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 面接を受けていたらしいことを聞いて落胆しかけたが、すぐに不採用と知って、小躍りしそうなほど内心では喜んだ。落ち込んでいる娘を慰めるような姿勢ならいくらでもつけ込めるのではないか。もしかすると体の関係までいけるかもしれない。豊の鼓動が早くなる。が、急くのはまずい。落ち着けと自分に言い聞かせる。魚沼は落ち着いて話そうと、また例のコーヒーショップに入る。席につくなり魚沼の恨み節が始まる。

「ひどいんですよ。ひと月近く私は待ってたのに、返ってきたのはメール一本。普通は手紙か電話だと思うんですけど、こんなの初めてです。その間、よその求人も受けてみようかなって思ったけど、それじゃ先方に失礼だと思って、浮気もせずに待ってたのに。今回は不採用とさせていただきますって、たったそれだけ。もう、履歴書に使ったお金返せって感じです」

 魚沼は両手の拳を上下させ、髪振り乱して不満を吐露する。が、さほど真剣に怒っている風でもないので、見ている分には微笑ましい。

「それはひどいのう。でもまあ、物は考えようぞ。そんないい加減なとこなら、関わらんでかえって良かったかもしれん。淀水ちゃんの良さが分からん奴らが勤めとるようなとこじゃ。一緒に仕事をしても、ええことはないじゃろ。俺が面接官なら淀水ちゃんは一発採用じゃがの」

 コーヒーをすすりつつ、魚沼を持ち上げていい気分にさせる。自分もまんざらではないことをそれとなく匂わせる。

「そうですね。通知を待ってる間に豊さんと知り合えたんだから、全部が無駄じゃなかったかも。それに正直、製造業はきついなって思ってましたから。まあ、こういう考えだから、採用されないんでしょうね」

「淀水ちゃんは、どんな仕事に就きたいんじゃ?」

「うーん。できれば事務系……デザイン関係がいいかなあ。でもそんないい仕事、高卒には無理でしょうね。お客さん相手のサービス業でもいいかな」

「じゃあ、この店の店員はどうじゃ。前に店員の真似事をしとったが、なかなか様になっとったぞ」

「ええ、こういうお店とかもいいんですけどね。ただこのお店はよく来るから、少し受け辛いかな」

「そうか。店員にも顔を知られとるし、落とされたら来たくなくなるのう」

「やっぱり私って、お店の店員さんキャラなんですか?」

「いや、そういうわけじゃないが、淀水ちゃんくらいの器量よしを工場で働かせるのは勿体ないと思うてな。客商売なら淀水ちゃん目当ての客が来て、売り上げが伸びるぞ」

「もう。おだてたってなにも出ませんからね。でも、私を元気付けてくれてるんですよね。おかげで少し、元気が湧いてきました。これでまた次の職探しを頑張れそうです」

 うまくすれば魚沼の自宅にまで招かれるかもと期待したが、当てが外れて少し落胆した。だが、まだ会って間もないのだから首尾としては上々ということにした。これから何度か会えば、もっと仲を深められるかもしれない。そんなことを考えていると、魚沼が両手を目の前で合わせた。

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