表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
73/179

斬られ役、呼び出しを食らう


 73-①


 照り付ける太陽の下、武光はたった一人、居並ぶ将軍達の前で平伏していた。


 巨竜の出現によって一時撤退を余儀無くされたクラフ・コーナン城塞攻略部隊は、クラフ・コーナン城塞の西方約5kmにある《ショバナンヒ砦》に集結していた。


 クラフ・コーナン城塞に突如として現れた巨竜は敵も味方もお構い無しに暴れ回り、クラフ・コーナン城塞を瓦礫がれきの山へと変えた。


 捕らえた城方の捕虜ほりょによれば、あの巨竜はクラフ・コーナン城塞の地下深くに封印されていたのを魔王軍の大魔術師が発見し、王国軍撃退の為に魔術によって操ろうとしていたが、その儀式の最中、結界塔の崩落に巻き込まれて大魔術師は死亡、それにより目覚めた巨竜が暴れ始めたとの事らしい。


 巨竜は、大軍による矢の雨でも、術の嵐でも、投石機でも傷一つ付ける事も出来ず、リヴァル戦士団によって放たれた破壊神砲の一撃ですら巨竜を一時的に退ける事しか出来なかった。


 そして現在、巨竜はクラフ・コーナン城塞……いや、もはやクラフ・コーナン城塞「跡」と呼ぶべき場所に居座っている。



 ……と、まぁここまでの話を武光達は将軍達に延々と聞かされたのだが、武光は大して活躍もしてない自分が、どうして呼び出されているのか、さっぱり分からなかった。

 いくら時代劇俳優として正座慣れしているとは言え、いい加減足がしびれてきた。


「えっと……で、何で僕、呼ばれたんすかね……?」


 武光達の正面に座る、クラフ・コーナン攻略軍の総司令官、ショウダ=イソウ将軍が口を開いた。


「お主、唐観武光と申したな……」

「……はっ」

「唐観武光……お主に巨竜討伐を命じる!!」

「無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーっ!! 出来るかアホンダラーーーーー!!」


 その間、僅か0.05秒!! 武光は宇○刑事がコ○バットスーツを蒸着するのに匹敵する超スピードで即座に命令を拒否した。


「生身であんな怪獣と戦えるかーーー!! どうしてもって言うんやったらスーパーメカ◯ジラとかM◯GERAとかスー◯ーXⅢ持ってこいやコラーーー!!」


 武光は、居並ぶ諸将がドン引きするほど……それはもう、ものすごく拒否した。


「大体っ!! 何で俺なんすか!?」


 武光の問いに、ショウダは短く答えた。


「……イットー・リョーダンだ」

「……へぁっ?」

「伝説の聖剣、イットー・リョーダン……伝説によれば、初代国王にして古の勇者、アルト=アナザワルド様は、その昔……聖剣イットー・リョーダンを用いて二又の尾と一対の翼、そして三つの首を持つ巨大な黄金龍を斬り伏せ、倒したという……弓矢、術、投石機、そして我が軍最高の破壊力を持った破壊神砲ですらあの怪物を倒せなかった今……我々に残された最後の希望は、伝説の聖剣と………その聖剣に選ばれし戦士しかおらぬ!!」


 そう言って、ショウダは武光を指差したが、その先では武光とイットー・リョーダンが何やら小声でヒソヒソと話し合っていた。


「あ、アホかーっ!? なんちゅう作り話してくれてんねんコラァ!!」

〔だ、だって……聖剣なら怪物退治の逸話の一つや二つあった方がカッコ良いと思って……〕

「せやかて、『キ◯グギドラ殺したった』は話盛り過ぎやろ!!」

〔何なのさ、キ◯グギドラって!? 仕方ないだろ、こんな事になるなんて誰が予想出来るって言うんだよ!!〕

「なっ、何開き直っとんじゃー!?」


「あー……コホン」


 ショウダの咳払せきばらいで、武光とイットー・リョーダンは我に返った。


「唐観武光……引き受けてくれるな?」

「ちょっと待って下さいよー、もうちょっとみんなで知恵絞りましょうよー、モ◯ラの成虫を呼んでアイツに一回倒させた上でモ◯ラの幼虫呼ぶとか、アイツの骨を元にサイボーグ怪獣作って戦わせるとか、あいつに爆薬満載した無人の電車突っ込ませて、ダウンさせた所を狙ってすかさず血液凝固剤がぶ飲みさせるとか!! 何かありますって!! 最後まで……この俺を見捨てずにやろう!!」


 武光は懇願したが、ショウダは首を横に振った。その目には断る事は許さんという意思がありありと感じられた。


「出来るのは聖剣に選ばれしお主だけだ!!」

「いやいやいやいや、皆さん知らんと思いますけど、実はこの剣、誰でも使えますからね!?」

〔おい、武光!?〕

「ほう……それは面白いな」


 居並ぶ将軍達の中から、一人の将軍が武光の前に進み出た。白銀の死神、ロイ=デストである。


「貴様、その剣をよこせ」

「は、はい……」


 ロイのいかつい風貌ふうぼうにビビりまくりながら、武光はイットー・リョーダンをおずおずと差し出した。


「ふむ……これがあの伝説の聖剣か。伝説の通りであれば、さぞかしよく斬れるのであろうな?」


 ロイは、柄の感触を確かめるように、二、三度イットー・リョーダンを振ると、ショウダ将軍の背後に立っている石碑の前にスタスタと歩いて行った。高さ約2m、幅約1m、そして厚さ約60cmはあろうかという大きな石碑だ。


「……フン!!」


“ガッ!!”


 袈裟懸けに振られたイットー・リョーダンの刀身は、分厚い石碑の半分まで切り込みを入れていた。


「何と……あの分厚い石碑を!?」

「凄い、これぞまさに聖剣!!」

「これならばあの巨竜を倒せるやもしれぬ……」


 将軍達は驚きの声を上げたが、ロイはイットー・リョーダンを石碑から抜き、武光の所まで戻ってくると、イットー・リョーダンを武光の足元に雑に投げ捨てた。


「失せろ……このまがい物め」


 ロイの言葉に、諸将は戸惑った。


「私は奴と戦ったから分かる……こんなナマクラ刀では何の役にも立たぬ」


 ロイは武光の足元に転がるイットー・リョーダンを見下ろし、言った。


〔な……なまくら……役に立たない……?〕


 ロイの言葉に、トラウマを深くえぐられたイットー・リョーダンは消沈した。


目障めざわりだ……とっととせろ」

「ひっ……ひぃーーー!? は、ハイぃぃぃぃぃっ!!」


 ロイに言われるやいなや、武光は大慌てでイットー・リョーダンを拾い上げると、背中の革鞘かわざやにそそくさと収めた。


「すすすすみませんでしたっ!!」

「失せろ……!!」

「は、はい……失礼しまぁぁぁぁぁすっっっ!!」


“ドゴォッ!!”


「ぬぅっ!?」


 諸将は唖然とした。武光が不意打ちのエルボーをロイの胸板に叩き込んだのだ。


 まさか小動物のように怯えきっていた武光が襲いかかってくるとはつゆほども思っていなかったロイは不意を突かれてよろめいた。


「貴様……!! 何の真似……」

「あぁ!? ちゃんと『失礼する』言うたやろがコラ……俺の相方あいかたを……馬鹿にすんなーーーーー!!」

〔た、武光……〕

「お前さっきイットーの事、ナマクラ呼ばわりしたな……自分のヘボさを棚に上げて何抜かしとんじゃー!! イットーに謝れコラー!!」

「貴様……私が誰だか分かっているのか?」

「知るかー!! はじめましてこのヤロー!! T◯800のコスプレみたいな格好しやがって!! どうせ、田網たあみねい太とか、アーノルド=シュワルツェネッ太とか、ロイとかデストとかやろうが!! 見とけコラー!!」


 そう言って、武光は先程の石碑の前に立った。


「行くで……イットー」

〔……ああ!!〕


 武光はイットー・リョーダンを再び革鞘から抜き、正眼に構えた。


「でやぁぁぁぁぁっ!!」

〔でやぁぁぁぁぁっ!!〕


“すん”


 将軍達は思わず息をんだ。武光とイットー・リョーダンの一振りは、易々《やすやす》と、軽々と、石碑を文字通り斜めに一刀両断したのだ。 “ズン” と音を立て、石碑が斜めに落ちた。

 武光は後ろを振り返る事なく大声で言った。


「おい、イットー知ってるかー?」

〔何だ?〕

「この辺に、こんな斬れ味抜群の刀を使って石碑の一つもよう切れへんクソ骸骨がおるらしいでー、しかもソイツ、切れへんのを刀のせいにして八つ当たりしとるらしいでぇー!!」

〔いやいやいやいやー、そんなダサい奴いるわけ無いだろう、そんなダッッッサい奴!!〕


 ……二人してまるで小学校低学年である。

 武光達の挑発に対し、ロイは従者に持たせていた屍山血河を手に取った。


「貴様……死にたいようだな」

「ゲェーッ!? あのアホ刃物持ち出して来よった!? お……俺ちょっと怪獣やっつけてきますっっっ!!」


 武光は にげだした!


 ……ちなみに、後になって自分がエルボーを喰らわし、散々挑発した相手が、白銀の死神の異名を持つ王国軍最強の将軍だとミトから知らされた武光が、恐怖と『やっちまった感』のあまり、一時間近く嘔吐えずく羽目になった事は言うまでもない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ