作戦会議!?
周りには兵士モブの死体だらけ…どうも!戦場です!
いやぁー、このいつ死ぬか分からないドキドキ感たまんねーぜ!特に火薬の匂いやモブの叫び声…すばらしい!
……自分で考えていて恥ずかしい…。これじゃどこぞのサイコヤローじゃん…。
そんなこ下らないことよりも、もっと大事なことがある!
それは戦況が膠着状態になっているのだ!
…うん?別に押されていないだけいいじゃん、だと…ふざけるな!今日は2時から、好きなアニメの2期の初回放送があるのだ!
これは何としてでもはやく決着をつけなければいけない…だが具体的な案が見つからない。
うーん、何かないものだろうか?
ずっと戦場のど真ん中で考えていたせいなのか、めちゃくちゃ砲弾がこっちに向かってとんでくる。
「俺の邪魔をするな!」
圧倒的なまでの理不尽な怒りは、もちろん敵に向けられた。相手からしたら、ちょー迷惑なのだが、そんな事は関係ないとばかりに暴れまわった。
「ふぅー、スッキリした〜…てっ、こんなことしてる場合やないやんけ!」
…ルピが居た場所の敵モブは一体残らず倒されていたらしい。
「おっ、丁度よさそうなところがある」
目線の先には、屋根に我が国の紋章が描いてあるテントがあった。多分前線の指揮官たちの作戦会議をする場所なのだろう、周りに結界とかが張ってあるし。
テントの中は外見とは違い、かなり広いようだ。どこぞの、杖を使って守護霊とかを呼び出すファンタジー映画みたいだ。
真ん中に目を向けると、ドラゴンの特徴を身体に表している小柄な子供と、2メートルを優に越す巨体をもった人がいた。すると子供の方が、こちらに気づいたらしい。「あっ」、という声を上げた、それでようやく気がついたのか、目を丸くしてこちらを見ている。
「やあ、こんな所で会うとは奇遇だね、 HAHAHAHAHA!それじゃあ、お仕事頑張って!」
「ハハハハハッ、じゃねえよ!!それとにげんな!なんでお前がここに居るんだよ!?」
「俺の持ち場の敵、全員倒したから?」 「その後に敵が来るかもしれないだろ! ていうか、答えになってねーよ!」
「ふっ、俺のような天才的な思考が分からないのも無理ないさ」
「うぜぇー!なんだコイツ!はっ倒してもいいよな?いいよね?」
「良くないですよぉ。それにお二人共、ここはゲームと言っても戦場ですよ。」
はぁー、とため息をつくような音が響く。
「もう少し、軍団長としての振る舞いを身につけて下さい!」
「身につけろと言われてもなぁー、どうせモブしか見てないやん?」
「そういう所が駄目なんですよ!それにモブ以外にも他のプレイヤー達が見てることもありますから!いざという時に対応できませんよ!」
「見られたら斬るから大丈夫だ!なぁダウル!」
「当たり前だ!ガハハハハハハ、俺の場合は殴るんだけどな!」
紹介が遅れたが、このガハハと笑っている男はダウルだ。俺たちの国の第六軍団の軍団長でもあり、巨人族だからか、力はプレイヤーの中でもトップランクに強い。
今は3メートルぐらいだが、力を使うと50メートルぐらいになる。その大きさ故か、心も割と大雑把だ。…関係ないか。
一番まともな事を言っていたのは第十軍団の
軍団長のデイズだ。見た目は龍の特徴のある子供なのだが、本人曰く、この姿は力を抑えている小さくなっているだけらしい。
…本当の姿は見たことがないから大きさとかは分からないが、多分、力を解放したダウルよりも大きい気がする。
そしてこの俺、桜田 俊ことルピは、第十二軍団団長で、国の幹部としては一番の古株だ。
種族は人間で、刀を少し使える程度。
見た目は女だが、これは理由があってこの姿をしている。
好きな物は、朝のゆったりとした時間に飲む牛乳。嫌いなものは…自分は何もしなくて、他人をこき使うクソ野郎。
最近ハマっているのは、日曜の深夜からやっている、「魔法少女は裏切らない!」というアニメだ。
このアニメの良いところは、主人公達がとにかく良い奴らなのだ。…そう、とにかく良い奴らなのだ。
「で、なんで…お前がここに居るんだ?」
「だから、周りの敵を倒したから!」
「……いや…違うな。お前は…この戦いを速く終わらせるために、ここに来たんだろぉ?」
「…何のことだ」
「それはお前が一番知っているはずだぜぇ、なんせ今日は日曜日だからなぁ!」
「まっ…まさか!あの今季史上一番…視聴率が低いとされている、魔法少女は裏切らない、の為に…ここまで来たんですか!?」
「うるせぇぇー!…あれがクソアニメだと俺も知ってる!だが!あれの悪口はゆるさねぇー!」
「…現在進行形でクソアニメとか言ってましたけどね……」
ゴホン、とダウルがわざとらしく咳を混む。机に置いてある地図とかとんでるけどいいのかなぁ。
「…で、何か…速くこの戦いを終わらせる方法は、あるのか?」
「あっ…それ、僕も気になってました」
ぐわぁぁぁぁ、二人からの視線が痛い!…まさか考えてないとは、思ってないんだろうなぁ。
しかし!ここで何か言わなければ、間違いなく呆れられる!今は別にいいのだが、終わった後の話のネタにされるのが辛い!
……うーん、なにかいい方法は無いだろうか?速攻で戦いを終わらせるかぁー。
こういう時に大河ドラマとか観ておけばなぁー。何かと為になるらしいからなぁ。
…大河ドラマ…戦国時代…速攻……!
「…あっ、敵の城に奇襲して、王様の首を、取るっていうのは?」
「いいんじゃないですか!それ!」
デイズの受けは結構よかったらしい。今考えたんやで!とは口が裂けても言えないなぁ…だがダウルの方は何か考えてるようだ。
…それにしてもデカい男が考え事をしているところを見ると、少し滑稽にみえるんだよなぁ。…本人には言わないでおこう。
「…俺たちはその案でもいいんだが」
「…ならええやん」
「だがなぁ…石頭のクロがこれを許すとは思えないんだよなぁ」
…クロとは俺たちの国の王様であり、また、軍の総大将だ。もちろん、種族は人間で…頭がとてもかたい。…石頭とかそういうのではなく、融通があまり効かないのだ。そんな王様を俺たちは親しみを込めて、石頭とか、ジジィとかと、呼んだりしている。
「バレなきゃいいんじゃないですか?」
その時…空気が固まった……一番の悪はこいつだな、と思った瞬間、周りが氷に包まれた。比喩とかではなく、まるで魔法で攻撃されたような。
「カッカッカッ…妾に気づくのが遅かったようだな」
「やりましたな…まさか、十二人の幹部のうち、3人も仕留めれるとは…。」
そこに現れたのは、戦場には似つかわしくない、黒いドレスを着た少女と、執事の服を着た男だった。
「しかし…呆気ないのう…もう少し楽しませてくれると思っていたのに」
「ふっふっふ…それも、これも貴方様の魔法のお陰です…ふふっ」
バリッバリバリ、と氷が崩れていく。中でなにが起きているのか、二人に緊張の汗が流れる。『まさか!フェルティブ様の氷を破ったのか!ふふっ、一筋縄では行きませんねぇ…』
崩れた氷の中から出てきたのは、仕留めたと思っていた、幹部達だった。
「ぐわぁぁぁ、体中いてぇぇぇ、ほんっとに何だよ!折角、話が纏まろうとしていたのに!」
「…攻撃された事については、怒らないんですね……」
「ガハハハハハハッ、それにしても…すげぇー氷魔法だったな!ありゃ、アーシェロンと十分に、渡り合えるぐらいじゃねえのか!」
驚いた…思わずフェルティブはそう呟いた。
何故なら、彼らは彼女の自慢の一撃を受けて、致命傷どころか、少し擦りむいている程度なのだ。
『流石に…勝ち上がって来たことだけはある…クククッ、面白くなって来た!』
――こうして幹部同士の戦いが始まった。序盤は、奇襲が成功したフェルティブ側が有利だったが、数の差だろうか…一人分が居ないのはやはり…辛く、結局はルピ側に軍配が上がった。
こうして国別決定戦は激化していった。今思えば、ここで、やられていれば…なんて思ったりしてしまう。