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 朝の九時を回るとさすがに腹が減ってくる。仕方なく起き上がり台所へ向かう。だが冷蔵庫の中には調味料と、いつ買ったか分からない肉や野菜しか見当たらない。

「仕方ない。仕事に行くか」

 そう、独り言を呟く。仕事とは言っても、ただの買い物だ。豊は買い物を仕事と言うことにしている。居間に戻り仏壇の引き出しを開ける。封筒から一万円札を取り出すついでに残り枚数を確認。最近減りが早くなっている気がする。もしや自分のいぬ間に誰かが抜き取っているのでは、と、疑念を抱く。部屋に隠しカメラを設置したくもなったが、カメラを買う金がもったいないので実行まではしない。

 いつも使うリュックと車のキーを持って外へ出る。玄関前には愛車の「タプリ」

 愛車とはいえ、さほど愛着があるわけではない。専ら妻が使っていたものだったが、現在は必要に迫られ、仕方なく自分の足にしている。豊はそもそも運転が嫌いだ。しかもこのタプリは軽のくせに車高があって荷室が広い、ひと昔前に流行ったタイプで、妻がどうしても必要だというので妻と自分が金を出し合い、中古だったものを散々値切って十八万円で買った。痛い出費の上、金食い虫ではあるが今は感謝だ。地方の年寄りは自家用車がないと生活が成り立たないのが現状だ。

 年金受給者の証明書を即時発行し、それがあれば交通インフラをただで利用可能にするべきだ。ついでにその証明書をかざせば若者は土下座しなければならないという法律でも通せばいいのに、と思う。とにかくこの国は年寄りをないがしろにしすぎる。年寄りは人生のほとんどを国家に捧げた功労者ではないか。その功労者を大事にできない国は滅びるぞ、というのが豊の持論だ。

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