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126 冷めた視線

 本村の屋敷から見える景色もだいぶ様変わりしたな。住人の住居も泥レンガを使ったものから石や木を使ったものにバージョンアップしているし、さまざまな店がオープンした。


 さすがに王都ほどの賑わいには遠く及ばないが、なかなか賑わっている。


 商会がこぞって店を出したがるし、新たな住民も増えたし、出稼ぎ労働者もかなり増えているから、バウムガルテン領では建設ラッシュなのだ。


 造った公衆浴場もかなり人気みたいだ。昨日バッハがホクホク顔で報告に来ていた。バッハも妻のデリアもお互いに距離が近くなって喜んでいることだろう。結婚してすぐにバッハを王都に連れて行ってしまったからな。オシドリ夫婦で近所でも有名らしいし、悪いことをしたな。


 まぁ、バッハのことはいいんだ。あいつ、王様にドラゴンキラーの称号を貰ってちょっと調子に乗っているからな。これからは公衆浴場の長としてデリアと一緒に過ごすがいい。


 またなにかあったら呼び出すが。


 心配だったヒュドラの討伐も済み、東の森の開墾も進み、領地も広がれば木材も手に入る。金が見つかった山までの開墾も済み、金の採掘集団も来たし、これで金の採掘も始まるな。


 王様に金が出たって報告したら、いろいろ手を回してもらったしな。専門家をバウムガルテンに寄越してくれるらしい。


 バウムガルテン領の開発は順調だ。やったね!


 まぁ目下の問題は……。


「はぁ、はぁ、はぁ、もう堪忍して……」


 ベッドの上に転がるあられもない姿をさらしたゾフィーを見ると自分の意志の弱さを感じてしまう。


 オレはなんだかんだ言いつつ『深紅の誓い』との関係を続けていた。


 コルネリアに不潔とまで言われてしまったのに、なんでオレは……。でも、誘われるとどうしても断れないんだ。


「あんっ!」

「ディー? よろしければもう一度どうですか?」


 カサンドラがゾフィーの胸に手を這わして、ニコニコしながらオレに問いかけてくる。


 そうだよ。なんでオレと『深紅の誓い』のメンバーとの関係が続いているかというと、カサンドラが嫌がるどころかむしろ積極的に『深紅の誓い』のメンバーとの関係を勧めてくるのだ。


 なんで? いや、乗っちゃってるオレが悪いんだけどさ。


「もう許してぇ……」

「うふふ。でもゾフィー? 貴女のここはもっとと言ってるわ」

「んんんんっ!」


 カサンドラがノリノリでゾフィーの体を弄っている。その顔はニッコニコで見たことないくらい嬉しそうにしていた。


「さあディー? ゾフィーを愉しませてあげて」

「ああ」

「ぁぁぁぁぁッ!」


 これはオレの勘なんだが、カサンドラはもしかしたら男性よりも女性が好きなのかもしれない。そんなことを思うほど今のカサンドラは輝いて見えた。


 違うかもしれないけどね?


 コルネリアには悪いことをしている。


 そんな罪悪感さえ欲望に変えて、オレはゾフィーの体を貪った。



 ◇



「お兄さま……」


 ビクウッ!!!!!


 翌朝。不意に背後からコルネリアから声をかけられた時、オレの体はまるで雷に撃たれたように体が震えた。


「な、なにかな?」


 振り返ると不服そうな、不機嫌そうな、リリーのようにジト目をしたコルネリアと目が合った。


 お、怒ってる……?


 心当たりしかないオレは戦々恐々だ。


 コルネリアはジトーとオレの目を見ている。


「不潔……」

「ッ!?」


 バレてるッ!?



 ◇



 あの後はたいへんだった。コルネリアは不機嫌だし、リリーも勘付いているようで蔑みの視線で見てくるし、エレオノーレやクラウディアにも苦笑されてしまった。


「はぁー……。朝食の時間とか地獄だったぞ? 皆オレを睨んでいるんだ。オレ、そんなに悪いことしたか? …………してるよなぁ……。どうすればいいと思う?」

「知りませんよ。自分で考えてください」


 執務室。報告に来たバッハがオレを冷めた目で見ていた。


「そんな目で見るなよ。自分はデリアと上手くいってるからって」

「デリア一筋ですから」

「くぅー、なにも言い返せねぇ……。なぁバッハ、王都に居た時はどうしてたんだ?」

「どう、というのは?」

「とぼけるなよ。性欲処理の話だ。王都にデリアは居なかっただろ? どうやって処理してたんだ?」

「旦那様、いささかお話が……」

「止めてくれるなよ爺。大事な話なんだ」

「はぁ……」


 爺がやれやれとばかりに首を横に振る。


「俺としても止めていただきたいんですが……」

「それで、バッハはどうしてたんだ?」

「それは……」

「大の大人が恥ずかしがるなよ。かわいくないぞ? というか、最近のオレの性欲はおかしんだ。理性が利かない。そのへんの娼婦に急に誘われても断れ切れるかわからんほどだぞ? 抑える方法があるならぜひとも知りたい」

「まぁ、完全に抑えるのは難しいですよ? 俺の場合は適度に自分で抜いてましたし……。旦那様の場合、奥様がいらっしゃるんだから頼んでみたらどうですか?」

「なにを?」

「べつに抱かなくても、手でしてもらっても胸でしてもらってもいいでしょう? 奥様も他の女を抱くよりは協力してもらえると思いますよ?」

「そのカサンドラがどうやら楽しんでいるようでなぁ」

「え? 旦那が他の女を抱くなんて、普通は嫌がるんじゃあ?」

「そう思うだろ? むしろ嬉々としてオススメしてくるほどだぞ?」

「はえー……」


 バッハが変な溜息を漏らす。そうだよな、おかしいよな?


 なんでだ?

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