレ以上にコルネリアを大切にしてくれる奴じゃないと認めないよ?


「はぁー……」


 このままでは将来コルネリアにウザがられてしまうだろう。自制しないと。

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