表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった  作者: 白雲八鈴
炎国への旅路編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/80

2話 原因は問題児?

 ルジオーネさんはため息を吐き、どこか遠くを見ながら話してくださいました。


「5,6年前でしたか、問題児が関わったことで、第5師団の詰め所が崩壊して、第5師団長の復帰が不可能な状態になり、統括副師団長が責任を取って辞めてしまったことで、王都の守りが弱くなってしまったのですよ。

 確かに問題児を抑えられる力を持つ人はいます。統括師団長閣下や近衛騎士団長、第1師団長です。この方々は第一層から出ることはありませんので、必然的に団長か私になるのです。」


 え?これは流石におかしくないでしょうか?10歳・・・3年経ちましたので、13歳でしょうか。その少女が関わったことで、師団の詰め所が崩壊して、師団長は再起不能に?


「シクシク。」


 ?。そして少女に対して師団長クラスが対応しなければならないなんて、おかしいです。


「それはあの時の少女のことで間違いないのですか?」


「ええ。そうです。」


「キューン。」


「クスト。落ち込んでいないで仕事に行ってください。」


「キューン。ユーフィアが冷たい。」


 クストは未だに地面に横たわり、いじけています。仕方がないですね。


「お仕事を頑張ってくれたら次のお休みの日はデートをしましょう。」


 私のその言葉を聞いたクストはシャキっと立ち上がり


「わかった。行ってくる!次はどこに魔物討伐に行くか楽しみにしているからな!」


 と言いながら、クストは尻尾を振ってお仕事に行ってくれました。ルジオーネさんは『相変わらず、デートが魔物討伐というのはおかしいと思います。』と言ってクストの後を追って行きます。


 ルジオーネさんにおかしいと言われましたが、デートに魔物討伐はとても効率的で、いいのです。新しい武器の試し撃ちと素材の確保ができますし、クストも喜んで走り回っていますし、何も問題ないと思います。


 私はマリアに振り向き


「一つお願いがあるのですが、先程ルジオーネさんが言っていた少女の事を調べてもらえますか?そして、家を訪ねたいのです。」


「奥様。あの少女のことは3年前に調べがついております。それから、公爵夫人である奥様が訪ねなくても、こちらに呼びつければいいのです。」


 マリアはそう言いますが、何となくそれはダメなような気がします。24時間の時計が見慣れたと言った彼女は多分私と同じ転生者。


「まず、その少女のことを教えて欲しいわ。セーラ、お茶を私の工房に持ってきてください。」


「「はい。畏まりました。」」



 場所を工房に移して、お茶をいただきます。先程はクストが居たためにゆっくりと飲めなかったのです。

 お茶を入れてくれたセーラは部屋の入り口のところに控え、マリアは私の横に立ち話をしてくれいます。


「あの3年前に来た少女ですが、今現在、西地区第二層に住んでおり、シェリー・カークスと言う名です。最近、薬師として名が上がってきている薬師カークスの娘です。ただ、ここメイルーンに引っ越す前のことはつかめませんでした。軍部は何か知っているようでしたが、何か情報統制されているようです。旦那様は知っているでしょうが・・・。」


 3年前のあの感じだと教えてはくれなさそうですね。


「マリア、ありがとうございます。それでは、いつ訪ねていいか手紙を書きますので持っていってくれますか?」


「ですから、奥様。日付を指定してこの日に来るように言えばいいのです。」


「クストがふらりと帰って来て、そのときにその少女が居れば色々面倒なことになりませんか?」


 マリアは困り顔になり


「なります。」


「ですので、こちらから訪ねるほうがいいのです。」



 そして、私は訪問の伺いの手紙を書きました。文字は日本語にしました。3年前のあの日、日本語で話しかけてきた彼女であれば、この手紙を読むことができるはずです。

 その手紙をマリアに託し、私は私の仕事をすることにします。


 私の仕事ですか?今日はナヴァル領の作年の収穫高の資料に目を通すことです。あとは、嘆願書などが来ていましたからそれに対する返答でしょうか。


 クストはこのようなことは苦手なようですから、ナヴァル領に関しては私が全て取り仕切っています。


 そんなことなら、別に工房でなくてもいいのではと思われるかもしれませんが、執務室で書類のチェックをしているとクストの邪魔が入るのです。

 そして、私の工房はここ数年で大幅に改造をして、私の許可がない人が入ると、電気が流れるようにしました。勿論、クストには許可を出していません。10回程、電気ビリビリ攻撃を受けて、入れない事を学習してくれたようで、最近は入る前に扉のところで許可を伺うように成長しました。やればできるのです。


 書類のチェックが終わった頃にマリアがノックをして入って来ました。


「手紙を持って行った者が、そのまま返答の手紙を貰って来ました。」


 そう言って、マリアが一通の封筒を手渡してくれます。その封筒はなめらかな手触りで薄いピンクの色に桜の花があしらわれた物でした。こ、これはこの世界の物ではない?

 中を開けると同じ様な桜の花柄の紙に横線が印字された便箋でした。そこには一文だけ日本語で書かれており


『明日、10時なら来ていただいて構いません。』と。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ