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冒険者ギルドの受付担当は異世界転移者  作者: 猫乃 縁子
第0.5章-前日譚-異世界就職
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0.5-2異世界お宅訪問

 鼻をずびずびとすすりながらエルフの家へ「お邪魔します」と云いながらドアをくぐる、その先はリビングのような広間で、1人の上品そうな狐耳の老婆が安楽椅子に座っていた。

 老婆はころころとした笑顔で「あらあらまぁまぁ、これは珍しい、お迎えかしら。イルミン、こちらの可愛らしいお嬢さんは?」とエルフの青年に問う。

 「どうやら迷子らしい。君、外套をそっちに掛けて、適当に座っていてくれ、お腹は空い…」「ぐぅ~」「…ているようだね。ちょっと待っていなさい」私がお腹を押さえて恥ずかしさに赤くなっていると、エルフは短弓を壁に掛け矢筒を下ろし、台所であろう死角へとサッと歩いて行った。

 「お腹がなるのは健康な証拠だから恥ずかしがらなくてもいいのよ、どうぞこっちへいらっしゃいな」


 外套を掛け、狐耳老婆の対面の椅子に腰掛けて、鞄を足元に置く。そういえば半日ぶりに腰を下ろしたな、とため息一つ。

 老婆は楽しげな表情で「お嬢さん大変だったわね、私はフィル。あっちは夫のイルミン」と名乗る。

「あ、ご夫婦だったんですね。えっと、あの、すいません、初めまして、お邪魔してます、私はアメリといいます。困っていたので、そのえっと大変助かります、ありがとうございます」と色々焦って頭を下げながら返答する。

 「あらあら、アメリちゃんいいのよ焦らなくて。此処はちょっと珍しい土地だから、あんまりお客さんが来ることもなくてね、ゆっくりしていってくださいな」

 「はい、あの、えっと、お世話になります。」2つ、3つ当り障りのない会話をしていると、トレーに木椀と陶器のマグカップを3つ乗せたイルミンが戻ってきた。

 木椀と木匙とマグカップが目の前に置かれた。「どうぞ召し上がれ」と云われたので、「いただきます」と木匙を取ってポトフを食べ始めた。一口二口食べてから、あっ、と思い。テーブル下に鑑定結果を表示する、特に毒などは入っていない事を確認して、匙の上げ下げを繰り返す。塩気が気持よく身体に沁みていった

・・

 謎肉と謎野菜とジャガイモと人参と玉葱のポトフを一滴残さずたいらげて、マグカップに手を伸ばす、紅茶をこくりと一口。鞄からポケットティッシュを取り出し1枚抜いて鼻をかむ。やっと人心地ついて、ほぅと息を漏らし「おいしかったです、御馳走様でした。やっと、その落ち着きました。あのイルミンさん、ご挨拶が遅れました、私はアメリといいます」

 思案顔のイルミンが「うん、おいしそうに食べてくれてよかったよ、アメリ。幾つか訊きたい事があるんだけど、何からにしようかな……んー……渡り人のお嬢さんがこんなところで何をしているのかな?」


 背筋に冷たい汗が流れた気がした。「あぅ…うぇ…えぇっと……」


 「アメリちゃん、別に私達は貴女を責めている訳じゃないのよ?ただ不思議なだけで」


 「あの、質問に質問を返すようで申し訳ないのですが、何故私が渡り人だと…?」


 「『お邪魔します』『いただきます』『御馳走様でした』辺りで疑問に思い、極めつけは黒髪黒眼とその綺麗な小さな真白い布?紙?だよ」


 「あー…そのすいません…騙そうとか思っていたわけではなくてですね、今日この世界に来たばかりなので…迷子は本当でして……」


 「「今日?!だから非常識なのか(なのね)」」と、夫婦にハモられてしまった。


 「…何というか、その、本当に申し訳ございません」と、机に手をつき頭を下げる。


 フィルは狐耳をピクッと動かして「じゃあ、まだこれから何をどうするか、とかは何も決まっていないのね?」と。


 「はい、未だ、何も」


 「そう、じゃあ私達がこの世界の常識を教えてあげるから、少し家に逗まりなさい。」フィルのそんな提案に、イルミンは「おまえっ…」と額に手をあて呆れ顔。


 「あの、えっと、宜しいんですか」と両者の顔を交互にみる。


 「良いのよ、こんな機会、滅多にあるものじゃないもの。」と断言する。

 「はぁ、フィルがこうなったら、もう曲がらない。歓迎するよアメリ」


 「ありがとうございます、お世話になります」今一度深く頭を下げる。


 「じゃあ先ずは色んな話をしようか…」


・・・


・・



 途中で紅茶を淹れなおして貰いつつ、この大陸のこと、この国のこと、この森のこと、通貨と物価、などを聞いていた辺りで、欠伸を噛み殺してしまった。「今日の今日だしお疲れだったね、もう夜も遅くなってきたし、今日はこのぐらいにして、続きは明日にしよう」とイルミン。

 トイレの場所や使い方を訊いたり、文化や作法などで何か失礼があったらすいませんと予防線を張ったりして、空き部屋に案内され、寝具も運んでもらったところで「じゃあ、おやすみ。又明日ね」「はい、おやすみなさい」


 自由に使っていいと云われた部屋は四畳半より広く六畳間より狭いぐらいの小部屋だったが、十分だと思った、こんな時小柄で良かったと思う。

 靴を脱ぎ、部屋に置いてあった2人掛けソファの上で借りた寝袋に包まって、その上に外套を掛けたらすぐに睡魔がやってきた。魔導具(マジックアイテム)や技能紙の事を考え…な…きゃ…zzz



 イルミンとフィルは、二人の寝室へ入った。イルミンは少し鋭い雰囲気で「アメリは死神だと思いますか?」「どうなのかしら、見習いや眷属なのかしら、でも、そうだとしても随分可愛らしいわね」「取り敢えず様子を見る、ということで良いのかな」「そうね」



 そんなこんなで異世界初日の夜は更けていった。

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