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灰色景色  作者: 焼ミートスパ
第一章 灰色景色
7/107

7 主人公、運転手のやさしさに触れる

雪子は帰宅するために停車場にいくとすでに運転手の村田が待っていた


5分で着くと言っていたがそれよりも早かったが、雪子は精神的に追い詰められていたので気が付かなかった


村田がすぐ着いたことの意味を雪子が知るのはだいぶ先の話である





<ガチャ>


いつも通り村田が後部座席のドアを空けた


もちろん頭がぶつかりそうな所に手を当てている





「ありがとうございます」


いつも通り少し頭を下げてお礼を言ってから雪子は車に乗り込んだ


習慣とは恐ろしいものでどんなに落ち込んでいても感謝の言葉は出るものである





車が発車してから運転手の村田は何も言わなかった


もちろんバックミラーで後部座席に座っている雪子を見ることもしなかった





雪子は何も問われないことにホッとした


何せ授業をさぼって帰宅するのだ


何が起ったのか?、と問い詰められると思っていた


でもなかったので肩の荷が下りた





また見られないことにも安堵した


バックミラー越しとはいえ、チラッとでも見られると結構気が付くことに雪子は初めて気が付いた





<シャーシャー>


高速道路をスゴイスピードで走る音だけが耳に響いた





・・・毎日思うけれど、高速(道路)を使って通学ってどうなのかしら


雪子はふと思った




冷泉院の家は裕福だ


代々会社を経営しているからだ


でも代々質実剛健を旨とするため、セレブにもかかわらず実際には結構慎ましい生活をしている





高速道路代がもったいない


毎回そう思う雪子だった


・・・要は貧乏性なのである






窓の外を見ると所々にある家と、木々の緑が見えた


降り注ぐ太陽の光


平和な風景があった





私なんでこんなに不幸なんだろう


雪子はそう思い落ち込んだ








車が高速道路を進んでいると思ったらいきなり進路を変えてサービスエリアに入っていったので雪子は驚いた


そのまま車は駐車スペースに入る





え?


え?


雪子は混乱した


今まで13年間、学校と家の間の往復だけだったからである





「トイレ休憩をさせてください」


運転手が言ってきた


生理現象おトイレならな仕方ありませんわ


雪子は思った





待っている時間もなんなのでついでに雪子もトイレに行く事にした


寒い学校の廊下で長い時間立ちつくしていたので完全にトイレが近くなっていた












「は~」


トイレから出てくると雪子はすっきりとしていた


女子トイレから出てくると隣の男子トイレの前で運転手の村田が待っていたのでちょっと恥ずかしかった


思春期の女子的にはトイレから出てくるところを見られるだけで精神的に死ぬのである





村田の後をついていくと車に戻らずにサービスエリアの売店に着いた


「大判焼き2個とコーヒーとココアを一つづつ」


村田は勝手に注文していた






展開についてゆけない雪子はただ立っているだけだった


・・・ただの10時の休憩時間なのである







「さあ座って」


雪子は言われるままに座った





「飲んで」


進められたココアを一口飲む


紙コップに入ったココアはお世辞にも美味しいとは言えなかったが、なぜだか沁みた


甘みが身体中に広がり疲れがとれたように感じた




「食べて」


村田に言われるままに紙に包まれた大判焼きを食べた


薄い皮に包まれてたっぷりの餡子が入っているので口の中が餡子だらけになった





あれ?


雪子は懐かしい味がしたので驚いた





「昔、ここの大判焼きをおみやげとして買っていたよね」


雪子の不審がっている姿を見て村田が説明をした




ああそうか


雪子は謎が解けた思いだった












昔、村田は雪子のいい遊び相手だった






父親は社長として仕事が忙しく、朝から晩まで飛びまわっていた


母親は華道をはじめとするお稽古事と会社関係の冠婚葬祭で同じく飛び回っていた


両親からは愛情をたっぷり貰っていて、長期の休みには旅行や家族団欒をしていたが、日頃は遊んで貰うことは少なかった


そこで雪子の遊び相手になったのが運転手の村田である





村田は朝、両親の送迎を終えると冷泉院家に戻り、車を整備する


20台をくだらない冷泉院家の車を管理し、洗車するのだ


だから一日中駐車場と屋敷を行ったりきたりしていた





そうすると当然、幼い雪子の目に留まる


一人で歩けるようになり、広い屋敷と庭を好きに歩いて良いと両親から許可貰った雪子の目の間に村田がいたのだ


好奇心旺盛な子供の前にそんな存在がいればどうなるか?


後ろをついて回るようになった


そしていつしか格好の遊び相手になった






整備が終わった車の試運転もかねてのドライブが幼いことの雪子の一番の楽しみだった


自宅近くの恐竜のオブジェがある公園


芝生が延々と続くだけの公園


富士山の形をした大きな滑り台がある公園


フィールドアスレチックか!と叫びたくなるような遊具が数多くある公園





時には遊具で遊び


時にはもっていったボールやフリスビーを投げ合い


時にはお菓子を持って行きレジャーシートを敷いた上でおやつを食べる


幼い雪子にとっては夢のような日々だった






そんな村田がおみやげとして時々買ってきてくれたのが大判焼きだった


本来は村田のおやつだったのだが雪子がジッと見ていたので半分こするようになった


そして大きくなると丸々1個になった




大きくなり勉強や稽古事が忙しくなると村田とは遊ばなくなった


でも今日ひさしぶりに大判焼きを食べて昔のことを思い出した




雪子は自分が周りの人間に愛されていたことに気が付いた


そして大きくなった今も村田が気を使っておやつを奢ってくれたことにも気が付いた




そしてその優しさに安堵した

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