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135 王都への帰還

 盗賊も蹴散らし、その後は何事もなく王都にたどり着いてしまった。


 人間を倒せばドラゴンの力が成長するから、できれば盗賊に出会いたかったのだが、そう上手くはいかないらしい。


 早く人間を倒したい!


「では、ディー。お世話になりましたわ」

「また会いましょう」


 王都のバウムガルテンの屋敷でエレオノーレとクラウディアと別れた。


 その際に、クラウディアに頬にキスされた。オレは怖くなってコルネリアとリリーを見たが、コルネリアは言い知れぬ深い笑みを浮かべるだけでなにも言わなかった。


 あの、コルネリアさん? 余計に怖いんですけど……?


 王都のバウムガルテン屋敷は、まだ昔からある今まで使っていた屋敷だ。カサンドラの進言で新しく大きな屋敷を作っているが、まだ完成まで時間がかかるらしい。


 新しい屋敷は、今の屋敷の六倍ほどになる予定だ。そんなに大きな屋敷だと、屋敷を管理するためにメイドや執事を大量に雇わないといけないことになるが……。まぁ、それが伯爵として必要なことならやるべきなんだろうなぁ。王都の貴族事情に一番詳しいのはカサンドラなので、彼女の言葉には従うべきだろう。


 さて、オレたちは王都に帰ってきたわけだが、すぐに王様との謁見が予定に入った。バウムガルテン領の発展具合を報告するのだろう。


 とはいっても、王様との謁見には時間がかかる。


 オレはその間に一番気になっていた案件。リーンハルトの成長具合を確かめることにした。


 世界の命運がかかっているからな。リーンハルトには邪神を倒してもらわねば。


 そうしないと、このままだとオレやコルネリア、リリーが駆り出されそうだ。


 ちなみに、コルネリアとリリーはカサンドラに連れられて他の貴族の主催するお茶会に参加するらしい。バウムガルテン領に居る間に身に着けた礼儀作法を実戦で試すのだろう。がんばれ、コルネリア、リリー。


 以前にも使った喫茶店でリーンハルトを待っていると、高級店には似つかわしくない冒険者らしい粗野な格好をしたグループが入ってきた。その先頭に立っているのがリーンハルトだ。


「よお、ディー! 久しぶりだな。だいたい一年くらいか?」

「まだ一年は経っていないだろ。まぁ座れよ、リーンハルト。後ろのメンバーがお前の仲間か?」

「おう! さあみんな、座っちまおうぜ」

「ハルト、本当にこんな所に入って大丈夫なのか?」

「明らかに場違いなんだけど?」

「それにお金もないッスよ?」

「まぁまぁ座れって、ディーにみんなのこと紹介するからさ」


 リーンハルトが強引に仲間を座らせると、オレにメンバーの紹介を始めた。皆がかしこまったような緊張した態度だった。


 ローデリヒ、ドロテア、アーベル、ザビーネか。ふむ。ゲームで見た時の面影があるな。ゲームで実際に見たことあるキャラに会えると、なんだかテンションが上がってくる!


 もちろんリーンハルトのパーティのメンバーの中にはビアンカの姿もあって安心した。


「オレがディートフリート・バウムガルテンだ。せっかくこうして会えたんだ。これもなにかの縁。この場はオレのおごりだ。好きなものを頼むがいい」


 各人の自己紹介の後、オレがそう言うと、リーンハルトがさっそくとばかりに店員を呼んで注文していく。


「ハルトくん、そんなに頼んじゃあ……」

「大丈夫だって」

「そうだぞ、ビアンカも他の者も遠慮はするな。好きなだけ頼むがいい」

「さすが噂の伯爵様ね」

「ありがとうございまッス」


 肉体の年齢はたしかに同年代だが、精神的な年齢だと倍以上違う。なんだか親戚の子どもたちにお菓子を与えているようでほっこりした気持ちになった。


 まぁ前世のオレに頼れる親戚なんて居なかったが……。


「それで、冒険の方はどうなんだ? 上手くいっているか?」

「おう! 今度『氷雪林』に挑むつもりだ」

「ほう?」


 『氷雪林』とは、王国内にあるダンジョンの名前だ。その名の通り、一年中氷雪に覆われた極寒の大地である。スノーラビットやスノーウルフ、スノーゴーレムなどのモンスターが出現するが、最奥地にはスノードラゴンが居る。ドラゴンとしては最下級のモンスターだが、今のリーンハルトたちに勝てるだろうか?


「勝算はあるのか?」

「一応な」

「まぁ、その前に『氷雪林』に挑むための装備を整えないとですけどね。今のまま行ったら凍っちまう」

「あ、ああ、そうだな……」


 オレはローデリヒの言葉になるほどと思った。たしかにゲームでは寒さなんて関係ないが、現実はそうもいかない。ちゃんと耐寒装備を準備しないといけないのだろう。


 冒険者はたいへんだな。


 なんだかリーンハルトの様子がおかしいのも気になるな……。


 よく見れば、リーンハルトのメンバーたちは使い込まれた装備をしている。その見た目は歴戦の冒険者として映るかもしれないが、ようはそれだけ長い間装備が新調されていないということだ。


 金ぐらい自分で稼げと言いたいところではあるが、これはテコ入れが必要かもしれないな。ゲームでも経験値稼ぎ以上に金策に時間を取られたものだ。

お読みいただき、ありがとうございます!

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