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123 褒美

「んじゃ、サクッと発表してくぞー」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」


 ヒュドラの討伐も終わり、東の東村に帰ってきたオレたちは、早々に今回のヒュドラ戦でのMVPを発表することにした。


「MVPには、ヒュドラの不死の頭と、このオレがなんでも願いを叶えてやろう!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

「ただし、オレに叶えられる範囲だがな」

「「「「「Boooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」

「静まれ!」


 パンパンと手を叩くとブーイングが納まり、半裸状態の冒険者たちが期待を込めた視線でオレを見てきた。なんだか照れる。


「公平性を期すために、MVPを選ぶのはギルド長に頼んだ。実はオレもまだ知らん。ほう……?」


 片手に持っていた羊皮紙を広げると、まぁ妥当かなというパーティ名が書いてあった。


「では発表しよう! 栄えあるMVPパーティは……。おめでとう、『深紅の誓い』だ!」

「「「「「きゃー!」」」」」

「「「「「ずあー!」」」」」


 その途端に、女の子の黄色い歓声と男たちの野太い悲鳴が木霊する。


「まぁ、そうだろうな。嬢ちゃんたちやるな!」

「おう! 最後の一撃、すごかったぜ!」

「おめでとさん!」


 ごねる冒険者も居るかと警戒していたのだが、わりと冒険者たちはさっぱりとしていた。残念そうにしながらも『深紅の誓い』の面々を祝福している。


「『深紅の誓い』のメンバーは前へ」

「本当に私たちなのね!」

「やった!」

「当然よ!」


 きゃっきゃ言いながら『深紅の誓い』のメンバーがオレの前へと姿を現した。怪我はしていないが、装備が壊れ、血や泥に汚れている。ヒュドラ戦の激戦を物語っているようだった。彼女たちは、むしろ薄汚れた姿を誇っているようにさえ見えた。


 そんな彼女たちの姿は、眩しいほどに美しく思えた。


「おめでとう、『深紅の誓い』。君たちにはヒュドラの不滅の首と副賞としてオレがなんでも願いを叶えてやろう。なにか望みはあるか?」

「望み……」


 まぁ、いきなり望みは何だと言われてもすぐには出てこないよな。


「個人の望みは後で聞くとして、先にヒュドラの首を……。どうした、テア? なにか質問でもあるのか?」


 顔を伏せたままおずおずと手を挙げる『深紅の誓い』のヒーラー、テア。なにかあるのか?


「領主様?」

「なんだ?」

「その、望みは本当になんでもいいのですか?」

「ああ、オレに叶えられる望みならな。不敬だなどとは言わないから、なにかあるなら言ってみろ」

「では! わたくしといいいいい、一夜を共にしていただくことも……ッ!?」

「え……?」

「テアちゃん!?」


 こいつ、なにいってるの?


「わたくしは、領主様に命を救っていただきました。そのお礼がどうしてもしたいのです! ですが、領主様が望むようなものを、わたくしはなにも持っていません。ですので、その……。恥ずかしながらわたくしの体を……」


 貧相ですが……。そう言ってまた俯いてしまったテア。


 …………マジ?


「そんな、テアちゃんが……」

「俺たちのアイドルがぁ……」

「テアちゃん! 考え直してくれ!」

「だが、テアちゃんが決めたことなら……」


 このテアという少女は冒険者たちのアイドルなのか、多くの冒険者たちが頭を抱えて悲鳴をあげている。


「そういうことなら、私も領主様との一夜を所望します!」

「え?」


 なにをトチ狂ったのか、『深紅の誓い』のリーダーのザシャまでそんなことを言い出す。何考えてるの?


「そんな!? ザシャちゃんまで!?」

「ザシャちゃん、俺だ! 結婚してくれ!」

「考え直してくれよ!」

「うるさいうるさい! 十三歳のお貴族様と寝れるんですよ!? こんなチャンス逃せるわけがないでしょ!」

「ザシャちゃんえー……」

「俺とも寝てくれよ!」

「むさい冒険者なんかと寝られるわけがないでしょ! 見なさいよ、領主様の細い首筋を! 男の子が男に変わる過渡期! ここにしかない美があるのよ!」

「お前ショタコンだったのかよ!?」

「ショタコンじゃないわ。私は美少年が好きなの。お貴族様の美少年と合法的に寝られるなんて夢みたい! でへへ、じゅるり」

「うわー……」


 ザシャって凛々しい女性騎士みたいな見た目なのに……。中身がこれって……。


「それじゃあ、私も領主様との一夜を望もうかしら。昔から貴族の尊い血には興味があったの。まずは精子の研究からしてみるわ」

「「じゃあ、あたしも!」」


 魔法使いのゾフィーや双子の斥候、ズザナとズザネまでそんなことを言い出した。


「いやいやいや、たしかになんでも言えといったが、これはさすがに……」

「領主様? あなたができることなら叶えてくれるのでしょう? もう十三歳だから精通しているわよね? 奥方まで居るんだし、今更でしょ?」


 なぜかゾフィーが責めるようにオレを問い詰めてくる。


「そんなの認められるわけないでしょ!」

「リア?」


 もうダメかも。そう思った瞬間、コルネリアが烈火のごとく怒り出す。


「ドーラは認めてあげたけど、なんでポッと出のあなたたちの相手をお兄さまがしなくちゃいけないのよ!」


 コルネリアとしては、断じて認めることができないことのようだ。


 まぁ、そうだね。もし、男冒険者がコルネリアの体を要求してきたら、オレはそいつを殺してしまうと思う。


「たしかコルネリアお嬢様だったかしら? 貴女のお兄さまは約束も守れないの?」

「そうじゃなくて!」


 なぜかコルネリアとゾフィーの討論になってしまった。


 どうしよう……。

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