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101 カサンドラ

 人生四回目の王宮。それは意外な形でやってきた。


「クラウディア殿下、お呼びと聞き参上いたしました」

「よく来てくれました、ディー、リア。そちらの子が?」

「はい、私の妹を紹介させてください」

「許します」

「私の一つ下の妹、リリーでございます」

「お初にお目にかかります、クラウディア殿下。リリー・バウムガルテンと申します」


 心配していたが、いつものそっけない態度ではなく、完璧に貴族令嬢を演じてみせたリリーの姿に安堵する。ただし、リリーの顔はいつもの無表情なのが難点だな。笑えばかわいいのに……。


「ディーとリアにこんなにかわいらしい妹が居るとは驚きました。さあ、三人ともお座りになって」

「失礼します」


 クラウディアが高級そうな白いソファーへと案内してくれる。


 この部屋はクラウディアの私的な応接間らしい。白を基調としたソファーやテーブル、その他の家具も女の子らしいかわいらしいデザインだ。コルネリアが羨ましそうにキョロキョロと部屋を見ていた。


 バウムガルテン領の屋敷は新しく立て直したから、コルネリアに満足してもらえるものになっているといいな。


「どうぞ」


 ソファーに座ると、すぐにお茶とお菓子が用意された。とても素早く、かつ洗練された動きだな。バウムガルテン領の教育にも活かせるかもしれない。


 そう思ってお茶とお菓子を用意してくれたメイドさんを見ると、まだ若い女性だった。見覚えもある。学園にもクラウディアのお付きメイドをしていた少女だ。そして、オレが初めてクラウディアに会った時にもクラウディアの傍でメイドをしていた美少女だ。


 年齢は十八くらいか? かわいいというよりも綺麗な娘だ。スタイルもとてもいい。特に胸がすごい。ついつい目が行ってしまう。


 ゴスッ!


「くはっ!?」


 メイドさんの胸をそれとなく見ていたら、両隣から脇腹に鋭い痛みが走った。コルネリアとリリーが肘で殴ってきたのだ。痛い。しかし、そのおかげでメイドさんの胸から目が離せた。


 メイドの胸を見つめていたなんて悪評が立つのは情けないからな。助かったと言えば助かった……のか?


「ディーも気になりますか?」

「え?」


 まさか、クラウディアにもオレがメイドさんの胸を見ていたことに気が付いたのか!? 女性は視線に敏感だというが、本当なんだな……。怖い……。


「ディーも知っているのでしょう? この子がカサンドラ・アルトマイヤーです。ディーも噂くらいなら聞いたことがあるでしょう?」


 噂? なんのことだ?


「まさか、知らないのですか!?」


 クラウディアがひどく驚いたような表情をみせた。どうやら、かなり有名な噂でもあるようだが……?


 最近はバウムガルテン領へと連れていく人材を集めるために奔走していたからな。あまり貴族の噂について調べていなかったのが仇になったな。もっと常にアンテナを張り続けるようにしよう。


「さすがにそれはドーラも気の毒です。それとも意図的に伏せているのでしょうか?」

「お爺様はお茶目な一面がありますから……」


 ドーラという愛称なのだろう。カサンドラが困ったように眉を下げる。


 前にも思ったが、クラウディアとカサンドラはかなり仲がいいみたいだ。なにか二人だけの世界というか、二人だけに通じるなにかがあるのだろう。クラウディアが邪神の呪いから助かった時もカサンドラは涙を流して喜んでいたしな。


 しかし、カサンドラのお爺様なんてオレは知らないぞ? どっかで会ったか?


 いや、待てよ。カサンドラの姓はなんといった?


「アルトマイヤー……?」


 それってもしかして、アルトマイヤー将軍の家か? 分家とかじゃないよな?


「やっと気が付きましたか。ディーは時々ひどく鈍い時がありますね。そうです。ドーラはアルトマイヤー将軍の孫娘に当たります」

「お爺様の件ではお世話になりました」

「いえ、私でお役に立てたのならよかったです……」


 まさか過ぎた。あの巌のような筋肉だるまの孫娘が、なんでこんなに美少女なんだよ!? こんなの詐欺だ! 遺伝子仕事しろ!


「ディーに知らせていないのはアルトマイヤー将軍の意向もありそうですし、わたくしは口を噤みますね?」

「えー……?」


 なにそれ? なんか怖いんだけど? そういえばあの筋肉爺さん、オレに報酬があるとかなんとか言っていたな? てっきりオレが伯爵になった時に祝い金を貰っているからそれで終わりかと思ったんだが……。まさか、まだあるのか?


「そういえばディーは領地に帰るのですか? そのような噂が囁かれていますけど」

「はい。領地の開発の指揮を執らねばなりませんので」

「そうですか……。そうだわ。そうしましょう」


 一瞬寂しそうな表情をみせたクラウディアだったが、急になにかを思い付いたように明るい顔を浮かべていた。


「どうしたのですか?」

「うふふ。ディーにはまだ内緒です。きっとお父様もお許しになってくれますわね。我ながらいいことを思い付きました」

「(ゴクリ……ッ)」


 王様案件? 王様が関わるような重大事なの? できれば早く教えてほしいのだけど? オレには拒否権なんか無いから、せめて心の準備をする時間が欲しい……。

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