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183 VS邪神

『あの女などより、我の方が神としてふさわしいと――――なにッ!?』


 リリーの魔法、ストーンジャベリンは邪神の胸を正確に打ち抜いた。


「リリー、連射だ!」

「ん!」


 リリーの頭上で再度ストーンジャベリンがいくつも生成され、連射されていく。


 硬いもの同士がぶつかり合う硬質な轟音が連続で響き渡り、周囲には砕けたストーンジャベリンが散乱しては空気に溶けるように消えていく。


 土煙がもうもうと立ち上がって、ビクンビクン震える邪神の姿を隠していく。


「お兄?」

「そのまま連射だ! このまま削れるところまで削る!」

「ん!」


 リリーにストーンジャベリン連射の継続を命じる。


 これはゲームじゃない。一回行動したらクールタイムがあるわけじゃないし、待っていれば順番に行動ができるわけでもない。


 隙を見せたら、やられるのだ。


 邪神の話を聞かなくてはいけない理由なんて無いしな。


『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


 邪神の雄叫びのような、断末魔のような声が耳に届く。


 これはもしかすると、もしかするか?


「全員警戒! 来るぞ!」


 オレの声に『レギンレイヴ』の皆が身構える。


『おのれええええええええええええええええええ!!!』


 土煙から転がり出るように飛び出してきたのは、豪華な鎧に身を包んだ二メートル近い大柄な老人だ。その顔は青黒い肌をしており、ツノも生えている。明らかに人間ではない。


 邪神の第二形態だ。


 リリーは見事、邪神の第一形態を削り切ったのだ。


『おのれ、蛮族が! 我の話を聞きもしないとは……。常識がなっていない。やはり、あの女に世界を任せるのは失敗であった』


 邪神に常識を説かれてしまった。


「邪神の話など聞く必要はない! 殺せ!」

「やあああああああああああああああああ!」


 オレの言葉に応えるように、エレオノーレが盾を構えて邪神へと突撃する。その後ろをコルネリアとクラウディアが追っていく。


 うちの自慢の前衛三人娘だ。彼女たちの個人の強さはもちろんだが、連携という意味でもかなり息が合っている。いくら邪神とはいえ、この三人を抜くのは容易いことではないだろう。


「リリー、残りどのくらいだ?」

「あと半分より下」


 オレは少しの間だけ彼女たちに邪神の相手を任せて、リリーに聖力を補充していく。


 邪神の第一形態を見事削り切ったリリーだが、やはり聖力の消費が激しいな。補充に少し時間はかかるが、エレオノーレたちにはがんばってもらいたい。


『まずは――――』


 邪神の枯れた声が零れる。


 そして――――。邪神の姿が消える。


 その瞬間、オレは首の後ろがヒヤリと冷たく感じた。


「くあッ!?」

『ほう……?』

「ッ!?」


 その攻撃を防げたのは偶然以外の何物でもなかった。ただなんとなく嫌な予感がしただけ。


 だが、リリーの首を狙う邪神の大剣から、ギリギリのところでリリーを守ることができた。邪神の大剣は鋭く重い。自分でもよく左手で受け止められたと思う。


『よくぞ我の一撃を止めたものだ。ゴミながら、なかなかやるではないか』

「うるせえ!」


 右手に持った聖剣で邪神の顔を狙うと、邪神は後ろに飛び退った。


「リリー、無事か?」

「ん」


 邪神が一瞬でエレオノーレたちを抜き去り、リリーの近くに現れた。その速さ、移動経路、どう考えても異常だ。瞬間移動でもしてるのか?


 こんなのゲームの知識にはなかった。初撃を防げたのは奇跡だ。


 これをどう攻略する……?


「お兄さま!?」

「こちらは無事だ! どういうカラクリかは分からんが、邪神は転移する! 注意しろ!」


 オレの睨みつける視界の中、邪神がこれ見よがしに大きな黒い大剣を大上段に構えた。


 無論、そんなことをしても邪神の攻撃範囲には誰も居ない。普通ならば、気にもしない。普通ならば――――ッ!


 唐突に邪神の姿が消える。


「くっ!」


 ガキィィイイイインッ!!!


 こいつ、またリリーを狙いやがった!


 なんとか双剣をクロスさせて邪神の大剣を受け止める。


『ほう? 二回となると、先ほどのはマグレではないか……』

「ぐっ……!」


 邪神の大剣の圧力が増す。ジリジリと邪神の大剣の刃がオレの顔に近づいてきた。


『む?』

「えいっ!」

「せやああ!」


 邪神がコルネリアとクラウディアの攻撃をバックステップで避けてオレから離れていく。


「助かった」

「大丈夫ですか、お兄さま?」

「あの転移……厄介ですわね……」


 コルネリアとクラウディアがオレの近くで剣と槍を構える。


 クラウディアの言う通り、あの転移能力は厄介だ。これでは隊列を組む意味もなくなってしまう。そして、近接戦闘能力を持たないリリーを狙われれば危ない。誰かがリリーを守る必要があり、遊兵化されてしまう。


 それに、今は攻撃にしか使っていないが、回避にも使われれば……。


 ん?


 そういえば、なぜ邪神はわざわざコルネリアとクラウディアの攻撃を避けたんだ?


 邪神は転移できるんだ。転移で回避、例えばリリーの背後に転移すればどうだ?


 ずっと邪神の攻撃が続き、オレたちは守り一辺倒にならざるを得ないはず。


 なぜ邪神はそうしない?


 転移にはなにか条件があるのか?

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