穴周辺記
赤子が便秘気味で、嫁が綿棒にワセリンをつけてクリクリと掘り返している。そのツルンとした尻の穴を見て、
『あゝ、俺もあんな綺麗な穴周りだったのになぁ』
とシミジミと思った。あれはいつの事か、確か中学生の頃か、大をしたあとお尻を拭いていると、いつもよりキレが悪いことに気づいた。拭いても拭いてもついてくるのだ、大が。
そこで紙ごしにさわってみると、穴の側面にシワが出来ている事に気付く。そこに大が絡み、拭き取りにくくなっていたのだ。
軽くショックを受けた俺は、その後よく尻を拭くようになった。縦に拭いた後、シワに沿って横にも拭く。
するとどうなるか? キレる、もしくはそこまでいかなくても、ガサガサになる。そして拭く快感を覚えた俺は、もう元の軽く拭く習慣には戻れなくなってしまった……
汚れちまった俺の穴に、さらなる飛躍がまっていた。そう、毛の繁殖である。
病気の関係で二十代後半から毛が濃くなりだし、その影響は尻にも及び始める。
シワだけでも拭き取り難いのに、さらに絡みつく毛。しかも歳を取るごとに濃く太くなっていくのだ。
ある日、大を拭きながらブチ切れた俺は、尻毛を纏めてブチっと引っこ抜いた。ウォシュレットによって適度な湿り気を帯びた毛は、束となって抜けた。しかもそんなに痛くない!
そこからは取り憑かれたように抜きまくり、気づけばツルツルのお尻。
これは! と思い、姿見の前に立って尻を突き出し、振り向いた俺の目には……
「ご主人様、どうか私の事は見ないでやって下さいまし」
と暗い表情の穴が、悲しそうな面を下げていた。興奮から急激に醒めた俺は……浮かせていた踵を地面につけ、畳に落ちた毛を拾い集めた。