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121 冒険者VSヒュドラ

 そしてヒュドラ討伐戦の当日。


 オレは集まった冒険者たちを激励し、冒険者たちを引き連れて早々に森へと入った。


 集まった冒険者パーティは十三。それにアヒム率いる領兵を加えて、総勢百人弱ほどの規模だ。指揮権はクエストの発注者であるオレが握っている。これだけの人数を指揮したことはないので、ちょっと緊張している。


 まぁ、冒険者が相手だ。軍隊みたいに指揮はできないだろう。


 冒険者パーティごとに大雑把に仕事を振ってやればいい。


 『深紅の誓い』がヒュドラを見つけたのは、森の中の池だという。森にはいくつか池があるのだが、ここまでは『深紅の誓い』のメンバーが先導してくれた。


「ヒュドラ、確認しました」

「報告ご苦労。事前に打ち合わせしたとおりに攻撃を仕掛ける。しくじるなよ」

「はっ!」


 ヒュドラは発見された池の畔から動いていないようだ。自分が強者だと確信しているのか、オレたちが池に来ても動きはない。


 気に入らないが、逃げ回られるよりもいいか。


「先陣は『深紅の誓い』だったな。さて、オレたちも動くか」


 ヒュドラとの戦闘は冒険者たちに任せて、オレたちと領兵は周りの邪魔になりそうなモンスターの排除だ。こちらは指揮はアヒムとエレオノーレに任せて、オレはヒュドラ戦の支援をする。


「じゃあ任せたぞ、アヒム、エル」

「お任せください」

「ええ、任せなさいな」


 アヒムとエレオノールたちを見送り、オレは前線へと向かう。


 これから始まるヒュドラ戦に興奮しているのか、冒険者たちに普段のおちゃらけた雰囲気はなく、顔は真剣そのものだ。


 その最前線。『深紅の誓い』の面々は最後の装備の点検をしていた。


「調子はどうだ?」

「領主様? こんな所に来て大丈夫ですか?」

「問題ない。それよりもどうだ? 倒せそうか?」

「ヒュドラの強さは嫌というほどわかっています。ですが、今日こそ倒します」


 『深紅の誓い』リーダー、ザシャは胸の前で力強く拳を作ってみせる。『深紅の誓い』は一度ヒュドラに敗走している。しかし、今はそんな情けない雰囲気はどこにもない。他のメンバーたちも張り詰めた糸のような緊張感を纏っていた。


「これはまだ伏せた情報だが、今回一番の働きを見せた冒険者パーティには、ヒュドラの頭の他にオレから特別賞がある。オレが叶えられる願いならばなんでも叶えてやるぞ?」

「なんでも?」

「なん……でも……?」

「それはつまり……」

「ああ、なんでも願いを一つだけ叶えてやろう。気張れよ」

「「「「「はい!」」」」」


 『深紅の誓い』は野心的なのか、オレの言葉を聞いて更に士気が上がった気がする。これは本当に『深紅の誓い』が勲一等を取るかもしれないな。



 ◇



「ツヴァイマギア、ファイアボール!」


 ヒュドラとの戦闘がついに始まった。開始を告げたのは、『深紅の誓い』の魔法使い、ゾフィーの二連ファイアボールだった。


 ドゴンッ!!! ドゴンッ!!!


 ゾフィーのファイアボールが弾け、ヒュドラがむずがるように体をよじった。


 デカい。オレとコルネリアが倒したヒュドラよりも一回り以上大きい立派なヒュドラだ。


「ライトニング!」

「ショックウェーブ!」

「蔦よ昂れ!」

「我望むは真なる同胞。集え、集え、集え、汝の生はここなるぞ!」

「これでも喰らいなさいよ!」

「クーゲルシュライバー!」

「ドライマギア、シャドウボール!」


 ゾフィーの魔法を皮切りに、さまざまな魔法がヒュドラを穿つ。中にはゴーレムを召喚する者まで居た。


「行くぞ!」

「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」


 大剣を持ったザシャのかけ声と共に冒険者たちがヒュドラに群がるように駆けていく。彼らに恐れはない。一直線にヒュドラに向かっていく。


「プロテス、リジェネーション、ヘイスト、クイック、ハイクイック、プロテス、リジェネーション、ヘイスト、クイック、ハイクイック……」


 オレは駆けていく冒険者一人一人に強化魔法をかけていく。これで多少は死傷率が下がるだろう。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


 ヒュドラも完全に立ち上がり、冒険者たちを迎え撃とうと九本の大蛇のような首をくねらせる。


「だりゃあああああああああああああああああ!」


 先手を取ったのはザシャだった。ヒュドラの噛み付き攻撃を華麗に避けると、ヒュドラの首に大剣を叩き込んだ。


 強化魔法が威力を発揮したのか、ザシャの大剣は一撃でヒュドラの太い首を斬り飛ばした。


 それと同時に、ヒュドラの斬られた首からは紫色の毒がもうもう立ち込めた。


「ポイズナ!」

「ファイアボール!」


 オレが解毒の魔法を唱えると同時に、『深紅の誓い』の魔法使い、ゾフィーがヒュドラの傷口を焼こうと魔法を発動した。


「チッ!」


 しかし、頭を斬り落とされたヒュドラの首はでたらめに暴れまわってファイアボールを避けてしまった。あんなに暴れられたら、当てるのは難しいだろう。


「ファイアボール!」


 ゾフィーは今回唯一の火魔法使いだ。早くヒュドラの傷を焼こうとファイアボールを連発するがなかなか当たらない。


 その間にもヒュドラの毒は辺りに充満し、前衛が次々と毒にかかっていく。


 もしかしたら、ヒュドラは毒を撒きたくて、わざと首を斬らせたのかもしれないな。


「レッサーヒール!」


 その時、ヒュドラの傷口が淡く緑色に輝き、傷口が急速にふさがる。『深紅の誓い』のヒーラーであるテアが【レッサーヒール】を唱えたのだ。

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