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「それじゃあ言わしてもらうがのお、あんたんとこの教会がアーメンかナンマイダーかは知らん。じゃが、とにかく、世界の平和とかを願うとるのは間違いないんじゃろうが」

 豊が手渡されたパンフレットをパンと左手で弾く。もちろんと言わんばかりに女が満面の笑みで応える。

「じゃあなにか。あんたんとこの教会は信者にあらずんば人にあらずで他所の信者は救う価値はないと見捨てるんか」

「そんなことはございませんよ。そういう議論も、今度の催しで皆様と深めていければと思っています」

「その必要はない。あんたんとこのご本尊が信仰したら救うてくれる、言うんなら俺は毎日でもお祈りするわい。それがアーメンでも、ナンマイダーでも、ミソラーメンでも、救うてやる、言うんなら俺は遠慮なくお祈りするぞ。信者になれ、言うんなら全部の信者になってやる。それが世界平和、いうもんじゃろうが。その代わり、お前どこそこの信者じゃけん改宗せえ、言うんならこっちから願い下げじゃ。救うてほしかったら銭出せ、言うのも信用せん。強引な勧誘をするのもそうじゃ。本当に世界の平和を願うとるなら勧誘する必要もなかろうが。そうじゃろが」

「ええ、ですから、これは勧誘とかではなく、ただ皆様と親睦を深めたいと……」

「それを勧誘というとるんじゃ。あんたんとこは俺が帰ってくれ、言うても帰らんのか。そういうのを俺は信用せんことにしとるんじゃ。ここで大人しゅう引き下がったほうがええぞ。もうあんたのとこを二度と信用できんようになってしまうからの。ここで引き下がってくれたら俺はこのパンフレットにも目を通すし、その催しとやらに参加する気になるかもしれん。なんならあんたんとこのお祈りもするようになるかもしれん」

「ええ、ええ。もちろん、私達は皆様にご迷惑をかけるつもりは一切ないんですよ。帰れと言われればすぐに帰りますし、寄付をお願いしたりも……」

「じゃあもう帰ってくれ! どうせあんたら、最後は金じゃろうが! 金のあるうちは信者になってくださいとか調子のええこと言うて、信者になったら菜種みたいに金を絞り取る腹づもりじゃろうが。信者という名前の奴隷がほしいんなら、ウチみたいな貧乏家を狙わず、どこぞの金持ちでも狙うてくれや!」

「いえ、ですから、私達はそういうものではなく、ただ皆様と……」

「なんぞ! あんたらは帰れ、言われても帰らんのか! 俺はそういうのは信用せんぞと言うとろうが。これ以上居座るようなら警察呼ぶぞ!」

 豊が一喝すると女はわずかに口の端を曲げ、会釈して踵を返す。後ろにいた娘も不満顔だ。去り際、中年女が娘になにか耳打ちをしていた。どうせロクなことではあるまいと思いもしたが、あそこまで食い下がるには、相当に上から追い込みを掛けられているのだろうとも思えた。ノルマがあるかは知らないが、署名を一つでも多く取れなければ地獄に落ちるとでも言われているのだろうか。あるいは教会内での地位が向上しないとか。そう考えると多少、居心地の悪さを覚える。追い返しはしたものの、明日、また勧誘に来るようなら少しは話を聞いてやろうかという気にも、少しなった。

 ドアを閉め、居間に戻ってコタツに入る。ワイドショーの視聴を再び始めると、またも自分が社会から切り離されたような感覚を覚えた。明日とは言わず、今日のうちにでももう一度、さっきの二人が勧誘にこないだろうかと思い始めた。あれだけ無碍にされて、再び訪問すれば見上げたものだ。その根性に免じて、今度は話を聞いてやるのに、と思ったが、結局その日はもう、誰も訪ねてくることはなかった。

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