第13話 春風君の、質問タイム
前回のあらすじ
ウィルフリッドの話で小夜子先生怒る。が、翔輝登場で賛成ムードに……と思ったら春風君からの質問が始まった。
突然の春風の発言に、謁見の間にいる者達全員が春風に注目した。特に小夜子とクラスメイト達(流水と水音と一部のクラスメイトを除いて)の視線がすごかった。
何故なら、眼鏡を外した春風の顔立ちが、翔輝以上のイケメンだったからだ。否、それはイケメンというよりも、「少女」、それも「美少女」に近いものだった。
元々春風が目立ちたくない理由の1つが、その「美少女」に近い顔立ちだった。幼い頃からそのせいで、色々と嫌な思いをしたことがあったからだ。しかも成長するにつれてだけじゃなく、涼司との生活や師匠との「修行」と称した「旅行」を経て、ますます美少女っぽさに磨きがかかってしまい、それが嫌で高校に通っている時は髪型を変えて、伊達眼鏡をかけるようになったのだ。
とまぁ、それはさておき。春風に見惚れていたウィルフリッドだが、すぐに正気に戻った。
「ど、どうかしたのかね勇者殿?」
正気に戻ったと言ってもまだ若干戸惑っているウィルフリッドに、春風は優しく微笑みながら言う。
「はい、ウィルフリッド陛下にいくつか質問したいことがありますので、よろしいでしょうか?」
するとその時、ハッと我に返った翔輝が割り込んできた。
「お、オイオイ待ってくれ幸村君、一体どうしたんだい? せっかく話がまとまってきたっていうのに」
そう言って春風の肩を掴む翔輝。そんな翔輝に、春風は笑みを崩さずに、
「前原君……」
ーー少し黙れ。
その時、謁見の間に緊張が走った。その場にいる者達全員、たらりと冷や汗を流した。翔輝に至っては、まるで金縛りにあったかのように、その場から動けなくなっていた。
春風は肩を掴む翔輝の手を剥がすと、ウィルフリッドに向き直った。
「質問、よろしいですか?」
その言葉に、再び正気に戻ったウィルフリッド。
「あ、ああ、構わない」
「ありがとうございます。ではまずは……」
そして、春風は質問を開始した。
「今回、俺達を召喚した理由は、世界を滅ぼそうとする邪神と悪魔を退治してもらうため、でよろしかったのですね?」
「そ、そうだ」
「なるほど。では2つ目。俺達を召喚する際に、あなた方は何を対価として捧げました?」
「対価……だと?」
「はい。まさかとは思いますが、人を生け贄にした、なんて言わないですよね?」
その言葉に、ウィルフリッドはカッとなった。
「違う! そんなことはしていない! 捧げたといえば、そこにいる我が娘ユリアンナと4人の神官達の魔力だけだ!」
「ふむふむ」
(嘘は言ってないな)
そう考えて、春風は質問を続けた。
「では3つ目ですが、神官さん達も良いですか?」
神官達は全員、戸惑いながらもコクリと頷いた。
「俺達の召喚に関してですが、あなた方の信じる神様は、何か言っていませんでした?」
すると神官の1人が、少し驚いた表情で、
「何か……とは?」
「そうですね。例えば、『あちらの世界の神からの許しを得た』とか。あ、この場合は俺達の世界、『地球』の神ですね」
その質問に対し、ウィルフリッドもユリアンナも神官達も、「何を言っているんだ?」と言わんばかりの表情だったが、すぐにそんなことを考えている場合じゃないと思い、
「い、いや、そのような話は聞いてはいない」
と答えた。これについてはユリアンナと神官達全員もウンウンと頷いた。
「ふーん、わかりました。では……」
「オイ! ちょっと待て!」
春風が次の質問に移ろうとしたその時、またしても翔輝が割り込んできた。
「さっきから聞いていれば、一体何をしているんだ!? 王様達の前で、失礼じゃないか!」
動けなくされたことに腹を立てたのか、プンスカと怒りながら喋る翔輝に、春風はため息を吐くが、すぐに優しく微笑んで、
「前原君……」
ーー黙れっつてんだろが。
その瞬間、再び謁見の間に緊張が走った! 翔輝、立ったまま気絶する!
「では質問を続けますね」
そう言って、笑顔で質問を続ける春風。
「あなた方が言っている『悪しき邪神』の名前は、なんというのですか」
その質問に、本日何度目かの正気に戻ったウィルフリッドは、
「あ、あぁ、邪神の名前は……」
その名前を聞いて、春風は表情を崩さなかったが、内心では驚いていた。
何故なら、邪神の名前が、この世界に来る前にアマテラスに聞いたエルードの神の名前と同じだったからだ。
(オイオイ、マジかよ)
その名前を聞いて、春風は左右の拳をグッと握った。
「4つ目の質問です。名前の横に『職能』と表示されているのですが、これは一体なんなのですか?」
「あ、ああそれは、その人間が持つ『才能』のようなものでな、この世界では15歳を迎えた時に神より授かるものなのだ」
「なるほど。ちなみにこの職能というのはいくつ種類があるのですか?」
「うむ、戦闘に特化した『戦闘職能』と、生産に特化した『生産職能』の2種類だけだ」
ウィルフリッドの答えに、春風は表面はどうにか平静を装いながらも内心ではショックを受けた。
(やばい。これやばいやつだ。『固有職保持者』ってバレたら……絶対ぶっ殺される)
よろけそうになるが、どうにか踏みとどまる春風。
「……最後の質問です」
しかし、すぐに気を取り直して、最後の質問に移った。それは、春風にとって、最も大事な質問だ。
「もし仮にも、邪神と悪魔を倒すことができた場合、あなた方は俺達に何をしてくれるのですか?」
さっきまでとは違って真剣な表情で質問する春風に、ウィルフリッドもまた真剣な表情で答える。
「もちろん、見事に倒せたならば、其方達を英雄として讃え、それ相応の名誉と褒美を出すことを約束しよう」
ウィルフリッドの言葉を聞いて、クラスメイト達は喜び、さらにやる気を出すようになった。
小夜子は必死で彼らを宥めるが、全然落ち着く気配がなかった。
そんな状況の中、春風は再びため息を吐くと、
「なるほど。以上で質問を終わります」
それを聞いたウィルフリッドは、安心した表情で、
「そ、そうか。何かわかったことはあったかな?」
春風は美少女の如く可愛らしい微笑みで言う。
「ええ、よくわかりましたよ」
そして、国王、王妃、王女2人、騎士、神官達の順番に見回すと、
「きったねー仕事は異世界人の俺らに丸投げして、テメーらはベッドでぬくぬくしていますってことがなぁっ!」
春風の暴言が、炸裂した。
そして、4秒の沈黙後、
『ゴファッ!』
吐血した。春風の言葉を聞いて、謁見の間にいる者達全員が吐血した。といっても、実際には血は吐いてないのだが。ついでに、左頬に殴られたような衝撃を受けた。
次回、春風君、豹変&マジでキレる。