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188 褒美

「そうか……。半数以上が……」


 ボロボロに破壊しつくされたバウムガルテン領で、オレはカサンドラに会っていた。


 実に半数以上の住民が戦死したらしい。きっと壮絶な戦いだったのだろう。アヒムとゾフィーのことは残念だが、まずはカサンドラたちが生きていたことを喜ぼう。


 なにせ、開戦からほどなく孤立して、独力で領地を守り切ったのだ。普通なら、モンスターの大群に押し潰されたとしても不思議じゃない。


「申し訳ありません……」

「いや、ドーラのせいじゃないよ。むしろ、よく耐えてくれた。感謝している。君が無事でよかった」


 カサンドラでもこれだけの損害を出したのだ。きっとオレや他の人が指揮を執ったら、バウムガルテン領は跡形もなく無くなっていたことだろう。


 オレも、バウムガルテン領のことは守り切れないかもしれないと半ば以上に諦めていたところがある。バウムガルテン領が残っていたことを、これだけ多くの人々が生き残ってくれたことを感謝しよう。


「ドーラ、すまないがオレたちは王都に邪神討伐を報告しに行かなくちゃいけない。疲れているところすまないが……」

「分かっておりますわ、ディー。それに、国軍がしばらく駐留して安全を確保してくださるそうです」

「それなら安心だ」


 カサンドラの祖父に当たるアルトマイヤー将軍ならば悪いようにはしないだろう。


 アルトマイヤー家からは私的な援軍も貰っていたからね。そのお礼もしないとな。


「バウムガルテン卿、準備が整いました!」


 国軍の兵士が馬車の支度ができたことを教えてくれる。これで王都に向かい、まずは王様に邪神討伐を報告しないといけない。


 本当はこのままバウムガルテン領に残って復興を手伝いたいところだが……。


「ああ、ありがとう。ドーラ、すまないが、行ってくるよ」

「はい。お帰りをお待ちしております」


 オレは最後にカサンドラを抱きしめると、カサンドラは珍しく少し抵抗をみせた。


「ドーラ?」


 もしかして、オレ嫌われちゃった?


 まぁ、領地の一大事に居ない領主なんてガッカリされてもおかしくはないけど、それは邪神を討伐するためで……。


「いえ、あの……」


 オレを見上げるカサンドラは、本当に珍しく頬を真っ赤に染めていた。こんなに恥ずかしがるカサンドラは初めて見たかもしれない。


「臭くありませんか? ここのところシャワーを浴びてなくて……。それで……」

「臭くないよ。ドーラの匂いがする。ちょっと土っぽいかも?」

「もう! 嗅がないでください!」


 カサンドラがオレのハグから逃れてしまった。残念だ。いい匂いだったのに。



 ◇



「邪神を討伐いたしました」


 王都について早々王宮に呼ばれたオレたち『レギンレイヴ』の面々は、すぐに謁見の間に通された。


 もう皆の知るところになっているのだろう。邪神の討伐を報告しても誰も驚かない。


「大臣、どう思うか?」

「はっ! 各地でモンスターの撤退と弱体化を確認しております。バウムガルテン卿の言葉に嘘はないかと」

「そうか。バウムガルテン卿よ、そして、『レギンレイヴ』の皆もよくやってくれた。そなたらは王国を、いや、世界を救った英雄だ。それぞれ望むものを言うがよい。朕に叶えられる褒美なら叶えてやろう」


 王様が重々しく頷き、オレたち『レギンレイヴ』に問う。


 オレはこの瞬間をこそ待っていた。


「失礼ながら陛下にお願いしたき儀がございます」

「バウムガルテン卿よ、なんでも申すがよい」

「私をエレオノーレ姫の婿にしていただきたい」

「ほう?」


 この願いは予想外だったのか、王様は目を細め、大臣たち参列した貴族がざわざわをざわめくのを感じた。


「つまり、王位ではなく王配を望むと?」

「はい! この国は王家と共にあります。私が出しゃばるわけにはまいりません」

「ふむ……」


 もうバウムガルテン家は引き返せないところまで来てしまった。


 孤立無援でもモンスターを撃退した名声。そしてなにより邪神を倒した名声は大きすぎる。それは王家の脅威となるほどに。


 だからエレオノーレと結婚して、王家とバウムガルテン家を再び結び、国が割れるのを防ぐ。


 オレもエレオノーレのことが好きだしね。否はない。


 ここまでは皆が考えたはずだ。


 だが、きっと誰もがオレが王位を望むと思ったのだろう。しかし、オレは王様なんて面倒な肩書なんていらない。


「なぜ、と問うてもいいかな? バウムガルテン卿よ。そなたの目の前には王位があるのじゃぞ?」

「いささか疲れました……」


 もう十分がんばっただろ? オレはモブなのに働き過ぎた。


 だから、残りの人生はのんびり暮らしたい。


 エレオノーレには悪いが、王様は自分でがんばってくれ。オレは一足先にのんびり生活を手に入れるよ。


「ははっ! 疲れたと申すか! なるほど、なるほど。だがな、バウムガルテン卿よ、朕が一つ予言をしておこう。そなたに気の休まる時間は永劫来ぬとな」

「ぇ……?」


 王様がなぜか愉快なことを聞いたとばかりに笑い、オレにとって不吉な予言をしたのだった。

こんにちは(=゜ω゜)ノ

作者のくーねるでぶるです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

これにて【モブ魂】は一旦の完結とさせていただきます。

後で閑話やSSを投稿するかもしれないからブクマは外さないでおくれ(´;ω;`)

改めて、最後まで読んでくださりありがとうございました。

またどこかでお会いしましょう(●´ω`●)


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