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灰色景色  作者: 焼ミートスパ
第三章 記録景色
44/107

44 雪子、逃げる

「御馳走様でした」


雪子はおやつを食べ終わると手を合わせて小さい声で言った




食事前後の感謝の言葉は小さい頃から親に躾けられた習慣である


そのためたとえ家の外でも欠かすことはなかった





人として当然の行為ではあるだがやはり同世代の中学生や高校生には『いい子』と映るようである


そのせいもあり雪子は虐められることになっていたのだが雪子は気が付いていなかった





人としての道を貫こうとすれば虐められる


それが現在の日本であった


実に御愁傷様といえるだろう





雪子が食べ終わるのを確認した非常識2人組が騒ぎ出した


「こんどはこちらの番よ!」




もちろんそんな約束はしていない





以前の雪子ならば


「食べ終わるまで待って下さい」


などと自ら墓穴を掘りに行っていたことだろう




いや大抵の虐められっ子はそうである


自らの正当な主張をしない


それどころか相手の身勝手な主張に無理矢理付き合う


そういう意味では自業自得である





・・・一体親は何を考えて子育てしているのか、と言うレベルである





おてんとうさまに恥じない行いをしなさい


人の悪口を言わない


人のモノを盗まない


人を傷つけない


それは正しいだろう





しかしバカの一つ憶えのように教え込むのは間違いである


言っている台詞は正しい


だが行動こそだては間違っている


そういうことである




まあ所詮親という物はヤって子供ができるだけでなれるものである


人格者だとかそういうものは一切必要が無い


だから安易に世の中の常識を唱えるだけで子育てをしていると勘ちがいして悦に入る


だから苛めっ子も虐められっ子もなくならないのである




以前の雪子もそうであった


だが今は違う


足を引っ張られないように言動には細心の注意を払っていた


だから食べた後付き合うなんてことは一カケラも言っていなかった




これもすべて父親からの教えのおかげである


・・・そこまで雪子を教育できる父親がなぜ今まで放置していたのかが疑問である





「支払いをお願いします」


雪子は騒がしい二人を無視して席から立ち上がった


そしてラウンジの出口で支払いをした




「待ちなさいよっ!」


自分達から逃げようとする雪子に腹を立てた二人組の片割れが出て行こうとする雪子の腕を掴んだ




有罪ギルティ




「きゃ~っ!」


雪子は大声で叫んだ




ラウンジだけではなくその外側のロビーにまで叫び声が響き渡った






・・・仮にも一流ホテルを名乗っているのに社長令嬢が大声を挙げていいのだろうか


もちろんいいのである





見知らぬ人間に襲われたのだ


人として当然の反応であった





またホテルの看板に泥を塗られたのだ


弁護士を通して請求される賠償金はとんでもないことになるだろう





また誰だか(雪子は)知らないが、雪子の腕を掴んだ令嬢もタダでは済まないだろう


警備員に両側から拘束され、拉致された宇宙人状態である


この後、問答無用で警察に渡されることだろう


法律的には肩を叩いただけで傷害罪なのである


タダではすまないのは確実である




まあ家の権力でもみ消されることもあるだろう


またそれはそれで良いのである


なにせ冷泉院には警察を恨んでいる人間を多く抱えている警備会社がある


雪子が頼まなくても勝手に探し出すことだろう





なにせ冷泉院のホテルのポリシーは


どのような人間にも屈しない安全性


である





たとえ海外からのお客様であろうと


欠片も物質的にも精神的にも決して嫌な思いはさせない


のを売りにしている




たとえ王侯貴族政治家であろうとも問題が起これば警察に引き渡す


でもそうでないならばお客様はどんなことをしてでも守り抜く


ホテルが繁盛している所以である




まあだから雪子が舞台として選んだとも言えるのである





この後雪子の手帳にはこう書かれることだろう


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ホテルのラウンジから出ようとしたら見ず知らずの人間に突然襲われた

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