28 雪子、吹雪に謝罪される
「守れなくてごめんなさい」
雪子の姉弟子の吹雪が頭を下げてきた
蒼月による着物強奪未遂事件の時、雪子が着付けの手伝いをしていたのが吹雪である
あの時は雪子をかばうことができなかった
なにせ蒼月は芸名に『月』が入る家元直系なのだ
ヘタに機嫌を損ねると後で厄介なことになりかねない
派閥の原理からためらうのは当然であった
もっとも庇って貰えなかった雪子としては溜まったものではない
姉弟子に尽くしてきたにもかかわらず庇って貰えなかったのだ
一体なんのために尽くしてきたのかと言いたくもなるというものだ
「ええ本当に」
雪子がそう言うのも当然である
そして吹雪が固まるのも当然であった
月影流の人間は誰も同じリアクションをしますわね
雪子はそう思った
先日も蒼月が同じように固まっていたからである
もっとも言われた方としてはどんな反応をすれば良いのか判らないというものだ
まあここで
「おっしゃる通りです」
などと言える人間ならば今回のような失態はしないのだから当然である
話を元に戻す
見捨てておきながら今まで謝罪がなかったため雪子は許すつもりはなかった
もっともすぐに謝罪しても許したかどうかは微妙である
ただ謝れば許されるという摩訶不思議な理屈が通る世の中が間違っているのだ
さあどうやって報復をしましょうか
雪子は扇子を取り出して口元を覆った
なにせ生かすも殺すも雪子しだいなのだ
思わず笑みがこぼれそうになる口元を扇子で隠した




