1,勇者、魔王と友達になる
初めての作品投稿です。なろう作品読んでたら自分も書きたくなったので書いてみました。腐女子トークを書きたくて書いたのに2話までは書けそうに無いです(泣)一応ほのぼの系、女勇者と女魔王の友情?みたいな感じでお送りしたいと思います。
勇者召喚がなされてからはや5年。1年前に人類の敵である魔王が勇者によって討ち取られ、世界は平和になった…
というのが勇者以外の人類全員の認識だった。というのも、実際は魔王は未だに討ち取られていなかったのだ。なぜ勇者以外の人類全員が魔王が討ち取られたと思っているのかというと、一年前、勇者が凱旋してきた際に魔王の証である青紫色のねじれた角を1本持って帰ってきていたのだ。それを魔王討伐の証としたため、勇者召喚をした国、ユーアリア王国が全世界に魔王が討伐され、世界の平和が保たれたと大々的に公布したのだ。しかし肝心の魔王は人知れず生き延びていた。ではなぜ勇者は魔王を見逃したのか、なぜ角だけを持って王国へと凱旋したのか、ことの発端は一年前、勇者が魔王城へ来たところまで遡る…。
魔王城へやってきた勇者ブルースカイこと矢野青空の目からは生気を感じられなかった。別にこれまでの戦闘で視力を失った訳では無い、ただブルースカイの“ある欲求”が満たされないまま3年も剣の修行に明け暮れていたからだ。大学の授業のない休日に、自室で好きな薄い本を読んでニヤニヤしてダラダラと過ごしていたら急に異世界へと転移させられ、ただ己の力が一般人の数百倍あるからという理由で今まで持ったこともない重い剣を持たされ、王宮に用意された部屋と訓練場を往復する毎日を過ごすこと3年。だらけきった身体は引き締まり、スレンダーにはなったものの、出すべきところまでもスレンダーになってしまった。3年にも及ぶ修練によってブルースカイは剣の達人にはなったが、修行を始めて1年を過ぎたあたりからブルースカイはただ剣をふる機械へと変わった。ただ無表情に敵を屠り、人との会話も極力減ってしまい、ほとんど殺人人形と化してしまっていた。そして王国から出る際に言われた「魔王を討ち、この世界に平和をもたらせてくれ」という国王の一言の命令でコマンド入力されたかのようにブルースカイは1人で出発したのだった。
勇者には不満があった。それは自分の身の回りを世話してくれる侍女や訓練に付き合ってくれる兵など、自分の周りには女しかいなかったのだ。1度国王に聞いてみたら、「魔王を討つのに男に現を抜かさないためだ」と正論を言われ、渋々了承してしまったのだ。それからというものの、時折様子を見に来る白髪に伸ばし放題の髭を蓄えた国王以外の男性を見ることが無くなり、勇者は欲求不満を募らせていった。ただ若い男を見れれば元の世界で鍛えた想像力で欲求は簡単に満たせるのに…別に男侍らせて遊びたい訳じゃないのに…そう思いながらもブルースカイはまた機械のように剣を振った。
時は魔王城へと戻る。「さっさと終わらせて元の世界に帰ろう…」そう考えてブルースカイは魔王直属の4人の部下、いわゆる四天王の1人目の部屋へと入っていった………。
結論から言うとブルースカイは四天王相手に1人につき1分もかけずに倒し、魔王のいる部屋の前まで5分もかけずにやって来ていた。むしろもっと早く四天王を倒すことも出来たのだが、それぞれの四天王のいる部屋に入る度に四天王たちが何か長ったらしい口上を述べており、それを聞くふりをして彼らの姿を脳に焼き付け、話し終わった彼らがこちらに近づいたことを闘いの合図だと思い、しかし4年振りに見た若い男―たとえ魔族であっても―を殺すのも躊躇ったため全員手刀で眠らせたのだ。そして部屋の前に立つブルースカイは、魔王城へ来る前とは違い、その目は生気で満ち溢れていた。そうして若干鼻息の荒いブルースカイは勢いよく部屋の扉を開け放った…。
部屋の奥の玉座に座るのはブルースカイの期待を粉々に砕いてくれた魔王の姿であった。魔王城に来る前、王宮であらかじめブルースカイは魔王について調べていたのだ。調べた結果、過去の魔王の殆どは見目麗しい、人間にしてアラサーぐらいのナイスガイだったそうだ。今回の魔王はどんなナイスガイなのか期待で胸を膨らませていたのが、扉を開け放って5秒もしないうちにその期待は口からため息と愚痴と共に出ていった。
「はぁぁぁぁあ?なんで女なの?しかも見た感じだと中学生ぐらいじゃん、JCじゃん。魔王の娘さんはお呼びでないんですよ、お父さん呼んできてくれる?お父さん。はぁー、四天王同士でカップリング考えんのも楽しかったけど魔王様次第で四天王と合わせればありとあらゆるジャンルのカップリングも夢じゃなかったのに…はぁー無いわー、魔王がJCとか無いわー。ガン萎えですわ、四天王のカップリング考えるだけでもお腹いっぱいになりそうだったから自制して全員手刀で眠らせて最速でここまで来たのにこの仕打ちは無いわー。とりま私の乙女心を踏みにじった罪をその首で償ってもらいましょうかー。」
「いや、イヤイヤイヤイヤイヤ。私まだ何もしてないよね!?玉座に座ってただけだよね!?なのになんで私があなたの乙女心を踏みにじったことになってんのッ!?てゆーか私JCじゃないし!これでも1365歳だし!って問題そこじゃねぇ!!え!?四天王手刀で倒しちゃう?一応こんな辺境まで来てくれた勇者さんを労う意味であの4人配置したんだけど…あー倒しちゃったかー、まあ普通は魔王からの刺客と考えるもんなー。一応1人目のシャルスには説明するようにお願いしといたんだけど、勇者さん、何も聞いてない?」
ここで聖剣を剥き出しにして魔王の1歩手前まで歩を進めていたブルースカイは足を止めた。
「ん?1人目に説明…?あぁ、あのホスト風のチャラ男さんか。確かにイケメンだし女慣れしてそうだもんね。いやー3年ぶりに若い男見ちゃったからもう妄想が捗るわ捗るわでちょっと自分の世界に入っちゃってたかも。あのシャルスさんだっけ?確かに彼なんか勇者相手にやけに恭しく何か口上並べてたなぁとは思ったけど説明要員だったのかぁ、なるほどねー。ってなんの説明するつもりだったの?」
魔王が玉座に座りながら器用にコケた。
「いったいうちのシャルスでどんな妄想してたのか問い詰めたいけどそれは一旦置いておくわ。そうね、その説明の内容を言う前に勇者さん、あなたにとって私、つまり魔王とはどんな存在?」
「人類の敵でしょ?人間嫌いだから滅ぼすんでしょ?そう国王様に言われてあなたを倒しに来たんだけど。」
魔王がため息を吐いた。
「やっぱりね、先代の魔王までならその認識で間違いは無いわ。ただね、私は違う。私は別に人間は嫌いじゃないし、興味もない。魔大陸は広大で資源も豊富だし、はっきりいって資源の乏しい人間のいる大陸を襲撃してもあまりメリットが無いのよね。私が魔王になってから4年が経つけど私は1度も配下たちに人間を滅ぼせなんて命令してないし、不毛な争いはしたくないから人間を滅ぼそうと考えてるヤツらは全員粛清として消したわ。そしてこれからも人間とは干渉しないつもりよ。私の話を聞いたあとでもまだ私と戦いたい?」
ブルースカイは顔を青くした。確かに召喚されてから王国は平和そのものであった。確かに何度か疑いはしたものの、王国から魔大陸までどれほど離れているのかも分からない状況であったため、考えても仕方ないと割り切っていたのだ。今しがた聞いたことを踏まえて今までやってきたことを考えてみれば、王国は平和のためという大義名分を掲げ、不干渉を貫いていた魔大陸へと勇者を派遣させ、一方的に攻め入っていたことになる。人間の国同士で考えてみれば大国が小国を属国として吸収すべく戦争を起こすための行為とさほど変わらない。勇者は王国にとって一騎当千の兵士と大して変わらないことになる。そして魔大陸側の不干渉によって保たれていた平和を踏みにじっていたことになる。それを理解したブルースカイはその場で崩れ落ちた。
「じゃあ私は今までなんのために…」
「ここでさっきの質問の答えよ。私はそんな理不尽な環境で過ごしてきた勇者さんを労りたかったの。だって可哀想でしょう、元々平和な世界から無理やり連れてこられたのに戦争の駒として使われて、それもたった1人で女の子にこんな危ない所まで行くように命じられて。さすがに同情するわ。だから私は決めたの。勇者さんがここまでたどり着いてくれたら全力で労わってあげようってね。その説明をシャルスにさせようと思ってたんだけど…」
「すいませんでしたああああああ!!!!全然聞いてませんでしたああああああ!!!!!久しぶりにあんなイケメン見たから感激しちゃってそれどころじゃなくていやマジでごちそうさまです、じゃなくて!すみませんでしたああああああ!!!!!」
ブルースカイはその場で土下座した。それはもう額を床に擦り付けるというか、頭を下げる勢いが強すぎて床に穴が開いていた。その穴に頭を突っ込む、というかめり込ませて土下座をした。
「あ、謝らなくていいわ!あなたは被害者なんだもの。(食事は出してないはずなんだけどなんでごちそうさま?まあ、いいか)でも確かにあなたが魔大陸に来てからうちの魔物の被害は少なからず受けたのは事実よ。でもそれは自我も持てない下位の魔物しか被害は無いから1ヶ月もすれば元の数に戻るだろうし気にしなくていいわ。自我を持つ高位の魔物と魔族にはあらかじめあなたと遭遇しないようにと通告してたし。実質被害は無いわ。」
「でも!私は戦争の切欠になるようなこともしたしッ!」
「それは私が怒り狂って王国へ乗り出したら発生する責任の話よ。さっき言ったでしょ?私はこれからも不干渉を貫くって。だからあなたに責任は発生しないわ。」
「それでも労ってくれるはずだった四天王4人とも攻撃してしまったわ!」
「眠らせただけでしょ?死んでなければ大丈夫よ。仮に死んでも高位魔族であるあいつらは100年もすれば復活するもの。四天王は全員、あらかじめ勇者に攻撃されて死んでもいいって言っていたわ、私の考える平和を実現させるための礎になれるならってね。」
「それでも私が納得出来ない!何か私に出来る償いは無いの!?」
そうブルースカイが言うと一瞬魔王は考える格好をしたがすぐにその小さな身体をモジモジさせながら躊躇いがちに言った。
「そ、それじゃあ……わ、私と…お友達になってくれるかしらッ!!??」
今まで重い話をしていたのに魔王が急に見た目相応のようなことを言い出して少し混乱したものの、ブルースカイは3年振りに笑った。
「フフッ、アハハハハハ!そんなことで良ければ私は勇者辞めて、あなたのお友達になるわ。フフッ、魔王にもカワイイとこあるのね。」
それを聞いたこと魔王は少し焦りながら言った。
「ちょっと待って!今はまだ勇者辞めないで!最後にやってもらいたいことがあるんだから!!」
「最後なんて言わないでいいよ、お友達の頼みはいくらでも聞くものでしょ?私にできることなら何でも言って。」
「じゃあその聖剣貸して!」
一瞬キョトンとしたブルースカイだが、少し心配したものの、おずおずとした様子で聖剣を差し出した。
「?なんで心配そうな顔してんn…て、うわっ!あー聖剣だからか、いきなり魔力持ってかれたからビックリしちゃった。大丈夫よ、そういうことね。聖剣の、魔から魔力を削り取る性質で魔物や魔族には絶大な威力を発揮するんだもんね。これなら…」
と言いながら魔王は部屋の壁に埋め込まれた姿見まで移動して、聖剣を振りかぶった。それに気づいたブルースカイは止めようとしたが遅かった。既に魔王の左手には鮮やかな青紫色をした角が1本収まっていた。
「ッ痛ぅ、…はい、聖剣ありがとう、返すね。」
「いや!聖剣はどうでもいいけど、いや良くないか…いやそれよりも!何してんのッ!?」
ブルースカイが動揺するのも無理はない。これが勇者が魔王への攻撃として角を折るのなら誰でも理解出来よう。ただ、魔王が自身の角を折るのは人間で言うと自分で利き腕を切り落とすのと同義だ。魔族には共通して額、もしくは耳の上あたりに1対の角が生えているが、それは一般的に魔力を司る器官であると言われている。角が欠損すると魔族は体内に魔力を貯め込んだり魔法の制御をすることが難しくなるのだ。心配して若干パニックになってるブルースカイに対して魔王は、
「心配しすぎよ、これでも魔王よ。一応今も体内魔力の循環に問題は無いもの。それにね、人間は寿命が短いから知らないかもしれないけど、高位魔族は100年~200年周期で角は生え変わるのよ。」
ブルースカイはその事実を聞いて驚きはしたものの、それはすぐに安堵に変わった。
「良かったぁ〜、でもなんで角を折るなんて真似したの?生え変わるとしても痛いって言ってたし魔力の調整に多少ズレたりするでしょ?その代価にあなたは何を望んでいるの?」
「平和と私の平穏な暮らしを守るためよ。」
先代の魔王が言ったなら一笑に付されて終わっただろう。しかし目の前の魔王は既にこの短い時間の間にその言葉に現実味を帯させていた。
「分かったわ。それじゃあ私は勇者として何をすればいいのかしら?」
「私を、殺してほしいの。」
読んで下さりありがとうございます!今回と次回は真面目成分多めですが3話あたりからはグッダグダにしていきたいと思います!