52 雪子、ストーカーされる
「ここいいかね」
雪子が定例の3時のおやつをホテルのラウンジで食べていると一人の紳士が話しかけてきた
「お断りします」
雪子はキッパリ断った
なにせ知らない人間なのだ
世間では良く言われている
知らない人に話しかけられても付いていってはいけません
大人になるほど守られない約束である
以前の雪子ならば
「どうぞ」
などと言っていただろう
今の雪子が見れば
人が良すぎますわ
と頭を抱えることだろう
リスク管理がまったくされていないのだから当然である
昨今
人を見たら泥棒と思え
ならず
人を見たら悪意があると思え
が常識である
まあ無事に成長した雪子が断るのも当然であった
たとえ身なりがよく紳士的だからといって善人とは限らないのが現代である
もちろんその日の夜に父親に報告していた
イジメの一件があってから雪子は夕食時に両親と話すようになっていた
その日にあったこと
これからのこと
その他イロイロである
ザッソウという言葉がある
いや雪子は父の巌から教わった
雑談、相談のことである
以前は必要な事だけを話すというのが有効であると言われていた
しかしいつかそれでは足りないとされるようになった
どうでもよいことまで話すことが必要であるとされるようになっていた
必要と思わない事が実は必要だった
あるいは視点の違いで必要な事が異なる
であろうか
それは会社での話であるとされていたが実は家族でも同じなのである
雪子は巌から教わった
今日知らない人から話しかけられた
そう雪子から言われた巌は早速動いた
ホテルの従業員に情報を流して対応を丸投げした
大抵のことは専門家に丸投げするのが正解である
へたに素人が口出しするのは悪手である
そんな訳でホテルの従業員に丸投げした行為は正しいと言える
またそのことを雪子に事前に伝えておく行為も正しい
なにせ何かあった時に頼る先が決まっているのである
リスク管理としては最上であった
これがザッソウの効果である
目の前でザッソウの効果を見ることで雪子は使うことの有効性を身につけることができた
こうして好循環が生まれ、物事が円滑に進むのである
一方、イジメっ子や学院とはいうとそんなことをまったくしていないため今だにまともな対応をできていないことに気が付いていない
破滅した後にようやく自らの愚かさに気がつくことだろう
・・・誠に残念な存在だといえる
まあそんなわけで万全の態勢の冷泉院の罠にひっかかる謎の紳士
いや巌は手を廻してホテルの従業員から身元を知らされている
一流ホテルの従業員というのは一度訪れた人間を絶対に忘れないのである
足を踏み入れた時点で身元は丸裸なのであった
まあ巌は雪子にはあえて教えていない
本人が聞いてこないからである
まあ雪子も聞けば教えてくれる
いや知らなくても調査してでも身元を確認することは知っている
でも相手が自分の事を言わないのだ
せっかくミスしてくれているというのだ
一体いつまで自己紹介できないおばかなのかしらと相手のミスに付け入る気満々であった
謎の紳士が翌日も現れ、次の日も現れ、三度現れたことでストーカー扱いされ世間の評判を落とすことになるのはもう少し後の話であった




