41 雪子、楽しい時間をだいなしにされる
「なにするのよっ!」
ホテルのラウンジに怒鳴り声が響いた
冷泉院雪子はため息をついた
言いがかりだとしか思えなかったからである
時間を少し戻す
冷泉院雪子がホテルのラウンジで日課となった3時のおやつを食べていた
今日は疲れたためガト―ショコラを頼んでいた
当然飲み物はコーヒーである
フォークで切り分け一口食べる
甘味が口の中に広がった
雪子は今日一日の疲れた溶けてなくなるような感じがして幸せだった
あまりの幸福感に近寄ってくる人影に気が付かなかった
目の前にきてようやく認識したほどであった
「ここよろしいかしら?」
謎の人影が声をかけてきた
雪子のいるテーブルは4人掛けである
それを一人で使っていたのだ
当然のことながら他の席は空いていた
その席に座っていいかと問いかけながら件の人はもう座りかけていた
「ダメです」
雪子が返事をした時にはすでに座っていた
せっかくの至福の時間が闖入者のせいで台無しになっていた
昔の雪子ならば内心の悔しさを抑えて対応していただろう
しかし今の雪子は違っていた
手を挙げた
すかさず警備員が駆け寄ってきた
冷泉院が経営しているホテルである
当然の対応である
なにせ社長の娘である雪子に不審な人物が近付いた時点で捕獲の用意はできていたのである
雪子が手を挙げることを待っていたと言っても良いだろう
「離しなさいよっ!」
騒いでいる女子高生を見て初めて雪子は誰だか気が付いた
自分を虐めていた同級生だった、と
もっともだからといって警備員を止める気はなかった
ラウンジにいるお客様に向かって騒ぎを起こした人間として警察に引き渡すはずである
たぶん偽計業務妨害という結末になるだろう
せいぜい人生を穢すと良いですわ
雪子は心の中で愚かな娘を嗤った




