39 勝田(弟)の断罪
「お黙りなさい!」
老婦人が声をあげた
歳をとっているだけあってその威厳は凄かった
言われた勝田正だけでなく、声が届いた人間すべての動作が止まった
「公の場では騒がない、そんなことも教えられないとは嘆かわしい」
暗に勝田家の教育不足を非難していた
「最近の若い人は礼儀をなんだと思っているのかしら」
言っていることは普通である
だがこの場合は相手を尊重せずにイジメなんてことをしていた正のことを暗に揶揄していた
周りの人間はホテルのラウンジでお茶をするだけあって上流階級に属するものばかりである
当然のことながら今回の一連の騒ぎについては詳しかった
とうぜん勝田正についても良く知っていた
それゆえ老夫人の副音声での叱責もしっかり聞こえていた
もっとも残念なことに勝田正はそれに気が付くことはなかった
まあイジメをするような人間である
人間としてイロイロ足りないのは当然である
いやだからイジメをするのである
ラウンジやロビーでこの一件を見ている観客達は思った
勝田の家はダメだ、と
「う、煩いっ!
お前には関係がない!
オレが用があるのは冷泉院だ!」
歳上に向かってこの態度
いや誰に物を言っているのかすら判らなかった
いくら男で女の稽古事に興味がないからといって酷過ぎた
交流がなくても一通りの人物の顔と名前を憶えておくのは上流階級の嗜みである
いや知らなくても勝田の無礼を正そうとしている年上に向かって言う言葉ではない
老夫人は会話すること自体をあきらめた
老夫人は勝田正に判らないように近寄っていた警備員に目配せをした
とっととつまみだしなさい
視線だけでそう命じた
警備員に拘束される勝田正は
「離せっ!」
と足掻くもののプロに敵うものではない
ズルズルと引き摺られていった
「れいぜいいいん~~~~っ、このままではタダでは済まさないぞ~~~っ」
ホテルにはバカの捨て台詞が響いていた




