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昔の男と飲む酒は

 昔の男と飲む酒は、どこか優しい味がする。


「もう何年?」

「三十年」


 重ねた年数だけのシワがある顔を見つめ、浮かぶ笑窪に確かな彼の面影を見る。


「こんな人生もあったかしら」


 彼の肩にもたれ訊く。彼は小さく笑う。


「想像したけどできなかった」

「そうね」


 若さは過ぎて、今はもたれる肩の優しさだけがある。


「また会える?」


 その彼の言葉に敢えて「どうして?」と訊くと、


「君の、ファンだから」


 私は笑い、彼に小指を差し出した。

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