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 駐車場に出てタプリに乗り込む。この頃には陽も大分高くなり、道路の交通量も増している。帰路に着こうと出口で待つが車が途切れる気配はない。譲る気配もない。ウインカーは出さない。自分の手の内を晒すと足元を見られ、譲る車も譲らないような気がするからだ。だが車の列は中途半端な車間距離で一向に出るタイミングがこない。これだから運転は嫌いだ。高齢者ドライバーの自分は優先されてしかるべきだ。バスにも電車にも優先席はあるはずなのに車にはそれがない。こいつらは皆、優先席で寝たフリをしている若者と一緒だ。なぜ警察は取り締まらないのか不思議でならない。

 ようやっと右折すべく向こう側の車線が空いた。が、手前の左車線を走る車のスピードが落ち、とうとう車が詰まって目の前で車が停止した。通せんぼをされた格好だ。豊のはらわたが一気に煮えくり返る。進路を塞ぐ車のドライバーの中年女は前方だけ見てこちらを見ようともしない。こちらの存在に気付いていないといわんばかりの態度に堪忍袋の緒が切れた。

 辺りに三、四回、間隔の長いクラクションが鳴り響く。向こうがこっちの存在に気付かないのなら気付かせるまでだ。が、中年女はまだ前方を直視したまま。時折、ルームミラーに向かって髪の手入れなどをしている。気付いていないはずはない。気付いて気付かぬフリをして、気付いていないから譲ることもできないのだ、という、見え透いた魂胆がますます豊の神経を逆撫でする。さらにクラクションを何度か鳴らし、そうこうする内に車の列が流れ始めた。

 中年女のすぐ後ろのトラックが進路を譲ってくれた。が、怒りの収まらない豊は急発進。すると左からクラクションが聞こえた。どうやら反対車線から車が来ていたらしい。

「鳴らすなや! こっち優先じゃろうが!」

 豊は運転席という密室で叫んだ。

 そのまま不機嫌な感情を表したような運転で豊はタプリを飛ばす。タバコに火をつけるが怒りはなかなか収まらない。窓を少し開けて灰を外に弾く。十分ほど走ってクールダウンすべく帰り道にあるコンビニに入る。ここは大型トラックの客を狙ってか、駐車場が広めなので気に入っている。客の出入りが少ないのもいい。外でさらにもう一服。

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