田園調布が戸越銀座の軍門に下る日
棒探しすべく、あるじは街へ出た。都営地下鉄浅草線で五反田から宝町で下車。なんのことはない、オフィス街になっている。なぜここへ下車したかといえば、以前あるじが学校出たてのころ、新入社員時代に数年勤めた印刷会社がこのあたりにあったからである。が、そのころとすっかり様子も変わってしまった。地下鉄を地上に出て、中央通りへと街をジグザグに進むと、前は、よく画廊があった。今も残ってはいるが、前ほどではない。銀座線京橋駅真上にあった、明治屋の古いビルも変わってしまった。ここの地下一階に、たいしておいしくはなかったが、大衆食堂というのか、ビアホールというのか、この界隈のサラリーマン相手の店があったのだ。何回か利用したのをあるじは思い出す。銀座線改札を出て数段階段を上がって直結した地下一階だ。40過ぎ50代くらいの恰幅のいい、エプロン・割烹着姿の女性店員さんたちがおしゃべりしながら、それでも、楽しそうに接客してくれた。なんだか、明治大正昭和初期の雰囲気はこういうもんだったんじゃないか、とあるじは想像したりして、学生から社会人になったことを自覚させてくれた、そんな貴重な会社帰りの寄り道先となっていたのだ。
が、いまはもうない。あるのは、リニューアルして、その分以上に上乗せして、ふんだくってやろうという食べ物屋ばっかりのような気がしてきて、あるじはちょっと悲しくなった。1階の明治屋本店には入らなかったが、ここはきっと相変わらずお高い商売に徹しているんだろう。どうせ、法人様相手だから、ぽっと出の新入社員がチョコでも買おうかなどと立ち寄ったところで、軽くあしらわれてしまう。そんな、貧乏人の庶民にとっては嫌味な店だった。おそらくそういった、明治屋のツンとすました遺伝子はいまでも引き継がれているはずだ。まあ、それでも、高くていいものを提供し続けてくれるなら、東京の人間として、というより、一消費者として、まったく問題はないんだけどね。それよか、金正日一族にメロンを万景峰号で送っていたことのほうが重大だ。在日のみなさん、あんな連中を延命させたって、さんざん献金したってろくなことないですよ。やめたほうがいいですよ。それと、旧統一教会に日本人を売ることも、ね。住まわせてもらっている国、日本人に対して、弓を放つような真似だけはしてはいけませんよ。
などと、つらつら思いながら、銀座線に乗った。どうする。せっかくだから、日比谷図書館にでも、と霞が関下車。ちょうど昼だったから、裁判所で800円のスペシャルランチを食べた。唐揚げにキャベツの千切り、トマト、ごはん、味噌汁。学食と変わらない。が、結構うまかった。きっと、鳥もごはんも味噌汁もそれなりに裁判官検察官弁護士仕様になっているのだろうと勝手にいいように解釈していただいた。
日比谷公園は緑が目に優しかった。まだ、紅葉というわけにはいかない。野音では土建業界の労働組合が集会を開くらしい。午後1時からの予定だ。
図書館は平日のお昼だからだろう、近隣のお役人やサラリーマンたちが、退職した悠々自適組に混ざって、本や雑誌を広げていた。あるじもせっかくだからと2Fの新聞コーナーに寄って、イギリスのフィナンシャルタイムズを手に取ってみた。すると、一面トップに、昨日のトランプ氏の勝利の件がデカデカと写真付きで掲載されていた。トランプ氏がメラニア夫人と手をつないで、再び大統領の座を勝ち取った瞬間を一枚の写真はしっかり記録していた。気になるのは今後の氏の政策だ。敵対国だけでなく同盟国にも関税を掛ける。そうなると当然物価が上がり、再びインフレへと逆戻り。金利だって、切り下げたばかりなのに、また上がるとなれば、アメリカファーストが、実態は国民の生活を圧迫することになる。
しかし、図書館の平日はやっぱり60過ぎの高齢男性が主だ。この人たちをまさかスカウトして、ウチの短期バイトしませんか、というわけにもいかないだろう。どこにそんなにいい棒がいるのだろうか。そうこうするうちに、1Fでは竹久夢二展を行っているようだ。一般の入場料が500円。結構するね。図書館玄関左には大きなポスターがあって、その前で、テレビ局が撮影に来ていた。
あるじは、何の収穫もなく、約3時間ほど新聞を読んで、表に出た。外は少しひんやりしていたが、室内が暖房を効かせていたため、リフレッシュして気持ちがよかった。




