56 雪子、強敵に逢う
話の関係上、冒頭は前回の話と少し重なります
いきなり強敵が出てきたら話が判らなくなりますからね
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「こちらは鷹取さんよ」
家元が雪子に紹介した
二度目のせいか紹介は簡単であった
まあ前回の紹介で雪子の茶道の師匠は鷹取翁への義理を果たしたのだ
今回からは高値で恩を売ってやりますわ
家元が事前に雪子に話していた
前回の失敗を反省してか家元からの紹介が終わるとすぐに
「すまなかった」
と鷹取翁がさっそく謝罪してきた
人間やればできるものである
まあ翁からすると最大限の譲歩どころか限界突破しての謝罪である
なにせ自分の1/3程度の年齢の人間に頭を下げるのである
謝罪する本人としてはさぞ屈辱であったであろう
頭を下げたんだからさっさと許せ
それが本心であった
もっとも雪子からすると
口先だけで
「済まなかった」
と言うのが謝罪ですか!
である
頭くらい義理で下げなさい!
と内心で怒りまくっていた
まあ頭を下げたからと言って許すわけではないし、誠意ある謝罪だとは認めないのではあるが・・・
話を戻す
加害者の謝罪なぞ所詮この程度なのである
加害者にとっては自分が主人公
間違ったのかもしれない
でも認めて反省したのでこれで終わり
その上謝ったんだから許すのが当然
これで許さない方が悪人
これが偽らざる本音であった
・・・被害者の心情やら心の傷など一切考慮しないゲスである
実に性根が腐っていると言えよう
もっとも本人にとってはこれが正義である
当然のことながら鷹取翁は謝罪の言葉を言った後、雪子からの返事を待っていた
もちろん
「もういいですよ」
とか
「頭を上げてください」
とかの言葉を期待してだった
しかし雪子は黙ったままだった
昔の雪子ならば年上の人間からの謝罪で思わず
「いいえ」
と返事をしていたことだろう
それで今まで苦労を強いられていたことが御破算になったことだろう
だがイジメという辛い経験をした上、巌から教えを受けた雪子は成長して強くなっていた
だから黙ったままだった
話をしたいならすればよい
もしも雪子に利がある提案でもするならば話くらいはしてもよい
完全に強者の態度であった
まあ実際に話をしたいのは相手であって雪子でないのだ
話を全然しなくても雪子は全然困らないのであった
もっともそれは鷹取翁には判らないようだった
屈辱で内心怒りまくっていた
こちらが謝罪したのだからさっさと許せ
である
相手が雪子でなく身内なら当然のことながら怒鳴り散らしていたことであろう
いや実際に雪子に向かって怒鳴り散らそうとしていた
「おま「弁護士の掛井です」」
と鷹取翁が怒鳴ろうした瞬間、隣に控えていた弁護士が会話に加わってきた
さすがに餅は餅屋である
翁のバカにより会話が壊れる寸前でサッと助け舟を出してきた
ソレを聞いてい雪子と家元の顔が歪んだ
やっかいな存在が現れたからである
こいつできる!(意訳)
マンガのような展開になっていた
弁護士というのは正義の味方というイメージがある
しかし実際は依頼人の利益を守るために法を盾に弱者を痛ぶる詐欺師である
過去の判例を盾に相手に法的弱者を口先三寸で翻弄するのが仕事であると言える
実際には自分に都合の悪い判例を隠し、都合のよい判例だけを相手に見せて勝利を勝ち取っているのである
これはその被害にあった人間にしか判らないアルアルである
まあ新聞とかテレビで人を殺した人間に対して
精神的に不安定だったので無罪だ!
と大声で主張しているのを見れば理性ある人間ならばその本質を正く理解できることだろう
もっともイジメというつらい経験をし、巌から薫陶を受けた雪子は弁護士が出てきても動じなかった
むしろやっかいなものが出てきたと自分の茶道の師匠である家元に向かって目で合図した
もしも負けることがあるようなら責任をとってもらいますわよ、と
ええ、もちろん負けないように助けますわよ
家元は目だけで返事をしていた
結構いい師弟関係だと言える
いや似た者師弟であろうか?
こうして強敵との長い戦いが始まった




