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157 枢機卿

「やりましたわね!」

「ん!」

「やった!」

「わたくしたちは確実に強くなっています。これもディーのおかげですね」


 クラウディア、リリー、コルネリア、エレオノーレがハイタッチや抱擁を交わしてアダマンタイトゴーレムの討伐を喜んでいる。


 その向こうには、錆びて風に風化していくアダマンタイトゴーレムの巨体があった。


 楽勝ではあったけど、やっぱり大きなものを倒すとそれだけ達成感があるのだろう。


 『ゴーレムバレー』の攻略報酬はアダマンタイトだった。なにに使うかな?


 うちはオレも女性陣は皆ミスリル系の装備で固めているし、使い道がない。


 ミスリルは軽くて丈夫でいいんだ。アダマンタイトの方が丈夫ではあるし、ゲームだったらアダマンタイト装備に変更するところだが、アダマンタイトって重いんだ。鉄よりも断然重い。だから皆ミスリルの装備で固めている。


 将来的には砲弾の芯とかに大活躍するかもしれないが、アダマンタイトくんは今のところただの珍しいだけの金属だね。


 まぁ、ザシャとかは大剣の一部にアダマンタイトを使ってるって言ってたし、ザシャにあげよう。


「おつかれさま。じゃあ、戻ろうか。たぶん帰り道もモンスターが居るから気を付けて帰ろう」

「ん」

「「「はーい」」」


 ダンジョンはラスボスを攻略したら終わりじゃない。むしろやっと半分を超えたという認識が正しい。


 己の体力や聖力を見誤って、帰り道に力尽きる冒険者というのは意外と多いのだ。


 『レギンレイヴ』の皆はまだまだ余裕がありそうだけどね。


 まぁ、いざという時はオレが助けにはいればいいだけだ。今回ほとんどなにもしてないからなぁ……。


 その後、何事もなくダンジョンを抜け出して馬車に揺られて王都の新バウムガルテン邸に帰ってきた。


 この手すきの使用人たちが道の左右に立って「おかえりなさいませ」って出迎えてくれるの、未だに慣れないんだよなぁ。


 エレオノーレとクラウディアは当然といった感じで歩いていくけど、オレもコルネリアはちょっとビクついてしまう。


 リリー? あの子は肝が太いからな。平然としてるよ。


「おかえりなさいませ、皆さま。お疲れでしょう? お茶の準備をいたしますわ」


 屋敷の中でカサンドラにも出迎えられて、やっと我が家に帰ってきたという感じがした。最初はどうなることかと思ったけど、オレもカサンドラが居る生活に慣れたんだなぁ。


「そういえばあなた、教会より預かりものです」


 お茶の席でカサンドラ言った。オレは教会という言葉を聞いただけでなんだか面倒になった。ヨハンネス教皇に代替わりしてからマシになったとはいえ、勧誘とかすごかったからね。いちいちお断りの文を書くのもたいへんなのだよ。


 カサンドラがメイドさんから大きな箱を受け取ると、オレに渡してくる。


 白い箱だ。さてさて、何が入っているのやら……。


 ……確認しないとダメかな? このまま見なかったことにできない?


 ダメ?


「はぁ……」


 溜息と共に箱を開くと、目も覚めるような紅の布が目に入った。


「……服?」


 装飾品がどさどさ乗ってるからわかりにくいけど、どうやらローブのような服らしい。しかし、なんだよこのド派手な赤は。こんなの着れないよ!


「まぁ!」

「カーディナルレッド!」

「なんですって!?」


 しかし、横から覗いていたカサンドラとクラウディアが驚きの声をあげると、エレオノーレまで口に手を当てて目を真ん丸にして驚いていた。


 え? なに? オレ、なにかやっちゃった!?


「えっと、知ってるなら教えてほしい。これって何?」

「ご存じないのですか!?」

「ほら、ディーは王都の生まれではありませんから」

「いいですか、ディー。こちらのカーディナルレッドの正装は、枢機卿のみ着ることを許された正装なのです」

「枢機卿……」


 なんだか響きがかっこいいな。それくらいしかオレは知らないぞ?


「手紙も入っていますね。ひとまず読んでみてはいかがですか?」

「ああ」


 カサンドラに促されて、中の手紙を手に取った。


 そして、オレは安堵する。


「オレを名誉枢機卿にするらしい。だが、権利も無ければ義務もない。本当にタダの名誉職だな。突然、何事かと思ったが、これならば安心だ」

「名誉枢機卿? 聞いたことがありませんわ」

「強かな手を打ってきますね。対外的にはディーを教会に取り込んだとアピールしつつ、既成事実を狙っているのでしょう」


 クラウディアが疑問の声をあげて、カサンドラが懸念を表明する。


 そうか。そういうこともありえるのか。枢機卿ってかっこいいとか暢気に思っていた自分が恥ずかしい。


「まずはその服は封印してしまいましょう。あとは、教会に会議などに誘われても無視を貫いてください。これまでと同じですね」

「ああ」


 オレはエレオノーレの言葉に即座に頷く。


 べつに教会と敵対するつもりはないけど、面倒なのは勘弁だ。


 ヨハンネス教皇には悪いが、これまで通り無視をさせてもらおう。


 邪神が討伐されて、平和な時代になったら教会との付き合い方も考えてみよう。

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