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みーつけた。  作者: せら
1/1

その①

「ジュリー、ジュリー?何処ですか?」


さっきから私のことを探し回っているのはこの国の王子。

光輝く白銀の髪に、スカイブルーの瞳。

一般的にはとても美しいとされる風貌。

綺麗な白い肌に、すらりとした筋肉、がっしりしていないけれども綺麗な肉体。


私は、宰相の娘。

いま、外開きのウォークインクローゼットのドレスのなかにいるの。

もちろん、男性がこんなところを開けないという確信をもってひっそりと隠れているのよ。

見つからないように、トルソーが着ているドレスの中にもぐってまで逃げているわ。


名前はジュリエット・サン・ローラン。

ローラン家の娘だ。

家族は、宰相の父、社交界の華といわれる母。それに兄が二人。

兄は親の性格を二等分したのではないかといわれるほどに正反対。

華やかな長男と、優秀な次男。

二人の年はそれほど離れていない。

小さな頃から王子と共に過ごしている、いわば側近の立場を担っていた。

兄たちは私のことを可愛がってくれて自宅でたくさん遊んでくれた。

家族仲はとても良好だと思う。 

ただし、私だけあまり外にだしてもらえないのだ。

それだけが幼い頃からとても不満だった。


私は、幼い頃から家族に言いきかされていたことがある。


「いいかい、我が国の王子には絶対に近づいてはいけないよ」


父は宰相、母が社交界の華。兄二人は王子の側近。

家族全員が王宮で働いているのに私は、絶対に王宮には近寄らせてもらえないのだ。


何故だろう。小さい頃から疑問に思っていた。

「王子様と結婚する」「王子さまをみてみたい」

そんなかわいらしい駄々をこねたこともある。

そういったら他の国の王子ならとこっそり父の仕事につれていってもらえた。

でも、自国の王家にはあったことがないのだ。

宰相の娘なのに。


王宮で舞踏会が開かれるときいたら私だけ病気としてお休み。

王宮近くでのお茶会は何故か私だけ呼ばれず、とても悲しかった。

デビュタントは父の領地で済ませた。

勉強は家庭教師で友達は父母が自宅に呼んだ子供だけ。


皆に嫌われてるのかな…どうしようと悩んだときもあった。

でも今ならわかる。あれは守ってもらっていたのだと。


家族が王宮で働いている?

確かに働いているし優秀な人材として登用されているのもわかる。

わかるんだけど、あれは…あれは人質でもあったのだ。


「ジュリー、可愛いジュリー?出てきてください?」


さっきから声がなりやまない。

まだ隠れていなきゃ。

どうしてこうなったんだろう…


隠れている間、ねえ、私の話を聞いてくれる?


★☆☆☆☆☆


ぽかぽかと暖かい日差しがふりそそぐ屋敷の窓辺。

私は、そんな日に外出もせず自宅にいる。

お母様に今日は自宅にいるように言いつけられているからだ。


「とても申し訳ないんだけど、今日は絶対に外出しちゃ駄目ですよ」

「はい、分かりました。お母様。」

いつものやりとり。また、私だけお留守番。

執事もメイドも、お父様とお母様がこう言った日には絶対に外出させてくれない。

今日はお友達のおうちに遊びに行く予定だったのに…。

お断りの連絡をいれようと手紙を書こうとすると、先方から中止の連絡がはいったとメイドにいわれた。


本、刺繍、ダンスに歌に、詩を書くこと。

楽器もそれなりにできる。

ひとりで楽しめるものはひととおり試した。


仕方ないので今日は家族がくつろぐリビングの深緑の安楽椅子に腰かけ、窓辺で刺繍をすることにした。

私の刺繍の腕は、すごいと思っている。

会ったことはないけれど、お母様が定期的に王妃様に献上しているそうだ。

王妃様の刺繍で流行りが決まる、とまでいわれているらしい。


「あら?困ったわ…?」

王妃様に頼まれたレース編みの糸がなくなってしまった。

王妃様に献上する刺繍をつくっていたのだが白薔薇とアイビーのテーブルクロスなのに肝心の緑の糸がなくなってしまった。

メイドか執事を呼ぶためにベルを鳴らす。

いつもなら、すぐに誰かがくるのに今日は誰も来ない。

少し待ってもう一度鳴らしたが、誰も来ない。


「おかしいわね?」

仕方ないので、部屋を出ようとドアノブに手をかけたら外が騒がしいことに気づいた。

「来客かしら…。」


今日は誰も家にいないため、私が家の主人としてでなくてはいけない。

デビュタントをむかえて成人となった私は、そう考えた。

さいわいにも外出予定があった私は着飾ったドレスを着たままだった。


来訪の手紙がないのはマナー違反だが、せっかく来たお客様を迎え入れないのはもっと駄目なことだと思う。

危ない人なら、執事たちが取り押さえてるはずだし…。


そう思ってまずは誰が来ているのか確認をしに、玄関に向かうことにした。


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