40話 魔道列車を作る?
炎国に行ったものの、何かと問題がある旅となってしまいました。無事にシーラン王国に戻って来ましたよ。3日掛けて港町エルトに到着し、エルトに転移ポイントを登録して転移して屋敷まで戻って来ましたよ。
でも、思っていたことが全然できませんでした。あのフィッシングボート欲しかったです。帰りにザックさんに聞いても、これは特別製だから売れないと言われてしまいましたし、買い物のあとお茶菓子を買って、花見をする予定でしたし、夜はお祭りのような提灯がきれいに並んでいるとことがあると教えて頂いたので行こうと思っていましたのに!
何もできませんでした。いいえ、桜を見ることはできましたけど、もっと楽しみたかったです。
マルス帝国の邪魔さえなければ・・・はぁ。
そんなモヤモヤとした気分のまま数ヶ月何も手がつかず、モノ作りをしていても気分が乗らず、クストがデートに誘ってくれても、ため息ばかり出ていました。
そんなとき、旅から戻って来たらしい、あの少女がやってきたのです。
「ユーフィアさん。電車を作ってください。電気はないので魔道列車でしょうか。」
少女は来ていきなりそのようなことを言い出したのです。電車ですか?流石に本体は大きすぎて私では作れませんよ。
「メイルーンを一周するように作ってほしいのです。国王の許可はもぎ取って・・・もらって来ましたので、教会も説得するように脅し・・・頼んで来ましたので、作ってください。」
なにやら言葉の端々に強制的な感じを受けます。国王様と教会ですか。国王様の許可はわかるのですが、教会まで許可をとる必要があるのでしょうか?
「なぜ、教会の許可がいるのですか?」
「ユーフィアさん。このメイルーンに列車を走らせるならどこですか?」
どこに走らせるですか。第一層と第二層は斜面になっているので、色々難しいでしょう。そうなると第三層でしょうか。しかし、私は第三層を出歩いたことがあまりないので、よくわかりませんね。
「第三層が無難かと思いますが、それと教会の関係がわかりません。」
「第三層には、東西南北の各区画の中央に教会があるのです。教会の脇を通るとしたら、教会を説得する必要があります。例えば、小さな子どももお年寄りも気軽に教会で祈ることができるとか、なんとか言っておけば教会も頷くでしょう。」
確かに、各区画に教会がありましたね。私は教会にはなるべく近づかないようにしていますが・・・この話が少女の用件なのでしょうが、少女に聞きたいことがあったのです。
「その返事の前に質問をいくつかさせてもらってもいいですか?」
「どうぞ。」
「貴女は何故私に炎国の桜のことを教えたのです?炎国のことを私に教えなければ、私はあの地には立っていませんでした。」
「ユーフィアさん、貴女には必要かと思ったですが、必要ありませんでしたか?前と比べてスッキリした顔をされているので、魔樹の効力が効いたと思っているのですが、違うのですか?」
「魔樹?」
「桜のことです。この世界で桜を植えると魔樹になってしまったそうです。心の闇を払ってくれるものだそうです。悩んでいたことがあったのではないのですか?それを魔樹が払ってくれたと思ったのですが?」
悩んでいたこと・・・確かにありました。私はこのまま物を作り続けてもいいのだろうかと思っていました。
でも、初心を思い出すことができたのです。従兄弟のトウマの言葉で・・・もしかして、あれがそうだったのですか?
「納得されました?」
「ええ、では・・・」
なにやら廊下から凄い勢いで走ってくる音が聞こえます。そして、『バンッ』という音と共に扉が開け放たれ、私と少女の間に誰かが入ってきました。
目の前には見慣れた尻尾がありますので、クストが戻って来たようですが、少女に向かって低く唸っています。
「何をしに来た!それと、陛下を殴ったそうじゃないか!第6師団まで来てもらおうか。」
国王様を殴ったのですか!先程少女は不穏な言葉を言いかけましたけど、殴っていたのですか!
「別にサボっていたので、暇なのだろうと仕事を用意してあげたのです。」
少女は威嚇しているクストを前に淡々と言葉を放ちます。
「殴る必要はないよな。」
「宰相さんに化けて、軍の女の人を口説いていましたけど?殴ってもいいと思います。後で迷惑を被るのは真面目な宰相さんですよ。」
「あー。またか。」
先程まで逆だっていた尻尾が垂れ下がっています。またか。と言うことは宰相様に化ける(?)のがいつものことなのでしょうか?女性を口説くのがいつものことでしょうか?
「わかったら、そこに座ってください。師団長さん。ユーフィアさん続きをどうぞ。」
クストは大人しく私の横に座りました。えっと、師団には戻らなくていいのでしょうか?
「あ、えーと。では、なぜ炎国が鬼の国だと教えてくれなかったのですか?普通の人をあの様に見てくる国だなんて。」
そう、あの私を否定してくる視線は耐えられませんでした。
「教える?炎国が鬼の国だなんて常識ではないですか。何故、島国に黒をもつ種族が集まっていると思っているのです。
カウサ神教国が黒を持つ者たちを排除したからに他なりません。そんな人達がいる島です。そのようなことは当たり前じゃないですか。別に視線だけじゃないですか。石を投げられたわけでも無く、魔術で攻撃されたわけでも無く、ただの視線だけではないですか。」
カウサ神教国?それは初めて魔人が生み出されたという国の名前ですよね。しかしただ、それだけって、そんな軽いものではないです。
「ねぇ、師団長さん?」
少女はクストに問いかけます。クストはそう話す少女に憐れみのような視線を向けます。どうしてなのでしょう。
「俺はそこまで酷くはなかったぞ。流石に魔術で攻撃までは・・・。」
「ああ、流石に公爵家でありこの国の英雄の末裔に、そこまでのことはしませんよね。」
どういうことのなでしょう。
 




