表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/189

149 仲間入り

「バウムガルテン様」

「はい?」


 王様と国の重鎮たちが消えてがやがやと騒がしい謁見の間を出ると、メイドさんに声をかけられた。見たことある中年のメイドさんだ。たしか、エレオノーレのところのメイドさんだな。


「エレオノーレ姫様がバウムガルテン様をお呼びです。おいでになってくださいますか?」

「わかりました」


 このタイミングでエレオノーレがオレに接触か。何の用だろう?


 姿勢のいいメイドさんに続いて、オレはエレオノーレの離宮に足を踏み入れた。


 もう邪神の復活の予言を聞いているのか、離宮の中はどこか暗い様子だった。


「失礼します。バウムガルテン辺境伯、お呼びにより参りました」

「ディー……」


 エレオノーレ専用の応接間に入ると、エレオノーレが出迎えてくれた。だが、いつもよりも精彩を欠いているように見えた。


 いつものようにソファーに案内される。今日はお菓子は出ないらしい。ちょっと残念だ。


「ディーも聞いたのでしょう? 邪神の復活の予言を」

「はい」

「今頃、お父さまは王国の主要な貴族たちと国の方針を話し合っているでしょうね」

「はい。そう思います」

「わたくしは思うのです。わたくしにもなにかできないかと」

「それは……」


 エレオノーレはこの国難に対して自分でもなにかしたいようだ。


 だが、エレオノーレにできることは少ないだろう。


 原作ゲームではこのタイミングでエレオノーレが仲間になるのだが……。この世界ではどうなるか……。


「わたくしは強くなりたい。強くあらねばなりません。考えたくはありませんが、必要が生じれば、わたくしが民を導かねばなりません」


 王様になにかあれば、王位継承権一位のエレオノーレが後を継ぐ必要がある。


「そこでまずは自身を鍛えることにしました」


 このセリフ。まさかエレオノーレは……。


「ディー、わたくしに力を貸してくれませんか?」


 オレはその言葉を予感していた。そして求めていた。


 リーンハルトの活躍次第では、エレオノーレはリーンハルトの方に行ってしまうかもしれないと思っていた。


 それは原作ゲームをなぞる行為だし、歓迎するべきことだろう。しかし、オレはエレオノーレにリーンハルトの元に行ってほしくなかった。


 リーンハルトの邪神討伐の成功率を上げるためには、オレはエレオノーレにリーンハルトの元に行くように言うべきなのだろう。


 だが、オレはそれをしたくなかった。


 だから、オレはエレオノーレの言葉に頷いてしまう。


「かしこまりました。菲才の身ながら、私のすべてを捧げてエレオノーレ殿下を鍛えます。レギンレイヴの復活です」


 オレたちは冒険者パーティではないが、パーティ名はある。それがレギンレイヴだ。古の言葉で、“神々の残した希望”という名のパーティ。オレたちは人々の希望に成れるだろうか。


「ありがとう、ディー。よろしくおねがいします」


 こうして、オレたちはエレオノーレと行動を共にするようになった。


 これからエレオノーレをはじめ、コルネリアたちをゲーム知識を活用して鍛えていこう。


 どんな闇が襲ってこようと、斬り払えるように。



 ◇



「さて、それじゃあ教会に行くか」


 オレがエレオノーレを連れて新しくなったバウムガルテン邸に戻ると、皆は驚いていた。そうだよね、いくら強くなるためとはいえ、お姫様が冒険者の真似事をするなんて驚きだね。


「皆様、これからお世話になります」


 一通りの挨拶が済むと、オレたちは教会へとやってきた。カサンドラやクラウディアとの結婚式をした大聖堂だ。


「なんだか懐かしいですね」

「はい」


 クラウディアとカサンドラが懐かしんでいる。クラウディアはちょっとはにかんでいるように見えた。まぁ多くの貴族の前キスした場所だからね。オレも思い返すとちょっと恥ずかしい。


「そ・れ・で! お兄さまはなぜ教会に来たのですか?」


 コルネリアがオレとクラウディアの間に割り込んできた。妬いているのかな?


「みんながどれだけギフトが成長してるのか確認にね。進化したら儲けものだと思って気軽な気持ちでチャレンジしてみてよ」


 ゲームみたいに数値としてステータスが見れればいいんだが、見えないのでこうやって定期的に教会に足を運ぶしかない。


 できれば全員進化してほしいところだが、まぁ無理だろうな。そんな簡単に進化するなら、冒険者にでもなれば誰でもギフトが進化するだろうし。


 大聖堂の中に入ると、女神像の前には意外にも人だかりができていた。見た感じ冒険者が多いな。彼らは思い思いの格好で武装しているからすぐにわかる。


「あれは……」


 なにをしているのかと見てみれば、一人ずつ冒険者たちが女神像の前で祈っており、それを水晶を持った神官が見守っていた。まるでお上りさんが記念撮影しているかのような感じだ。


「なにをやっているんだ?」

「ディーは知らないんですか?」


 オレが知らないことに逆にカサンドラに驚かれてしまう。え? あれってそんなに有名な行為なの?


「彼らはおそらくわたくしたちと同じく、ギフトが進化しないか確認に来たのです。ディーが二回もギフトを進化させて有名になったため、自分も後に続こうと特に冒険者さんが挑戦しているのですね。ディーを見ていると忘れてしまいますけど、ギフトを一回進化させるだけでも快挙ですから。場合によっては、高位貴族のところに任官できる可能性もありますからね」

「ほーん」


 まぁ長年冒険者をやっていれば可能性はあるか。進化できる奴が居るといいな。人類側が強くなるのは大歓迎だ。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ