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 店員は両手を前に出し、まるで宥めるようなそぶりで自分をこの場に待たせ、さっさと関係者以外立ち入り禁止のドアの向こうへ去っていった。店員がまだ笑顔を崩さなかったのがますます腹立たしい。その場に一人、とり残されてみれば他の買い物客が怪訝な目を向けるので非常に居心地が悪い。一分足らずの時間だったが、豊には数時間とも思えた。すると五十代ほどの、恰幅のいい男が入れ替わりに現れた。

「大変申し訳ございません。この店の店長をしております、山野と申します」

 店長らしき男が出てきてやっと話ができると思った。が、いざ話し相手が出てくるとなにを言っていいのか、咄嗟に出ない。さっきまでは抑えようもない怒りが腹の中を渦巻いていたというのに。豊が口を開く前に山野はすかさず切り出してきた。

「まあ、ここで立ち話もなんですので、少し場所をお移り願えますか?」

「なんで場所を変えんといけんのぞ! 俺はここで構わんぞ!」

「はい。ですがここは買い物をするところでして、他のお客様の迷惑にもなってしまいますので」

 迷惑という言葉に仕方なく要求を呑む。迷惑をかけられたのはこちらの方なのに、逆にこっちが迷惑をかけているような態度に釈然としないが、こちらが正義である以上、従わざるを得なかった。

 山野に案内されるまま、二人は店の裏手に出て、周囲をコンクリの壁に囲まれた狭い一角で話をすることになった。豊としては店の事務所で、コーヒーでも出されて話をするつもりだったので、こんな場所に連れ出されたことがもう信じられない。

「ええっと、ウチでお買い上げになられた商品が賞味期限切れだったそうで、真に申し訳ございません。ウチとしましても万全を期しておるつもりですが、人為的なミスはどうしても起きてしまうものですので、何卒、ご理解下さい。お客様のご意見をしっかりと受け止め、今後のサービス向上の参考にさせていただきます。つきましてはお買い上げになられた商品の代金をお返しいたしますので、ご確認のほどをお願いします。また当店をご利用下さい」

 山野はそうまくし立てると茶封筒を差し出した。反射的に受け取ってしまい、仕方がないので中を確認。確かに、カフェオレの定額、百十数円が入っている。豊は半額で購入したので五十円ほど得した計算になる。が、そんな打算は今の豊には働かなかった。

「当店のご利用、ありがとうございます。今後とも、よろしくお願いいたします」

 山野は深々と頭を下げ、店内に戻ろうとした。この程度で話が済むなど、到底納得できない。豊は大声で山野を呼び止めた。

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