19話 ここは?
気がつけば石に頬をくっつけてました。さむっ。教会でお茶を飲んだ後の記憶がありません。
なにやら石造りの部屋にいるようです。出口は……正面に金属製の扉が一枚、上の方に光を取り入れる窓がありますが、あれは無理ですね。光の角度的にはそんなに時間は経っていないようです。取り敢えず、ナヴァル公爵家に転移を……出来ない?魔術阻害を受けている!
こっそりと仕込んでいたイヤリング型の亜空間収納を確認すると、こちらは使えると言うことは、魔術阻害のみ。
もしかして、サウザール公爵様の手の者に監禁されたかと焦ってしまったけど、そうではないらしい。自分で作った魔道具阻害で自分の首を絞めるのは避けられたみたい。
ということは、誰の仕業でしょうか?クストさんは大丈夫でしょうか。
クストside
マリアがいきなり控え室にやって来た。どうしのだろう。
「旦那様がお呼びと伺いましたが、用件をさっさと言いやがってくださいませ。ユーフィア様をなるべくお一人にしたくないのですよ」
マリアはいったい何を言っている?
「俺は呼んでないが?」
「は?先程エルフの祭司が……まさか」
マリアは慌てて引き返し部屋を出ていった。ユーフィアに何かあったのか?
マリアの後について部屋を出る。
しかし、遠い。マリアの後について行くが、敷地の端から端までぐらいの距離があるのではないのか。だが、マリアの進む方向に番がいることは感じる。マリアがひとつの部屋の前でノックする。その瞬間、番の気配が消えた。慌てて、マリアを押し退け部屋に入ると、そこには床に落ちて壊れたティーカップしかなかった。
どこだ。どこに連れて行かれた。
少し経つと番の存在を感じた。あっちの方向は……シャーレン精霊王国。
「団長。それは無理ですよ」
教会にやって来たルジオーネに否定された。しかし!
「シャーレン精霊王国に転移は無理です。基本的に余所者は入ることが出来ません。この国でシャーレン精霊王国に転移できる者はいません」
ヴウゥゥゥ
「私に威嚇しても無駄です。はぁ。第4師団の転移できる者にあたってはみますが、一番近くに転移できても、シャーレン精霊王国の隣国であるギラン共和国ぐらいです。あとの国は転移の使用に許可が必要です。もしくは……少し別ルートで当たってみます」
そう言ってルジオーネが出ていった。俺はここで待つしかないのだろうか。しかし、シャーレン精霊王国までの距離がありすぎる。
『クストさん、クストさん』
ユーフィアの声がする一体どこから
『クストさん、通信機ですよ』
通信機!そう言えば師団の詰所に行くのを嫌がった俺にユーフィアが作ってくれた通信機。8半刻毎に連絡して怒られたヤツ。確かこっちのポケットにあった。
「ユーフィア無事なのか!」
『無事ですけど、魔術阻害を受けていまして、転移で戻れそうにないです』
「何!やはり今からシャーレン精霊王国に向かう」
『え?私はシャーレン精霊王国にいるのですか?』
ユーフィア side
「え?私はシャーレン精霊王国にいるのですか?」
驚きです。予想外のところにいました。
『ユーフィア今から行くから待ってろ』
クストさんがそんなことを言っていますがそもそもの疑問が湧き出てきます。
「そこにシャーレン精霊王国まで転移できる人はいるのですか?」
『え。いや。今はいない』
やっぱりそうですよね。マリアのさんが魔導師が少ないと言っていましたよね。
「クストさん、大丈夫なのでメイルーンで待っていてくれませんか?」
『俺は役立たずなのか?』
「現実的問題として結婚式の招待客をそのままにしておけませんので、そちらの対応をお願いします。それに、魔術は使えなくても、魔道具が使えれば私は問題ないです」
ん?こちらに来ている複数の足音が聞こえます。
「クストさんすみません。お客様がいらしたので切ります」
『ユーフィアちょっt……ブチ』
数人の足音が扉の前で止まりました。
ガチャリ。と鍵が外れる音が聞こえ、ギイィィィと重そうな扉の音と共に扉が開いていきます。扉の外には、3人のエルフがおりました。
中央に深い緑の髪に青い目の人物、右側には女性と思われる、海のように深い青色の髪に薄い青い目の人物、左側には紫の髪と目を持つ男性と思われる人物が立っていた。恐らく中央の中性的な人物はあの有名なエルフ族の族長でしょう。
思っていた以上の人物が登場しました。




