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129 モンスター村

「まさか本当にあるとはなぁ」


 オレの目の前には、森が切り開かれ、明るい空間が広がっていた。そこかしこにまるで竪穴住居のような建物があり、ゴブリンやオークが闊歩している。ゴブリンとオークの共同の村みたいだ。


 ゲームでは、モンスターは人類の敵として描かれ、こういった生活の部分にはスポットライトが当たらなかった。なんだかすごく変な気分だ。


 でも、考えてみればモンスターも生き物である以上、こういった生活基盤を持っていたとしても不思議じゃないな。


「どういたしますか?」

「殲滅しよう」


 エレオノーレの問いかけにオレは簡潔に答える。


 オレはゴブリンやオークの生態に興味なんてない。ただ邪魔だから片付ける。それだけだ。


「数が多そうですね。腕が鳴ります」


 クラウディアはやる気満々だね。まぁ数は多いと言っても相手はゴブリンとオークだからたぶん危険は少ないだろう。


 それでも安全策は取るべきだよね。


「最初はリリーの魔法で数を減らそうか。なんの魔法を使うかはリリーに任せるよ」

「ん」


 いつも通り反応の薄いリリーだが、ふんすっと彼女なりに意気込んでいるようだ。


「あとは質問はあるか? ないならいくぞ」



 ◇



 ドカーンッ! ドゴンッ! ビシャンッ!


 森に切り取られた空は青空が広がっているというのに、先ほどからすごい勢いで雷が降り注いでいる。まさに青天の霹靂だ。


 雷はピンポイントにゴブリンやオークを狙い撃ちにし、着実に数を減らしていく。


 ゴブリンやオークたちはもう大騒ぎだ。雷を避けようと粗末な家に入っても、雷は軽々と家を破壊していく。どこにも安全な場所など無い。


 のどかな村の様子は、逃げ惑うゴブリンやオークで、今や蜂の巣をつついたような騒ぎだ。


 このままリリーの魔法だけで殲滅できてしまいそうだな。


 安全だし、このまま続行したいところだが、しかし、それでは前衛陣が納得しないだろう。


「リリー、そろそろいいぞ。ありがとう」

「ん」


 リリーの雷の魔法が止むと、村の様子は一変していた。竪穴住居は燃え上がり、黒々とした煙が上がっている。村のいたるところには雷に撃たれたゴブリンやオークの死体が転がっていた。


 その後は文字通り掃討戦の様相を見せていた。


 生き残りのゴブリンやオークをサクッと狩っていく。ゴブリンやオークは恐慌状態で、組織的な抵抗も無かった。簡単なお仕事だ。


 まぁ、それでなくてもゴブリンやオークの文明レベルは石器時代で止まっている。彼らが組織的な防衛をしたとしても、面倒だが喰い破れただろう。


「なんだか消化不良です……」


 クラウディアをはじめ、前衛陣は歯応えが無いことに不満のようだった。簡単に済むならそれでいいじゃないかと思うのだが……。いつの間にこんなに立派な戦闘狂になったのだろう?


 掃討したゴブリンやオークから右耳を切り取り、村の中を探索しても特にこれといって目立ったアイテムもなかった。しけた村だぜ。


「さて、どうするか……。今日はここで一夜明かすか?」


 日が暮れるにはまだ早いが、せっかく建物があるんだからそこで一夜を明かすというのもいい考えのような気がした。


「死体がゴロゴロ転がっている所で寝るのは……」

「そうですね。あまり気分のいいものではありません」


 いい考えのように思えたが、エレオノーレとクラウディアには不評のようだった。


「それに建物の中も臭そうだし……」

「お兄は臭くないの?」


 コルネリアとリリーも苦言を呈する。たしかに村の中は臭い。建物の中はもっと臭い。たしかに臭いのは辛いが、雨に降られても大丈夫な家というのは臭いのを我慢する価値があると思ったのだ。


 しかし、彼女たちにとっては臭くて汚い場所にはこれ以上居たくないのだろう。


 仕方ない。


「じゃあ、そろそろ野営に適した所を探そうか。村があるってことは、近くに川なり池なり水場があるはずだ。まずは水場を探してみよう」


 生水をそのまま飲むのは危険だが、水というのはあるといろいろ便利だ。


 リリーの魔法やコルネリアの持つ聖剣で水を生成することもできるが、今は冒険の途中だ。なるべく聖力の消費は抑えたいところだね。


「リリー、残りの聖力はどのくらいだ?」

「ん。半分くらい」

「そうか」


 そろそろリリーの聖力の温存を考えた方がいいな。いざという時に聖力が無い魔法使いなんてなんの役にも立たない。


「リリー、魔法の使用を控えよう。前衛陣もリリーの援護は基本無いものと考えてくれ。これ以降はオレが援護する」


 オレは手に持っていた赤い宝珠を握ってみせる。


 まぁ、いざとなれば、治癒のギフトには聖力を相手に譲渡するスキルもある。リリーの聖力が枯渇しても最悪問題ない。


 それに、あくまでオレがするのはあくまで援護だ。止めは前衛陣に譲り、前衛陣のギフトの成長を狙う。


 しかし、ゲーム時代から思っていたけど、モンスターに止めを刺した者しかギフトが成長しないというのはクソゲーだよな。貢献度によって振り分けろとは言わないが、せめて経験値は等分してほしいものだ。


「じゃあ、出発しようか」

「「「はい」」」

「ん」


 オレたちは今日の寝床を求めて森の中へと足を進めるのだった。

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