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118 金

「お兄さまはお義姉さまを身も心も愛しているんですよね?」


 コルネリアが少し顔を赤くして問うてくる。身も心もと言葉を濁しているが、話の本題は肉体関係のことだろう。


「私はお義姉さまが羨ましいんです。私だって、恥ずかしいけど、お兄さまになら……」


 オレはコルネリアのこの言葉に頭を強く殴られたような衝撃を受けた。


 コルネリアは、オレと肉体関係を結びたいと望んでいる!?


 好きな人としたいと思うのは当たり前のことかもしれない。だが、オレはコルネリアをそういう目で見れるだろうか?


 オレは確かにコルネリアを愛している。その気持ちに嘘はない。もし邪神が復活して、オレが世界中で一人しか助けられないとしても、オレは迷わずにコルネリアを選ぶだろう。それぐらいコルネリアはオレにとってのすべてだ。


 だが、オレはコルネリアを抱けるだろうか?


 そんな畏れ多いこと、オレに可能なのだろうか?


 コルネリアはオレにとって天使を超えて女神だ。この世界の女神を名乗る奴は信仰していないが、コルネリアなら信仰している。


 オレにはコルネリアを抱く自分がどうしても想像できなかった。


 まぁ、コルネリアはまだ十三歳だ。だからそういう気持ちにならないだけかもしれない。


 コルネリアと約束した結婚の時までまだ五年もある。五年もあれば、女の子は別人のように美しく変わるだろう。


 たぶん。


「リア、オレはリアと結ばれるまでそういうことはしないつもりだ。リアの体はまだ小さすぎる。リアに無理をさせたくない。どうか、わかってくれ」

「はい……」


 コルネリアがわかりやすいくらいしょげてしまう。


 だが、こればかりは仕方がない。


 オレはコルネリアの前髪をかき上げるとコルネリアのおでこにキスをした。


「お、お兄さま!?」

「オレはコルネリアを愛している。その気持ちに嘘はないよ」

「はいぃ……」


 頬が赤らんだコルネリアは世界一かわいらしい。こんなかわいい天使がオレと結ばれることを望んでくれるなんて夢みたいだ。


 オレたちは、ちょっと肩身の狭そうな爺を無視して二人で抱き合っていた。



 ◇



 オレたちは森に潜ったり、休んだりしながら日々を過ごしていた。バウムガルテン領の開発も順調に進んでおり、もうすでに東の森の三分の一ほどを伐採できたらしい。


 バウムガルテン領が景気がいいと聞きつけて出稼ぎにきた労働者や、そんな労働者を狙って商売する商会も増えた。


 まさにどんどん人が集まる好循環が生まれ、加速度的に領地の発展が続いていく。


 資金もまだまだ大量にあるし、この好循環はもっともっと続いていくだろう。


 初めてのことだらけで悪戦苦闘するかと思ったが、オレは指示を出せばいいだけで、あとは職人や専門家たちがいいものを作ってくれる。思ったよりも楽で、森に潜って冒険者の真似事もできるくらいだ。


 そして慶事は続く。


「なに? 金が出た?」

「へい」


 執務室の大きな執務机を挟んで立つ男は、まるで山賊の頭のような恰好をしていた。今回領地に呼んだ山師の一人だ。そいつが似合わない満面の笑みを浮かべて、揉み手をしながら言った。山から金が出たと。


 とても胡散臭い男だ。しかも、言ってることもかなり信憑性が怪しい。鉱石が見つかればいいなとは思ったが、まさか本当に見つけたなんて報告が上がってくるとは。


「それは本当なのか? まさか、本当に金が出るとは……」

「へい。川の底をさらいましたが、間違いねえです。お山には金が眠っていやす」

「川の底?」


 オレに山師の知識なんて無いからわからないんだが、なんで川の底を調べたら金が出るなんてわかるんだ?


「へい。お山の土は、雨に流されて川に集まりやす。石ころより重たい金は、川の底に溜まってるんでさあ。そいつを掬ったのがこちらになりやす」

「ほう?」


 男が取り出した白いハンカチ。爺が執務机まで持ってきてくれる。それをゆっくりと開くと、金色に輝く砂がハンカチの上にあった。


 これが金? 砂金というやつか?


「これが我が領で取れたのか……」

「へい。少なくともお山に金が眠っているのは確実です」

「なるほどな」


 こうして実物が出てくると、胡散臭さマックスだが、山師の話を信じざるをえないな。


「よくやってくれた。なにか望みはあるか?」

「へい。できますれば、今回の採掘をあっしの知り合いのところに頼んでくだされば、と。可能でしょうかね?」

「うむ。可能ではある。まさか本当に金が出るとは思いもよらなかったからな。まだどこかに採掘を依頼したわけではない。お前の知り合いの腕は確かなのか?」

「そりゃあもう! 昨年まで鉱山で働いていた腕利きですぜ。鉱山が閉められちまったからあぶれているだけでさあ」

「なるほどな。いいだろう。そこに依頼を出すことにしよう」

「ありがとうごぜえます、領主様!」


 オレは鉱石の採掘を生業とする奴らに伝手が無いからな。山師の話は渡りに船でもあった。


 しかし、出ればいいなと思ってはいたが、まさか本当に金が出るとはなぁ。


 できればミスリルやアダマンタイトの方がよかったが、金でも十分だ。バウムガルテン領は今後は鉱山の街として栄えることを約束されたようなものだからな。


 問題は金が枯渇した時だが……。鉱山以外の収入も確保しておかないとな。

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