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161 父からの最後の贈り物

 『シュヴァルツヴァルト騎士団』の望みは、オレたちと合致していた。


「助かるよ、本当に……。オレたちが失敗した後は頼んだ」

「心得た」

「残る四天王は三体だな。リーンハルトはどれにする?」

「俺たちは『太古の洞窟』にする。慣れてるしな」

「じゃあ、オレたちは『鏡面世界』で……」


 その後はまぁ、順当通りに決まった。このまま四つのパーティで、邪神四天王を一体ずつ倒せればいいが……。まぁ、あとはこいつらの力を信用しよう。


「こうなってくると、他のパーティの動きが見えないのが不安だな……」

「あなたの言葉を借りれば、邪神は聖剣でしか止めを刺せないですからね。彼らは聖剣を持っていませんから、抜け駆けされてもとくに意味はないのでは?」


 ベンヤミンが言う通り、聖剣を持たない彼らがなにをしたところで意味はない。むしろ、無駄死にだ。


「彼らも協力してほしかったんだがな……。彼らでは邪神を倒せない」


 せめてもう一パーティが協力してくれたら、最初から邪神の討伐を狙えるのに……。本当にままならない。


 その後もいくつか質問が飛んだが、オレはオレの知る限りにおいてすべてに対して正直に話した。なぜ知っているのかについては夢で見たで押し通した。


 自分で言うのもなんだが、よく皆「夢で見た」なんて言葉信じるよな。まぁ、半信半疑なのかもしれないが、半分は信じてるってことだもんな。


 ここに来た皆は、情報が欲しくて必死なのだろう。あとのパーティはなにを考えているんだか……。情報収集は冒険者の基本だろうに。


 まぁ、誰もオレがここまで詳細な情報を持っているとは思わんか。


 あとはアルトマイヤー将軍に直談判して王国の東の守りを厚くしてもらうように頼んでみないといけないな。将軍も夢の話を信じてくれればいいんだが……。



 ◇



 信じてもらえませんでした。


 いや正確には、信じたいが確信が無く、軍を動かすことができないといったところか。


 国軍は予定通り王都近辺に集結して、邪神の復活場所がわかり次第急行するらしい。東西南北各地の辺境伯が予想されるモンスターの来襲に耐えている間に、適切に戦力を配置するらしい。


 アルトマイヤー将軍は、将軍としては動けないが、侯爵家としては動いてくれた。


 アルトマイヤー侯爵家の抱える軍の一部をバウムガルテン辺境伯領に向かわせてくれたのだ。


 今はどこも一兵でも欲しい状況だろうに。ありがたい。



 ◇



 わたくし、カサンドラは、バウムガルテン辺境伯領の屋敷の一室で懐かしい顔と会っていました。


「カサンドラお嬢様、お久しぶりでございます!」

「ルードルフ。アルトマイヤー侯爵家の誇る第三軍の軍団長であるあなたがどうしてここへ?」

「我々第三軍は、バウムガルテン辺境伯領の防衛に当たるように命じられました。これよりお嬢様の指揮下に入ります! 詳しくは預かっている手紙に書かれているかと」


 わたくしはルードルフからひったくるように手紙を受け取ると、そこには間違いなくアルトマイヤー侯爵家の封蝋と、お父さまの文字がありました。


 要約すると、ディートフリートが王都で動いてくれたようです。なんでも、王国の東に邪神が復活する夢を見たとか……。


 お父さまはドラゴンスレイヤーであるディートフリートの夢を女神さまのお告げの可能性があると書いていましたが、書いている本人は信じていないでしょう。


 おそらく、娘であるわたくしを心配してのこと。


 それにしても、軍団一つをまるごと派遣するなんて。それも、歴戦の猛者が集う第三軍。お父さまの過保護は相変わらずのようですね。厳めしい顔をして甘いものが大好きな甘党。おしゃべりが下手でぶっきらぼうですが、娘であるわたくしには激甘。


 危険なバウムガルテン辺境伯領に残ったことに付いては散々文句を書かれましたが、手紙の最後に書かれていたわたくしへの愛情も本当でしょう。


「ルードルフ、あなたは手紙の内容はご存じ?」

「いえ。ですが、だいたいのところはわかっているつもりです」

「父がご迷惑を……」

「いえ! 我ら第三軍は、またお嬢様の指揮のもと戦えることを喜んでいます!」

「こんな小娘の? お爺様やお父さまの方があなたたちを存分に使えるでしょうに」

「ご謙遜を。たしかにご隠居様や旦那様も用兵はお上手ですが、軍団規模の指揮ではお嬢様の右に出る者は居ませんよ」


 どこかお父さまに似ているルードルフは、ニコニコしながらそう言ってのけた。


「それは、わたくしのギフトの力があってのことですわ」

「ホークアイ。天上からすべてを見通す目。用兵家なら誰もが欲しがるギフトですな。ですが、いくら便利なギフトでも使いこなせなければ意味がありません」

「わたくしは使いこなせていると言えるのかしら」

「もちろんです、カサンドラお嬢様。御身はアルトマイヤー侯爵家の至宝。その軍略はいずれご隠居様、旦那様を超えるでしょう。そのためにも、此度の争乱をなんとしても生き延びねばなりません。この日のために鍛え上げた自慢の部下たちです。どうかご存分にお力を振るいください」

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