14話 デートとは
作業に打ち込んで3日、クストさんがとうとう拗ねてしまいました。
「ユーフィアは俺の事なんてどうでもいいのか?」
耳が垂れ下がったクストさんが突然そんなことを言い出しました。
「クストさんが、どうでもいいとはどういうことですか?」
「ルジオーネやマリアの頼まれたものばかり作って、俺なんて、俺なんて……」
「ああ、クストさんも作って欲しいものがあったのですか!それならそうと言ってくれればいいのに」
早く言ってくれれば先に作りましたのに……。
「そうじゃなくて」
「違うのですか?」
「ユーフィアとデートしたい」
私の手を取り満面の笑顔でクストさんが言います。
「デートですか?」
「そう、デート。ユーフィアはどこに行きたい?行きたいところに連れて行ってあげる」
「本当ですか!実は行きたいとことがあったのです」
ああ、うれしい。実はとても行きたかったところがあったのです。
三日後、クストさんは約束通り連れてきてくれました。
「団長、デートって聞いたのですが?」
ルジオーネさんも一緒にいますが、師団の方はいいのでしょうか。そうですか。今は問題が起こってないから大丈夫なのですか。
「デートだ」
「では、デートの場所がイアール山脈の理由を聞いてもいいですか?」
「ユーフィアが行きたいと言ったからだ」
はい。クストさん約束通り、あの魔物が跋扈するイアール山脈に連れて来てくれました。現在イアール山脈の中腹です。移動手段はもちろん私の転移で来ました。
「では、もう一度確認しますが、何が目的のデートですか?」
「ドラゴン狩りだ」
「それはデートではなく魔物討伐と言うのではないのですか?」
「ユーフィアと出掛けるからデートだ」
どうしてもドラゴンの目が欲しかったのです。前に倒したドラゴンの目が潰れてしまって、素材にならなかったのです。
「団長、付いて来て欲しいと言われたので付いて来ましたが、ドラゴンを想定した準備なんてしていませんよ」
「ルジオーネさん。それに関しては問題ありません。私がドラゴンをヤりますから」
「そもそも、ユーフィアさん。なぜ、デートの場所をイアール山脈にしたのですか」
「クストさんが行きたいところに連れて行ってあげると言ってくださいましたので、お願いしました」
ルジオーネさんがいきなり頭を抱えだし
「恋愛脳と職人を逢わせるとこんなことになるのですか」
何かいけなかったのですかね。私は行きたいところを言っただけですのに。
そんなルジオーネさんを横目にバッグからスクーター擬きを取りだし乗りました。クストさんが不思議そうにやって来て尋ねてきました。
「これは、なんだ?」
「これは、私の移動手段です。獣人の方のように、このような急斜面を駆けることはできませんから」
そう言いながら、使い慣れた散弾銃を取り出す。
「それ、最初に向けられた飛び道具だよな」
「ええ。しかし、あの距離から避けられるとは思いませんでした」
「あれは流石に焦った。いきなり、マルスの魔武器を向けられたなら、逃げるしかないからな」
現実に戻ってきたルジオーネさんもこちらにやって来まして
「取り敢えず、頂上のあの辺りに一頭いるようなので日が暮れる前に終えてしまいましょう」
獣人の方はそんなことも分かるのですか。すごいですね。ルジオーネさんが先頭で次に私、その後ろにクストさんの順で進むことになりました。
「ルジオーネさん、進む早さはお任せします。この山脈の魔物から逃げ切れる速度はでますので、お願いします」
「わかしました」
その言葉を聞き、スクーターに魔力を流す。1メル浮上したスクーターに『ウォ!』と驚きの声を漏らすクストさん。『本当に何でもありですね』と感想を言うルジオーネさん。何かおかしなことがあったのかなと思いながら、スコープ性能のゴーグルを頭に乗せました。
中腹から山頂に向かって行っていますが、流石、副師団長の肩書きを持っているルジオーネさんです。向かって来る魔物はほぼ一撃で仕留め、その剣捌きは美しいと表現しても良いでしょう。逆に、クストさんは大振りの剣で、力で叩き切るという感じでしょうか。従兄弟だけあって、コンビネーションがバッチリ合っています。
私は長中距離担当なので、二人が手が届かない離れた魔物を撃つという感じです。
さて、今度のドラゴンはどんな感じでしょうか。




