第9話 準備完了、いざエルードへ
本日は3本投稿します。(ただし、本編1本、設定2本)
前回のあらすじ
春風君、スキルを色々追加しました。
突然のツッコミに首を傾げる春風。
「あの、なんで俺いきなりツッコミ入れられてるのでしょうか?」
『だって、賢者なのにスキル構成がそれっぽくないんだものっ!』
「いえ、せっかく[魔導式構築]なんてものがありますから、それでいっぱい作れば問題はないと思いますが」
『そうだけど、そうなんだけどっ!』
「それに俺自身、魔力ってのがどういうものかよくわかりませんので、まずはそれを理解するところから始めるべきだと思うんです」
『ぐぐぐ……』
正論を言われて何も言い返すことが出来ない神達。
しかし、諦めたのか、フゥっとため息を吐いたオーディンが、
「わかった。スキル構成についてはここまでにしよう」
「ありがとうございます」
春風とオーディンのやり取りを見て他の神達も気持ちを切り替えた。
「それじゃあ気を取り直して、エルードへの出発準備をしようか」
「はい、わかりました」
「あぁ、ちょっと待って」
突然のアマテラスの呼び止めに、「?」を浮かべる春風。
「行く前に、お願いしたいことがあるの」
「お願いですか?」
何だろうと思い、春風はアマテラスに向き直った。
「さっきも言ったけど、私達は今、向こうの神達と連絡を取ることができない状態なの」
「そういえばそうでしたね」
「だから、春風君には向こうに着いたら彼らに接触して、連絡出来るようにしてもらいたいの」
「それって、どうすればいいんですか?」
「今の君は私達神と契約しているから、彼らに触れるだけでOKだよ」
「なるほど。ところで、その向こうの神様の名前ってなんていうのですか?」
「ああ、それはね……」
春風はアマテラスからエルードの神の名前を聞いた。
「わかりました。では、行ってきま……」
「ああ、待って待って! 最後にもう一つお願いがあるんだけど」
「はぁ、何でしょうか」
「あのね……」
アマテラスのもう一つのお願い。それは、春風にとって気が乗らないものだった。
「君の気持ちはよくわかる。私達だって、正直同じ気持ちだよ。だけど……」
アマテラスは困ったような感じの笑みを浮かべながら、
「出来れば、ね。さっきのお願いと一緒に叶えて欲しいかなって感じ……かな」
その様子に、春風はハァっとため息を吐くと、
「わかりました。そのお願い、必ず叶えます」
と、若干納得できないと思いながらも、アマテラスに面と向かって言った。
「ありがとう」
アマテラスは優しさに満ちた笑顔でお礼を言う。
「おーい、準備出来たよー」
オーディンにそう言われて、春風はすぐにそばに駆け寄った。彼の目の前には、大きな魔法陣が描かれていた。
「ささ、それじゃあ中央に立って」
オーディンに言われるがままに魔法陣の中央に立つ春風。
「では今から君をエルードに送る。時間は、先に召喚されたクラスメイト達と一緒になるようにしたからね」
「ありがとうございます」
「で、地球消滅までの期限だけど」
「あ、そういえば聞いてませんでした……って、あの期限って、いつまでになりますか?」
恐る恐る尋ねる春風に、オーディンは真剣な表情で答える。
「僕達も最大限頑張るけど、それでもあと1年になる」
「1年。それまでになんとかしないといけませんね」
「不安かい?」
「はい」
即答だった。
「だけど、そんな事、言ってる場合じゃないですよね?」
「……すまない」
「いえ」
そう答えると、春風は深呼吸したあとオーディンに向き直り、力強く言う。
「行ってきます!」
そう言われて、オーディン、アマテラス、ゼウス、そして多くの神達は、
「行ってらっしゃい」
その後、魔法陣が光り出し、春風はその光に溶け合うように消えた。
その様子を見て、神達の1柱が不安そうに尋ねる。
「彼、大丈夫かな?」
オーディンは答える。
「信じよう、あの子を。それに……」
「それに?」
「彼女の弟子だし、ね」
4秒の沈黙。
『バレたらどうしよう』
その瞬間、神達は不安に苛まれた。
そして、物語は、プロローグへと至ります。
次回は登場人物紹介です。