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夏の思い出

作者: 秋本 翔

 ここは、どこだろう。


 買い物袋を持って歩くおばさん、ボールを持ってはしゃぎながら走り去る少年達、疲れた顔をした仕事帰りのおじさん


 どこかで見たことがある。


 けどどこだろう、

 なんだかすごく懐かしい感じがする。


ああ、これは……




――夏の思い出――




「おはよう!…って、早く起きなさい!!もうお昼になっちゃうよ?」

「ん〜、あと10分…」

寝ることを主な仕事としてしまっている幼なじみを起こすのは私の仕事。


 幼なじみを起こしてから、私たちは外に出かけ、特に何もすることなくぶらぶらと散歩をした。


と、ふと見るとすぐそこにいたはずの幼なじみが居なくてきょろきょろと探す。


 幼なじみは木陰に寝そべっていた。


「もう、こんなところで寝て!夏だからって風ひいちゃうよ?」

「大丈夫だよ、僕は風邪ひかないよ」

幼なじみはゆったりとした口調で笑った。

「それより、ほら。」

 幼なじみがゆっくりと指差したのは青と白のコントラストがすごく綺麗な空だった。

遠くの方になんとも夏らしい、入道雲もあった。

「今日は特別空が綺麗なんだ、こういう日は寝転がって空を眺めるに限るね」

そう言いつつも寝てしまいそうな幼なじみに苦笑しながら同じように空を見上げた。

「なんだかこういうの、いいね」

「……そうだね」

「また……一緒にこの空見れるといいね」

「……うん」


 こういう時間が、二人で入れる時間がすごく嬉しくて、幸せだった。

 ずっとずっと、この時間が止まればいいのにとさえ思った。


ある夏の特徴的な暑さが際立っている日。

まさかこんなことになるとは……


「うわ、早く来すぎかな……」

待ち合わせの場所の近くの交差点。ちょうど信号は青だった。

時間を見ると待ち合わせの時間より30分早かった。

余裕があったのでゆっくり横断歩道を渡っていると、


ドシャーーーーーーーーーーン!!!!!



ああ、そうだ。

私はここで死んだんだった。


あれは交通事故だった。

信号無視のトラックに撥ね飛ばされて、私は死んだ。


痛みは、あまりなかった。

それよりも待ち合わせした幼なじみになんて謝ろう、なんて言ったらいいかな、とそんなことばっかり考えてた。


「……―――」

あれ、声が出ないや……


お父さん、お母さん、ごめんね。

親より先に死ぬなんて親不孝者だね、私は。


秋人、ごめんね。

今日言いたいこと、あったんだ。伝えられなくて残念だなぁ……


ああ、あの約束、守れなかったなぁ……

自分から言っておいて自分でやぶるなんてね……


秋人、次もまた、会えるよね……





「またね、彩夏」




うん、またね、秋人。


大好きだったよ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 楽しく読みました。 割と読みやすい文章で、死にっぷりがいいですね。愛情表現が抑え目なのも、甘すぎず個人的にはいいかなとおもいました。
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