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011 コルネリアのギフト

「おはようございます、お兄さま!」

「ああ、おはよう、リア。今日もいい天気だよ」


 ちょっとばかりじゃないほど古ぼけていて、勘違いじゃなければ少し斜めに倒れかかってる食堂。そこでオレはコルネリアと朝の挨拶をする。


 もうそれだけで感動ものだ。涙が出てくる。


 あの、あの、コルネリアが……。いつも自室のベッドの上で食事をとっていたあのコルネリアと一緒にご飯が食べれるなんて、オレはなんて幸せ者なんだ!


「いただきます!」

「ああ、ゆっくりおあがり」


 痛々しいほどに痩せてしまったコルネリアだが、邪神の呪いを解呪して以来、すっかり元気になっていた。食事の量も増え、順調にやせ細った体にも潤いが戻り始めていた。


「おいしいね、お兄さま!」

「そうだね。料理長には金一封やるべきかな?」


 ほとんどの食事を残していたコルネリアを知っている身からすれば、ビックリするほどの食欲が回復していた。


 それだけじゃない。コルネリアは運動もできる。デリアの話では、たまに屋敷に集めた子どもたちと一緒に遊んでいるらしい。


 普通なら苦言を呈するべきだが、コルネリアが走り回る姿を見て皆感動してそれどころではなかったな。


 とはいえ、コルネリアには勉強も運動も必要だ。そして、我が屋敷では教育ができる人材をすべて集められた子どもたちの教育の為に使っている。コルネリアの教育を担う者がいないのが現状だ。


 子どもたちと一緒にコルネリアを学ばせるというのはいい考えかもしれないな。


「リア」

「なあに、お兄さま?」

「リアは平民の子どもたちと一緒に勉強するのは嫌かい?」

「ううん! みんな優しいもの!」

「そうか」


 まぁ、問題が出るまではコルネリアを子どもたちの中に入れてみよう。もしかしたらお友だちもできるかもしれないし。


 待てよ?


 コルネリアにすすすすすす、すすす好きな人とかできたらどうすればいいんだ!?


 ダメだ! コルネリアに恋愛などまだ早い!


 だが、コルネリアの気持ちを踏みにじるようなマネはしたくない……。


 くそっ! どうすればいいんだ!?


「ねえデリア? お兄さまったら頭を抱えてくねくねしてどうしたのかしら?」

「さあ、私にはわかりかねます……」



 ◇



「今日からお前らと一緒に勉強することになったコルネリアだ。オレの双子の妹に当たる。礼儀正しく接しろ」

「コルネリア・バウムガルテンです。よろしくおねがいします!」


 それから二週間後。ちょうどコルネリアも十歳になったからと子どもたちの教室に入れてみることにした。


 これまで邪神の呪いのせいで座学もまともにできなかったコルネリアだが、地頭がいいのか、それとも同じような年頃の子どもたちと勉強するのはいい刺激になったのか、まるで真綿が水を吸うようにすべてを吸収していった。


 そんな中でもコルネリアが特に好んだのが体育の授業だ。体育とは名付けられているが、言ってしまえば戦闘の授業だな。モンスターが居るような世界だ。強いというのはそれだけで持て囃される。


 そして、コルネリアは強い。


 最初は今まで体を満足に動かせなかったから体育の時間を楽しんでいるのかと思った。だが、そうではなかった。


 もう一度、今度は正確に言おう。コルネリアは最強だった。


 年上の男どころか、この領一番の強さで、体育の授業の教官だった爺の息子アヒムもコルネリアには敵わない。むしろコルネリアに指導を受ける始末だ。


「もしかしてだけど、これがリアのギフトの力なの?」

「そうなの! 名前はまだわからないけど、これが私のギフトの力よ!」


 武器、特に剣を持ったコルネリアは強かった。おそらく戦闘系のギフトなのだろう。アヒムも、そして子どもたちの中には同じ戦闘系のギフト持ちも居るのだが、コルネリアには敵わない。名前がわからないのはもどかしいけど、コルネリアのギフトは戦闘系のギフトの中でも最上位に近いのだろう。


 ギフトの名前がわからないというのは、コルネリアが侮られる原因になるかもしれないけど、この強さなら問題ないだろう。


 たしかゲームの主人公も自分のギフトの名前がわからなくて侮りを受けたけど、ヒューブナー辺境伯の息子に勝って以来その声は鳴り潜めたはず……。


「ん……?」


 ゲームの主人公も自分のギフトの名前がわからなかった?


 たしか、主人公もゲームのオープニングで夢に出てきた女神よりギフトを賜るけど、その名前が雑音が入ったようになって聞き取れなかったよな……?


 まるでコルネリアの見たっていう夢みたいじゃないか!


 この共通点は何を示している?


 コルネリアに危険はないのか?


 もしオレが一生懸命ゲームの知識を使ってでも危険を避けたとしても、ゲームの危険な運命がオレやコルネリアを離さなかったら……。


 ブルリッと寒気がして体が震えた。


 コルネリアには、平凡と言われるかもしれないが幸せな人生を歩んでほしかった。でも、コルネリアに危険が迫る可能性があるのなら……。


 コルネリアを強く育てよう。オレがゲームの修正力かなにかで死んだとしても、一人で生きていけるほど。


 オレはここにきて方針を変えた。オレが全力でコルネリアを護るのは大前提だが、コルネリア一人でも降りかかる火の粉を撥ね退けられるように、オレはコルネリアを強化することに決めた。

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