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6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった  作者: 白雲八鈴
炎国への旅路編

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37話 これも私の罪

 ガーティーさんは私の手に掴まり、海から上がってきました。そして、思っていたとおり、速度が落ちていきます。


「おい。追いつかれるぞ!」


 ガーティーさんがそう言いますが、それでいいのです。


「追いつかれたら飛びますので、私に掴まってください。」


「え?いやそれは」


「生きたいですか、死にたいですか?」


「その前にあんたがやったことなんだから、何とかしろよ。」


「残念ながら予想外の結果でしたので、無理です。失敗することもあります。」


「そんな、失敗するかわからない物をこんな時に使うな!」


 ガーティーさんが叫ぶと同時に背後から衝撃がきました。仕方がありません。ガーティーさんの腕を持ったまま強引に浮遊の腕輪を使用します。水上バイクは亜空間収納のペンダントにしまい、高く浮遊します。

 眼下に見える海は見渡す限り、氷の海となってしまいました。


 これ、元に戻りますかね。核である鉱石の魔力を使い切れば元通りの海に戻るはずですが・・・ガーティーさん、腕が外れるって?だから言ったではないですか。私に掴まってくださいと。


 いつも使用しているスクーターを取り出し凍った海の上を走行します。スクーター自体が浮遊していますので凍ることはありません。

 ガーティーさんは私の後ろに座ってもらっています。狭いですが仕方がないですよね。


 ガーティーさんの指示に従いながら、スクーターを走る方向を調整していっています。私は真っ直ぐ進んで行っているつもりでも微妙にずれていっているそうです。まぁ、目印が何もない、一面真っ白なところでは方向も何もわからないですけどね。


 しかし、それなりの距離を凍った海の上を走行しているというのに全くもって氷の切れ目が存在しません。一体どこまで広がってしまったのでしょう。そんなことを考えていますとガーティーさんが後ろから前方を指しながら言ってきました。


「この方向に船がある。多分、形的に炎国に出入りしている船の一つだ。」


 私には船の姿かたちなど、全くもって見えないのですが、ガーティーさんには見えているようです。


「もしかして、凍りついて動けなくなっているのですか?」


「いや、凍った海はそこで終わっている。船が進めなくて困っているんじゃないのか?」


 やっと終わりが見えてきたのですか?とても長かったです。


 私の目にやっと船の形が見えてきました。スコープ性能のゴーグルを取出し、前方の船を見ます。

 帆船ではなさそうです。船首には・・・後ろからマリアに羽交い締めされているクストが見えます。私を迎えに来てくれたのでしょうか。


「ガーティーさん。あの船は私のお迎えみたいです。」


「よかったじゃねーか。これで俺もお役御免・・・あ゛?なんで炎国の船に嵐牙の青狼が乗っているんだ?」


 ん?何か聞き慣れない言葉が聞こえました。何でしょう?うまく聞き取れませんでした。しかし、青狼と言っていましたので、クストのことでしょうか?


「青狼というのは船首にいる人のことですか?」


「ああ、ガレーネに羽交い締めされている英雄様だ。」


 すごいですね。私はゴーグルを使わなければ見えませんのに、ガーティーさんは普通に見えているのですね。


「私の夫です。」


「は?何だって?」


「ですから、船首で羽交い締めされてるのは私の夫です。」


「まじかー。いや、このねえさんを制御しようと思えばそれぐらいじゃないと無理だよな。一緒にいれば命がいくつあっても足りねぇよな。」


 後ろでブツブツ言っているので、なんと言っているのかよく聞きこえません。その時船から


「ユーフィア!」


 と、クストの声が聞こえてきました。クストの声を聞くとやっと安心できました。クストのところに戻って来ることができたと


 船は氷に触れないように少し離れたところに停泊していました。


「旦那様、ここで待つように言われていましたよね!」


「駄犬!待てです。待て!」


 船員の方たちが小舟を降ろそうしている横でクストが乗り込もうとしているのをマリアとセーラに止められています。

 小舟にはザックさんが乗り込んでおり、小舟を降ろす指示を出しています。


「だから、あいつは誰だ!俺のユーフィアの後ろに乗っているヤツだ!ぶん殴るぐらい、いいよな!」


 クストはこちらを指しながら叫んでいますが、ガーティーさんには助けられましたので、殴るのはだめです。


「じゃ、俺はここでいい。」


「え?陸地まで一緒に行けばよろしいのではないのでしょうか?」


「いいや。ここでお別れだ。」


 そう言いながら青い海の中に飛び込んで行きました。そして、海面に顔を出して私に向かって叫んできました。


「あんたには感謝しているからここまで付き合った。これで、貸し借りなしだ!だが、あんなに死にそうな目にあったのは今までで初めてだ!二度とあんたには会いたくねー!・・・・ありがとう。」


 そう言って、ガーティーさんは海の中に潜って行きました。確かに命の危機はありましたから、それは言い訳はしません。そうですね。ガーティーさんが里に戻れば二度と会うことはありません。幸せに暮らしてください。そして、ごめんなさい。貸し借りなしだと言われましたが、これも私の罪なのです。



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