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田園調布が戸越銀座の軍門に下る日

 ちょうど同じ日(2024年11月14日(木)、警視庁は職業不詳の八木華艶容疑者(27)=東京都足立区=ら男女9人を監禁と恐喝の疑いで逮捕した。当日の朝日新聞東京版夕刊社会面を盗用する・・ばかっ! 抜粋して、脚色した上で、引用する。


~暴力団対策課によると、中央区や品川区のホテルなどで「金を払わないなら犯罪として訴えるぞ」と脅し、金を取ったり不法監禁した疑い。風俗嬢は「ヤッたら罰金だかんね」と誓約書を書かせる一方、お胸を客の腕や背中や側面に押しつけたり、足を絡ませてアレとソレを意識させるなどして誘惑し、まんまと引っかかると怖いお兄さんを呼び出す手法。後は新橋の違法中国人熟女ぼったくりバーとおなじで、ATMまで引っ張っていき、金を引き出させる。

 警視庁によると、被害は1月~10月末で170件ほど寄せられ、被害額は3500万円に。とくりゅう(匿名・流動型犯罪グループ)の関与の可能性大。

 捜査関係者によると、性的サービスはやってないよ、といいつつ、性風俗店としての届け出をしていたという。さらに店側が通報もしていたという。

 林本悠希弁護士によると、一般的に風営法上の性風俗店ではないから営業禁止地位の適用がなく、学校や図書館などの近くでも営業しているケールがあるという。裏オプション、ネット上で言う「裏オプ」がつきものとのこと。~~


 戸越銀座商店街の食堂丸太屋の主人も、麻布十番のマンションを借りて、メンエスを開業してはみたが、これまでのところ、客どころか、嬢すら満足に集まらない。このニュースが、夕方のかき入れ時に、店内の天井近くに設置してあるテレビから流れてきたとき、ちょうど注文もはけて、厨房に置いてある穴の開いた固い丸椅子に座っていた店主は、「世の中、繁盛してるやつもいるんだなあ」と不用意に口走ってしまった。

「パパ、なに、のんきなこと言ってんの。こんなことやったら、一生、おてんと様に顔向けできない日陰の身になっちゃうじゃないの」

 同じく厨房内でならんで椅子に腰かけていた奥さんが夫のたわごとを聞き漏らすことなく突っ込んだ。

「おっ・・ もちろん、オレはそういうことはやらないよ、絶対にね。それこそ、天地神明に誓っても」

 すると、奥さんは、主婦の勘なのか、

「ちょっと、なにか、ヘンね・・」と夫の異変をするどくキャッチ。「な~にぃ~? なんか、おかしいぞぉ~。今日のパパは。変わった言葉なんか、使ってさあ。普段使わない言葉なんか使って」

「な、なに、なになになに。別に変わった言葉なんか・・」

 あぶねえ、あぶねえ。

「それに、パパ最近、ゴルフの回数、急に増えてない?」

 ちょっと待った。やめろやめろ。

「天地神明に誓ってって、佐村河内みたいじゃないの。あのベートーベンの生まれ変わりの」

よしっ! 男が生まれ持って備わる防御本能がとっさに機能して、渡りに船とばかりに、「ああ、そうそう、あれって、神南テレビだったよな、言い出しっぺ、ていうか、仕掛け人っていうか、マヌケなのって」ここから先は、『踏んづけプレー』なの?と勘違いされるほどアクセルを力いっぱい踏んづけて、「なんかそういやあ、いたねえ、そういう、作曲家も」

妻のほうも、マスコミのゴシップはけっして嫌いなほうじゃなかったから、ちょうど忙しい時間のエアポケットを愉しむつもりで、

「神南テレビの偉い人だか、プロデューサーだかしらないけれど、殿様お姫様の末裔ばかりで固めて、給料は軽くお手盛りで1000万超という特殊団体のなかにぬくぬくと巣食うクラシック好きな能天気野郎どもがどうせ引っ張ってきたんじゃないの」

 妻は、とたんに、饒舌になった。元来、おしゃべりなほうだったから、話題があればなんでもよかったのかもしれない。

「おいおいおい。また、ずいぶんと長舌の悪口をいったもんだね。どこでだれが聞いてるかわからないんだから、あまり、人のことは悪く言わないほうがいいと思うよ」

 そう、夫に言われるも、屁の河童とばかりに、やっぱり戸越界隈で生まれ育ったカミさんは、

「いいのよ、こっちだって、親の代から、ずっと献金してんだから。トップの、さらには、そこで飯喰ってる人たちの悪口くらい言ったって。どうせ、どんなに生まれ変わったって、あたしら、あっちの世界になんか行けっこないんだから」

 妻の悪口はとどまりそうもなかった。が、神南テレビが、己の、夫としての悪行の盾となっている現実に、ひとまず安堵の気持ちとともに、感謝の意を示すのであった。



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