第1話 レベルアップ
「うわっ!」
急に聞こえてきた機械音に驚いたユウキは慌てて身構えた。
「今の音……どこからだ……?」
部屋の中を見渡したが、音が鳴ったと思われる場所は見当たらなかった。
ユウキは少し怯えながらも、気持ちを切り替えようと深呼吸した。それと同時に、どこからともなくまたあの機械音が聞こえ始めた。
【レベルアップ方法 まぁ、使ってみれば分かるんじゃね?】
「うわぁぁっ! なんだ!?」
なんと、音が鳴っていたのは女の子が渡した剣だったのだ。驚いたユウキはその剣を壁に向かって投げつけてしまった。
【いでっ! ちょ、物は大事に使えって習わなかったのか!?】
壁にぶつかった剣は怒ったように叫びだした。
「喋った……? キモッ……」
【おおぉぉぉいっ! ヒドくねぇか!? あ………】
さっきまで怒っていた剣が急に慌てたように黙りこ込んだ。
「………どしうしたんだ?」
【まずはレベルアップしてみましょう! この剣を持って何か切ってみるのデス】
「あれ、さっきまで普通に喋ってたのに………」
【何言ってるんだい? 剣はコミュニケーションできないデスよ。それよりレベルアップしてみましょう】
ユウキは、それでごまかしたつもりなのか? と思ったが、気にしないことにした。
それからおかしな剣への警戒を少し緩めながら手に取った。
「お前のレベルを上げたらちゃんと強くなるんだな?」
【………レベルアップしてみましょう】
剣はコミュニケーションできないフリしてるようだ。ユウキは何故そんなことをするのか全くわからなかった。
そんな疑問を持ちながらも、剣を持って家の外へ出た。剣は太陽の光を反射して、眩しいほどに美しく輝いていた。
「どうやってレベル上げるの?」
【………】
………応答なし。
やり方がわからないので、片っ端から色々試していくしかないようだ。
「まずは何か切ってみるか」
ユウキは近くにあった巨木に向かって横から剣を思いっ切りぶつけた。ゴンッという、剣で鳴ることの無さそうな、鈍い音が響き渡った。巨木に傷はほとんどついておらず、こん棒で殴った後のようなへこみだけができていた。
「コレって剣だよね……?」
剣なのに切れないことに納得がいかなかったが、使える武器があるだけマシだろう。
剣を眺めながらそんなことを考えていたとき、剣の中央部の水色のクリスタルが輝き出した。
「なんだ!?」
【レベルアップ レベルが 2 に上昇しました】
「おぉ……? 強くなったのかな……?」
ユウキは早速ステータスを確認した。攻撃力はちゃんと上がっていた。1だけだけど。
「おおおお! ほんとに強くなってる!」
【レベルアップの方法、わかったか? これでまぁ、色々やりまくって強くしていくんだ。よろしくな! あ………】
急に喋り出したと思ったら、また焦ったように黙りこ込んだ。
「変わった剣だな……。でも、面白そうだしいいかな!」
ユウキは剣をさすりながらそう呟いた。
「よぉーし! もっとレベルアップさせるぞぉ!」