117 発展場
そんなこんなでバウムガルテン領の発展は進んでいく。
冒険者ギルドは、まだ建物は完成していないが本格的に稼働し始めた。
冒険者たちも毎日のように森に潜り、モンスターを退治していく。今まで倒されたモンスターの中で一番の大物はコカトリスだ。まぁ、大きなニワトリだね。肉はおいしかったよ。
木の伐採も順調に進んでいた。少しずつではあるが領地も広がり、木材も溜まっていく。いい感じだ。
まさに金をばらまく感じでかなりのスピードで発展を進めている。
そうなってくると重要になってくるのが金の使いどころだ。
領民たちも屋台をしたり、土木工事をしたりして日銭を稼いでいる。かつてないほどバウムガルテン領には金が溢れているのだ。
だが、金を使うところが無ければ金を得る意味がない。
そこで、オレは大きな公衆浴場を開業した。急いだため雑な作りになってしまったが、かなり広い。水はリリーの魔法やコルネリアの聖剣の力を使って集め、炎滅の宝珠で水を温めるだけの簡単な作りだが、なかなか好評だ。
そして、そこの責任者に抜擢したのはバッハだ。バッハならばお湯が温くなったらギフトの力で温めなおすことができる。
バッハの報告では、公衆浴場はかなり人気らしい。湯船に浸かるとか、貴族でもなかなかできない贅沢だからな。
あとは商人が店を作っている最中なので、それが完成したら金銭での取引がもっと活発になるだろう。
それまでのつなぎとして、バウムガルテン家で商店を開いたりしている。売れ行きがいいのは酒だな。アルノーに追加を頼まないと。
農業も手を抜いていない。
バウムガルテン領では、東の東村で小麦を生産しているが、他の村はディートリアを栽培している。まぁ、ジャガイモのことだけど、オレはディートリアの名前を広めたいのでそう呼んでいる。
そのディートリアだが、連続で栽培することができない。連作障害が起きてしまうのだ。またディートリアを栽培するためには土地を休ませるしかないのだが、その間畑が使えないのはもったいない。
そこで、オレは王都でいろいろ調べてきたのだ。
オレが目を付けたのは養鶏だ。畑を柵で囲って、ニワトリを放し飼いにする。ニワトリが虫などを食べてくれるし、ニワトリの糞は、畑の土をよくしてくれる。
ベンノに無理を言ってニワトリを集めてもらったし、養鶏を始めるのに支障はない。
それに、ベンノとアルノーには、ニワトリ以外の動物も集めてもらった。ブタやウシ、ヒツジなんかがそうだ。まずは数を増やしていかないとな。
あとはこんな報告もある。
バウムガルテン領は山に囲まれた盆地にあるのだが、周囲の山々に有用な鉱石が埋まっている可能性があるらしい。
王都から連れてきた山師の話だ。
これまで通行の妨げになっていた憎々しい山々が、まさかお宝を孕んでいる可能性があるとは……。
今まで金がなかったため、山々を調査する体力がバウムガルテン領にはなかった。
まぁ、信じる信じないは別にしても、一度確認した方がいいよな。山師には冒険者の護衛を付けて山の調査を命じた。できればオリハルコンやミスリル、アダマンタイトなどの貴重な鉱石が出てほしいところだが……。まぁ、どうなるかわからん。
「まぁ、こんなところか」
執務室の椅子に上体を預けると、背筋が伸びて気持ちがいい。
「休憩になさいますか?」
コンコンコン!
爺の言葉に頷きそうになると、ノックの音が飛び込んできた。
「ん?」
「旦那様、コルネリアお嬢様がお見えです」
「入れてくれ。休憩にしよう」
「かしこまりました」
爺が扉を大きく開けると、ニッコニコのコルネリアが姿を現した。ドレスを着ておめかしまでしている。今日はなにか予定でもあっただろうか?
「お兄さま、ごきげんよう」
「ごきげんよう、リア。どうしたんだい?」
「これからエルとクラウとお義姉さまとリリーとお茶会なの。お兄さまも来る?」
「うーん……?」
オレが参加しても女の子の中にオレ一人だからちょっと気まずいかな。
「オレは遠慮しよう。リアは楽しんでくるといい」
「そっかー……」
コルネリアが残念そうに、いや、少し寂しそうにしている。
オレは苦笑して立ち上がると、コルネリアの腰を手に取って抱きしめる。ふわっと香った花のような香り。香水まで付けているらしい。
「リア、どうしたの? 少し寂しそうに見える」
「わかるの?」
「まぁね」
「えっとね……」
「お兄さまにはなんでも話してほしい。そう約束しただろ? どんな話だって笑ったりしないよ」
「うん……。その、ね。お義姉さまのことなんだけど……」
「ドーラの?」
「うん……。私ね、お義姉さまとどう接していいのか今もわからないの……」
「リアはドーラのこと嫌いかい?」
「嫌いじゃないわ。いい人だと思うし、すごく気を使ってくれるし、嫌いなわけではないの。でも……。その、ね? どうしても胸がざわざわしちゃうの。たぶん、お義姉さまが羨ましいんだと思う……」
そう自分の心を吐露したコルネリア。嫉妬だろうか? いや、嫉妬ほど育った感情ではない。感情になる前の心のしこりみたいなものだと思う。
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