142 婚約式と
ビアンカに呪われたアイテムの解呪を教えた後、ビアンカは暇さえあればバウムガルテン屋敷に来ていた。屋敷の地下に呪われたアイテムが大量にあるためだ。オレはそれら呪われたアイテムをビアンカに開放していた。
オレはもうギフトの成長がカンストしちゃったからね。もう必要ないものだ。
そして、ベンノに市場に出回っている呪われたアイテムを根こそぎ集めてもらっている。呪われたアイテムはじゃんじゃんあるから早くビアンカにはギフトの進化をしてもらいたいものだね。
◇
「お兄さま……」
「うん?」
振り返ると、コルネリアがうっとりとした表情でオレを見上げていた。
「かっこいいです!」
「ん。かっこいい」
「男ぶりが上がりましたね、ディー」
「そうか?」
コルネリア、リリー、カサンドラが順番に褒めてくれる。今のオレはこの国の正装を身に着けていた。タキシードのような服だ。
「ドーラ、リア、リリーもドレスが似合っているよ。他の人には見せたくないほどだ」
「まあ、ディーったら」
カサンドラたちも色とりどりのドレスを着ている。これからオレとクラウディアの婚約式なのだ。
婚約式といっても難しいことはしない。ただ婚約を誓う書類にサインするだけだ。
本当はもっとこじんまりとする方が一般的なのだが、さすがはお姫様というべきなのか、オレとクラウディアの婚約式は王都の一番大きな教会である大聖堂でやることになった。
参列者もいっぱい居るし、かなり緊張する。
「バウムガルテン伯爵、準備ができましたらこちらにおいでください」
「わかった。では、行ってくるよ」
オレはカサンドラたちと別れて大きな扉の前へと移動する。扉の前で待っていたのはアルトマイヤー将軍だ。今回も将軍がオレの親代わりとして出席してくれるらしい。
「久しいな、ディートフリート」
「お久しぶりです、閣下」
「閣下など、水臭いのう。おじいちゃんと呼んでくれてもいいのだぞ?」
「さすがにそれは……」
このお爺ちゃん将軍、ぐいぐいくるなぁ。まぁそれだけ気に入られていると思おう。
「今回、クラウディア殿下と婚約するわけだが……。ドーラもよろしく頼むぞ? ぞんざいに扱うことあれば殺しちゃうからな?」
「はい。わかっております」
「ならばよし!」
こえー……。お爺ちゃん将軍こえー……。
「バウムガルテン伯爵、そろそろでございます」
「ああ」
扉が開かれると、広い大聖堂を埋め尽くすほどの人が居た。一斉に見られるとドキッとするな。これだけの人に見られると、視線が重たい……。
「では、行くぞ」
「はい」
オレは意を決して一歩踏み出していく。
少し離れた所では、しずしずと歩くクラウディアの姿が横目に見えた。黒いドレス姿だ。同色のヴェールによってその顔色は窺えない。
綺麗だな……。
唐突にそう思った。
そして、教皇らしき人物が待つ祭壇までたどり着いた時にそれは起こった。
教皇の背後にあった見事のステンドグラス。それを貫通するレーザーような虹色の光がオレの胸に突き刺さった。
「これは……? まさか!?」
まさか、ギフトの進化!?
「この光は何だ!?」
「何が起こっているの!?」
「目の錯覚? いや、違う!」
「きれい……!」
教皇をはじめ、出席者たちも謎の現象に騒ぎ出す。しかし、危険が無いとわかるとざわざわとしたざわめきへと変わっていった。
それは十秒ほど続いただろうか。ステンドグラスを貫いた光の線は消失した。
それと同時にたしかに自分のギフトが進化していることがわかる。
ギフトの二段階進化なんて知らないぞ!? どうなってるんだ!?
「バウムガルテン伯爵、大丈夫かね? 体に変化はないかね?」
「……ギフトが進化したようです」
「「なんじゃと!?」」
教皇と将軍の言葉が被り、左右の耳を激しく打つ。ちょっと痛い。
そこからは怒涛の展開だった。
まず教皇がギフト鑑定の水晶玉を持ってこさせると、オレのギフトを確認する。
どうやらオレのギフトは、聖者から大聖者に進化したようだ。オレの知らないギフトだな。何ができるんだろう? かなりゲーマーの血が騒ぐ。育てないと。また呪われたアイテムの解呪をがんばらないとな。
「どうやってこの短期間でギフトの進化を成し遂げた!? なにか秘密があるのだろう!? 吐け!? 吐くのじゃ!?」
そして、オレのギフトが進化したことが正式に確認されると、教皇が詰めてきた。
だが、オレはまだ教えるつもりはない。
教皇が秘密を吐けbotになってしまったので、教皇は配下の聖職者たちによって大聖堂の奥に連行されてしまった。
「申し訳ございません、バウムガルテン伯爵。教皇はその……おつかれのようで……。これよりわたくしが代理を務めさせていただきます」
まぁいくら教皇とはいえ、王国伯爵であるオレに向かってまるで罪人を詰めるようなマネはさすがにいけないよね。
教皇代理によって無事にクラウディアとの婚約式は済んだのだが、出席者たちはずっとざわめきっぱなしだし、いろいろ台無しだ。
「クラウ、済まない……」
「かまいませんわ。ディーはわたくしの予想を超えてくる稀有な人ですもの。だから面白いのです」
そう言ってクラウディアが笑ってくれているのがせめてもの救いだな……。
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