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灰色景色  作者: 焼ミートスパ
第一章 灰色景色
16/107

16 ホテル給仕の観察

「申し訳ありませんでした」


そう言ってラウンジの特等席で頭を下げているのが共和学院長であるのを見て給仕は驚いた


また、その謝罪の相手が社長とその御令嬢であったため、思わず二度見していた




あの学院長、世間的に死んだな


給仕はそう思っていた





雪子お嬢様の後ろ盾が非常識なほど凄いというのに何やっているのだろう


給仕は学院長の行動が理解できなかった





雪子は冷泉院じぶんのいえが経営しているホテルを良く使っていた


夏休みなど時間の余裕のある時には1週間に10回くるといったスゴイ頻度である


ラウンジは待ち合わせのためにお茶をしたり、軽食をとったり、おやつを食べたりと自宅の応接間と化していた





そうなるとラウンジの給仕は雪子の交友関係をほぼ正確に把握できることになる


雪子が習っている華道、舞踊、茶道、書道等々の師匠や姉弟子、妹弟子


怱々たるメンバーである


おまけに師匠繋がりで家元に挨拶できる人脈もある


敵に回したらいけない雪子じんぶつであった





大体、師匠や家元のここ一番の時には雪子の名前で生絹の着物を送るのだ


当然絵付けは人間国宝


金でも買えない逸品である






なぜ只の給仕がそんなことを知っているかというとホテルのラウンジで受け渡しをしていたからである





「こちらが<人間国宝の名前>さんの御着物です」


「ありがとう」


「お使い頂ければ幸いです」


そんな光景が幾度となく繰り広げられていた





・・・雪子は本当に自分の家の居間のように使っていた








なにげにゴマスリ?に冷泉院家のコネと人脈を使いまくっているが当主曰く、


『この時に使わなければ何時使うのか』


だった




・・・父親もラウンジを自宅の居間のように使っているのであった







令和の現在、着物なんてものは需要が激減している


養蚕家、製糸、機織り、絵付け、縫方


各専門家は壊滅的な打撃を受けていた


それを保護する冷泉院としては機会があるならば使わないと廃業多数で伝統が失われるという現実がある


一度失われた技術は復活出来ない


冷泉院が支援するのは当然の選択である


ノブレスオブリージは冷泉院の権利で義務だ





・・・聞きたくもないが会話が聞こえてくるため給仕は何気に冷泉院に詳しくなっていた






それに人間歳をとると終わりが見えてくる


身体だって動かなくなるし、目も霞む


いくら地位が高くても肉体の老化はどうしようもないのである





地位がある人間は、晩年、今までの活動の成果で名誉を得る機会が出てくる事が多い


そんな折、お祝いとして雪子の名で最上級の着物が送られてくる


それを来て晴れの舞台に出るとどうなるか?


尊敬を一身に集める、わけである






そんなふうに晩節を飾ってくれたのなら贈られた人間は感謝しかないのである


残り少ない人生


最後を華やかにしてくれたとなれば後ろ盾になるのは当然である




・・・給仕はなにげにセレブの世界にも詳しくなっていた









そんな後ろ盾が凄いことになっている雪子に喧嘩を売ったらしい学院長


そして謝罪しているということは見事に負けたのだろう


給仕はそう推察した





もっとも推察したのは給仕だけではないようで、ラウンジにいた客は全員スマホを取り出してポチポチしていた






ラウンジにいるような年配の人間は情報機器スマホに疎い?


そんな訳はない


セレブは頭も体も動かないとやっていけない人種である


現代の情報戦の戦力スマホを使うのは必要最低限のスキルであった






そんなわけで学院長の謝罪を


動画に撮る


写真を撮る


ラインで拡散する


等々情報戦が繰り広げられていた






こんなところでなにやっているですかね?


給仕はそう思った


いや学院長の無防備さに呆れた

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