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「えー。今、入ったニュースによりますと、組織的な復讐ビジネスを行っていた犯罪グループが摘発されたそうです。この組織は以前から全国で頻発する死亡事故への関与が疑われていました」

 司会者が出されたフリップを持って説明する。フリップには組織の構造や、経営の形態が図解されていた。

「まず、胴元と呼ばれる中心グループが裏サイトを開設し、復讐の依頼者を募る。このサイトはいくつかの依頼を受けたらすぐに閉鎖され、しかも海外のサーバーを経由していたため当局もなかなか尻尾をつかめなかったようです」

 豊ははじめ、なんとはなしに見ていた。

「次に、胴元がかけ子と呼ばれる末端組織員に指令を飛ばす。指令を受けたかけ子は自らが実行することはありません。ここが特徴です。かけ子は自分に代わって復讐を実行する一般市民を募ります。この一般市民は主に高齢者である場合が多いそうです」

 豊は身を乗り出し、画面に見入った。

「実行を引き受けた一般市民は受け子と呼ばれたそうです。復讐の依頼料の相場は大体五百万から六百万円。まず前金で三百万円。復讐が完了すれば残りの三百万円が振り込まれ、実行できなかった場合は前金が全額返還され、それがこの違法ビジネスの信頼性に繋がっていたようです。それにしても、見ず知らずの一般市民が復讐、いえ、殺人に加担するなんてことがあるものなんですかねえ?」

 水を向けられた元刑事という肩書きのコメンテーターが答える。

「受け子はほとんどの場合、独居老人だったようです。かけ子は言葉巧みに高齢者と親しい関係を時間をかけて築き、前金から百万前後の金を渡していたようです。復讐についても依頼とかではなく、個人的な怨恨と偽って協力させていたようですね。その際、成功の暁には自分が同居するなどと吹き込んで、高齢者の不安につけ込んでいたようです」

「それで、気になる復讐の手口ですが、高齢者にどうやって殺人という、大それた仕事を実行させていたんでしょう? 仕事と言うのは不適切ですけど」

「高齢者に実行させるのは事故を装うためなんです。運転操作を誤ったとか言って、ターゲットが歩いているところに車で突っ込ませるというやり方を教唆していたようですね」

「恐ろしいですね。それでは、全国で起こっている高齢者の事故は、この犯罪グループが主導したものもいくつかあったってことなんでしょうか?」

「まあ、割合でいえば数パーセントのものでしょうが、これは過去の事故もさかのぼって調べなおす必要があるでしょうね」

「おっ。ただいま、現場の中継車から摘発の映像が届いてまいりました」

 画面が切り替わり、寂れた建物から数人の男女が連行されていた。連行される犯人グループの一人、一人にテロップで名前が表示されている。すると豊は一人の女に目を見張った。黒縁のごつい眼鏡。ボサボサの髪。不思議な服装。あの頃の魚沼に比べると大分太っていたが、確かに魚沼に似ていた。俯き加減だったので確信は持てなかったが。慌てて名前を確認する。テロップには容疑者、土井きわ子と表示されていた。魚沼とは似ても似つかぬ名前だったが、偽名ならそれも当然と思えた。

 それから画面はスタジオに戻り、しばらく司会とコメンテーターの解説が続き、再び犯罪グループの顔写真の一覧が表示された。容疑者は十人ほど。全員かけ子で、組織の幹部は一人もいないとのことだった。その中に土井きわ子なる女の写真もあった。大分老けて見えたが、やはり魚沼と同一人物に見えた。そしてその隣に、増井と思しい男もいた。増井の顔を豊はよく覚えていなかったが、豊の脳裏に焼きついた、増井少年とは全く似ていないことに気がついた。

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