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6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった  作者: 白雲八鈴
炎国への旅路編

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26話 香ばしい匂いはお腹が空きます

 襲われていると聞こえた方を見ますと、窓越しに外を見ているクストがいました。そして、隣接している部屋の扉が勢いよく開け放たれ


「ウネウネの襲来です!」


 寝癖がつき、はねた髪のまま部屋に入って来たセーラが報告に来てくれましたが、そのウネウネに名前はないのでしょうか。


「大丈夫なのでしょうか?」


「今のところは対処出来ているようだ。船に接触される前に触手を切り落としている。まぁ。そのための船員だろ?ここの船員は全員戦闘ができるように鍛えられているようだしな。」


 クストの横に行って窓の外を見てみますが、まだ日が登る前の空が白み始めた時間帯なので、薄暗くよくわかりません。クストには見えているのですね。


 また、下から突き上げるような振動が来ました。立っている事が出来ず、よろめいてしまいましたが、クストに抱きあげられ


「ユーフィア。立っていると危ないから座っていろ。セーラ、マリアはどうした。」


「マリアさんは外の様子を見に行くと言って部屋を出て行きました。直ぐに戻って来るとは思い「奥様!」す。」


 セーラの話している途中でマリアが戻ってきました。


「奥様。人手が足りないようなので私も戦闘に参加してまいります。」


「マリア。その前にどういう状況か説明してからいけ。」


「はい。ただいま。クラーケンにこの船は襲われています。ただ、産卵時期のクラーケンは凶暴化しておりまして、ただいま3匹に襲われております。」


 3匹!


「それは大丈夫なのですか?」


「このマリアがいるから大丈夫です。奥様はここにいてくださいませ。」


 そう言ってマリアが部屋を出ていってしまいました。


「クスト、大丈夫でしょうか。」


 私はクストを仰ぎみます。クラーケンを実際に見たことはありませんが、3匹同時は危険ではないのでしょうか。


「クラーケンはAクラスの魔物だ。この狭い船の上では少々キツイかもしれんな。」


「私、手伝ってきます!」


 クストの腕から降りようとしますが、がっしり抱かれていて動けません。


「奥様。海に落ちたら死んでしまいます。そんな危険なところへ奥様を行かすわけにはいきません。」


 セーラが両手を広げ部屋の外に私を出さないように構えています。セーラ、海に落ちたぐらいでは死にませんよ。それに海を渡ると聞いていましたのでそれなりの備えはしてあります。


「セーラ。大丈夫ですよ。いつも使っているスクーターを海でも使えるようにしたものを用意していますし、特別な魔道具も作ってあります。」


 そうです。こういうこともあろうかと、水上バイクを用意しているのです。


「なので、行きますのでクスト降ろしてもらえませんか?」


 クストに頼みますが、降ろしてもらえません。しかし、そのまま部屋の外に出ていきました。えっと?


「俺も行くから。」


 そうですか。でも、水上バイクは私が乗るために作ったので一人用ですよ。


 甲板に出ますと水平線から太陽が顔を出し、私の目にも状況がわかるようになっていました。水しぶきが掛かった甲板に幾つもの吸盤が付いた長い触腕が船体にからみ付いており、それを船員たちが斬ってはいるのですが、斬ったところから再生していってます。クラーケンの腕は再生するものなのですか?

 特殊個体でたまにそういうクラーケンがいると、一匹なら対処できるが、三匹は流石にキツイと。

 船内の入り口を守っている船員さんが肩で息をしながら教えてくれました。


 クストがやっと降ろしてくれましたから、亜空間収納から魔道馬車を作ったときに遊び心で作った反重力場を生み出す腕輪を取り出しつけます。そう、これがあれば空を飛べるのです。だから、海に落ちても水面に出れば問題ないのです。


 火炎放射器を取り出し、まずは絡みついている腕を焼切ることにします。このままだと船ごと海に引きずり込まれそうですからね。


「では、行ってきますので、危険ですから私にあまり近づかないでくださいね。」


 そう言って私は腕輪に魔力を流し込み、重力から解放されました。


「うぉ!」


 クストが驚いていますが、スクーターも馬車も浮くのですから、私が浮いたぐらいで驚かなでほしいです。


「奥様。素晴らしいです。奥様は御使い様だったのですね。」


 セーラが何か言っていますが、私はミツカイなんて怪しい者ではありませんよ。


 火炎放射器を使って浮遊しながら船体に絡み付いている6本の触腕を焼ききっていきます。辺りには香ばしいイカ焼きの匂いが・・・朝ごはん前にこの匂いはダメですよね。思わずお腹がグーと鳴ってしまいました。

 あながちセーラのお兄さんの言葉は間違っていなかったのかもしれません。焼き切ったら食べたくなってしまいました。


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