最終話 不満だらけで帰ってきた君へ
「クスト、どういうことなのですか?」
クストは私の方を見ますがその目は怯えているような視線を向けてきます。
「はぁ、本当に何も知らないのですね。でも師団長さんにとっては、それでよかったのでしょうね。よかったですね。」
何が良かったのでしょう。
「ユーフィアさん。貴女が受けた視線は他の国で黒を持つ者達が受ける視線と同じなのですよ。」
え?
「それが、現実です。種族的に黒を持つ者たちはその特徴が現れていますから、人々は受け入れてくれるのでしょう。」
以前、クストはなんと言っていましたか?狼族に黒を持つ者はいないと言っていませんでしたか?
「まぁ、この国の英雄の子孫であり、先の討伐の英雄を否定する者はいないでしょうが。それで、ユーフィアさん質問は終わりですか?それなら返答を「まだあります!」」
少女の言葉を遮り最後の質問をします。
「最後にアリスという人を知っていますか?」
その私の質問にいつも人形の様に表情を変えない少女が微笑みました。
「ああ、貴女もアリスにたどり着きましたか?」
アリスにたどり着くとはどういうことでしょう。やはり、少女は知っていました。
「アリスは未来を視ることができた人です。彼女は私達にその未来を示して、この世界の何処かに残してくれています。」
「私達とは変革者ということですか?」
その言葉に少女は眉を潜めます。違うのでしょうか。
「変革者であるかどうかは知りませんが、彼の世界からこの世界に来た者たちです。」
「何処に行けばいいのですか?」
「そんなもの知りませんよ。」
え!知らないのですか?てっきり、ここまでのことを知っているのなら、アリスという人の言葉がある場所を教えてくれると思っていました。
「大体、個人に向けての言葉なのです。ユーフィアさんに向けて残した言葉が何処にあるかなんて知りませんよ。
とある書物の走り書きには『黒を纏し紅玉の君へ』なんていう書き出しであったり、とあるダンジョンでは『蒼穹の果にある物はあなたにとって意味はありましたか?』というものだったり、その人物がその場に立って初めて意味が分かるのです。」
そうなのですか!それは私は私で探さないといけないということでしょうか。
「ただ、一つ貴女にとって意味があるものかはわかりませんが、お渡ししましょう。」
そう言って、少女は腰に付けている鞄から一つの石版を取り出しました。そこには日本語で
『不満だらけで帰ってきた君へ
あなたは何が不満なの?そんなに恵まれているのに。皆があなたのために、あなたが幸せにいられるために、あなたが過ごしやすいように動いているのに、それに気づかない。いいえ、それに気がつこうとしないなんて、愚かね。
取り敢えず目の前の仕事をやりきりなさい。全てはそれからよ。
あなたには別のところにあなただけのメッセージを残しているから探しなさい。byアリス』
そう、書かれていました。
こう言うことですか。その時に見ないと意味がないアリスの言葉。
私はこの数ヶ月何をしていたのでしょう。クストは約束どおり炎国に連れていってもらったではありませんか。なのに、私は思ったとおりに過ごす事ができなくて不貞腐れていました。皆に心配ばかりかけてしまいました。
「ごめんなさい。クスト。」
「どうした?ユーフィアが謝ることは何もないぞ。」
いいえ、私は心配させてしまった皆に謝らなければなりません。
「シェリーさん。貴女の依頼を受けます。このメイルーンに魔道列車を走らせましょう。」
そして、私は私の仕事をしましょう。
もう、人を不幸にするものは作り出したくありません。誰かに喜んでもらえる仕事を、誰かの為になる仕事を誠意いっぱいしましょう。
マルス帝国 side
「公爵様、例の者たちの行方が判明しました。大陸の南方の方で座礁しているところを発見しました。」
「やっとか、巫女は手に入れたんだろうな。」
そこは薄暗い部屋の一室に、ワインを片手にソファに座りくつろいでいる金髪に白髪が混じった初老の男性と、その男の足元に跪いている金髪の男がいた。
「いいえ。」
跪いている男の言葉に初老の男性は青い目を鋭く男に向ける。
「あ、いえ。巫女を確保はしたそうなのですが、抵抗され、船にいた奴隷と共に姿を消したそうです。」
「消えた?腕輪を付けていなかったのか!」
男を攻め立てるように初老の男性が言い放つ。
「付けてはいたそうですが、外部からの何らかの力によって壊されたようです。」
そう言って男は布に包まれた腕輪を見せる。その腕輪はまるで捻じり切ったかのように歪んで割れていた。
「獣人にでも壊させたか。」
「普通はこの様に獣人でも壊すことはできないはずなのですが。」
「それで、命令したのに戻ってこなかった奴らはどうした。」
「もう、使えませんので実験用として処分しました。」
「ならいい。」
初老の男性は考えるように顎を手でなぞりながら
「しかし、あの国の巫女を確保するのに、ここまで手間取るとはな。あと、もう少しで私の念願が叶うというのに、ままならないものだ。」
初老の男性はワインを一口飲み、ふと思い出したのか男に尋ねる。
「そう言えば、あの者はどうした。使い物になりそうか?」
あの者と言われ男は一瞬考えたが、直ぐに誰のことかわかったようで
「いかんせん言葉がわからないので、苦労をしているようです。」
「何とか使えるようにしろ。あの書物を読むことができるのであろう?」
「はい、唯一あの書物のみ読めるようです。」
「なら、どんな手段を使ってもよいから、アレを作らせろ。100人の魔導師を犠牲にしたんだ。それぐらい働いてもらわないとな。まぁ、魔導師といってもグローリアの奴らだがな。」
「はい、仰せのとおりに致します。サウザール公爵様。」
ここまで読んで下さいまして、ありがとうございました。
『炎国への旅路編』はここまでとさせていただきます。一旦、完結と致します。(本編より長くなってしまった。)
多分、読者様に忘れられた頃に次を始めるかもしれませんが・・・。
『マルス帝国編』までは行きたいです。(希望)




